2013.02.25

『がらくたストリート(1)(2)』

がらくたストリート(1)(2)』(山田穣/バーズコミックス)

つい先日まで二巻が出ていることにまったく気が付かずスルーしていたのだった。自分のアンテナも錆びついたものだと思ったものの、それ以上に話題にならないにもほどがある!と出ていることに気が付かなかった自分を棚に上げて憤りを感じたので感想を書く。

この作家の面白いところは日常と非日常の接続の仕方にあると思っていて、作者の体験談とおぼしきリアルな日常の小ネタと宇宙人や神様との緩やかなつながり方にが素晴らしいと思う。それは、道を歩いているときに、遠くに揺らめく陽炎に異世界を見るのにも似ていて、ほんのちょっとした違和感の積み重ねのようでいて、しかし、そこには確かに宇宙人もいるし神様もいる。と言うか、陽炎が現実であるのと同じぐらいに宇宙人も神様も現実であるような手触りがあって、これがすごく好きなのだった。

思うにこの作品には作者の実体験とおぼしき、やたらとマニアックかつ広範囲にわたる無駄知識が描かれていて、それが強烈な現実感を与えているのだが、それが非日常とダイレクトに結びつくことによって、非常に幻惑的なイメージを与えていると思う。宇宙人の女の子と、焼き飯と炒飯の違いが同じレベルで描かれることに頭がくらくらするほどの違和を感じるのだが、同時にそれぐらいしか違いのない物なのかもしれないとも思える。暗闇の中に人間の知覚出来ない存在を意識するのと同じくらい、それはありふれたものなのだ。

つまり、日常と非日常を分かつものは実はなく、どちらもが同じ世界に存在していることで、人間は無意識のうちに行ったり来たりしているという感覚がこの作品にはあると思う。自分はそういう感覚をわりとしょっちゅう感じることがあって(まあ社会不適合の気はあると思うが)、だからこそ、この作品における幻想の扱い方(我々がいつも見ている現実のなかに散りばめられているという見方)は非常に魅力的に思うのだった。

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2009.01.29

今月の百舌谷さん

・今月号アフタヌーン掲載の『百舌谷さん逆上する』を読んで、腹筋が切れるかと思うぐらいに笑った。もう大爆笑。同時に自分がおかしくなったんじゃないかと思うほど泣けた。この涙は感動の涙だ。爆笑と切なさを同時に表現するとは、篠房六郎、恐るべし。

・あの場面の肝は、樺島くんの言っていること自体はあたまがおかしいとしか思えないのだが、百舌谷さんにとって本当に必要なものとは、樺島くん(の姿勢)なんだ、と言うことだ。好意を攻撃性でしか表現できない百舌谷さんにとっては、攻撃性でもって表現した好意を、ただ”そのままに”受け止めてくれる存在がどれだけ救いとなることか。まさにスーパーヒーローと言うにふさわしい。

・本当にこの漫画はきがくるっている。

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2009.01.26

『百舌谷さん逆上する』を読んで感動した

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百舌谷さん逆上する』の2巻がまたしてもすばらしすぎるので今更ながら感涙。表面的には百舌谷さんの”ツンデレ”ぶりを楽しむコメディに見えて、その実、”ツンデレ”病である百舌谷さんの世界に対する憎悪と孤独を描きぬいた感動作。ツンデレと言えば近年では萌え要素の一つとして知名度を得ているが、そのツンデレを”病気”であるとすることによって、ツンデレ本人にツンデレを自覚的にさせるというメタ的な表現を可能にしているのだ。なにより、ツンデレを本人の内面的要因と言うよりも外部的要因、つまり病気(しかも不治)としてしまうことで、ツンデレの解消が本人には”不可能”になっている点がひどい。本来のツンデレならば、デレてしまえば終わるのだが、病気ではどうにもならない。デレが存在しないツンデレなのだ。まったくツンデレに萌える読者を嘲笑する作者の悪意がヒシヒシと伝わってくるぜー。しかし、これは実験作ではあるが、紛れも無い青春漫画としても傑作でもある。ツンデレに苦悩する百舌谷さんの内面は涙なくして読めない。運動も勉強も容姿も並以下の樺島くんの漢ぶりにも(いろいろな意味で)涙。一巻の時点でも、相当に作者の本気は伝わってきたが、2巻では樺島くんの間違ったカミングアウトに驚愕したが、それ以降の展開はまさに神。普段はものすごい文字量で読者を圧倒する篠房演出を配して無音劇として展開する姿の美しさと言ったら。そしてオチも良い。まったく先を読ませぬ展開に本当に痺れるぜい。そしてなし崩しに虐げられる樺島くんのいい人ぶりも際だつ。マジでナイスガイだわー。そして不穏なラストといい、どこまでも変則ながらもまっとうな、というのも変な表現だが、青春ストーリー。すごいよー。語彙が不足してくるぐらいにすごいよー。表現方法が見つからない。あと表紙裏の狂った会話も面白かった。アシスタントさんの漫画が読みたい。

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2008.05.21

来るな…これは間違いなく。

藤田和日郎の『月光条例』の話。

月の光に惑わされ発狂してしまった御伽噺の住人たちが、現実世界にやってくる?
”理不尽なこと”に対して”正しく怒る”主人公が、そいつらをぶん殴る?

これは…間違いなくあれが来ますよ。
そう、藤田先生は、うしおととら第一巻にて、とある本を読んでこういいました。

「なんでかわいそうな女の子がかわいそうなことになっちまうんだよ!」

それがうしおととらを描く動機になったとか。
その本こそ…『マッチ売りの少女』。

『マッチ売りの少女』が月打(ムーストライク)することで、一体なにが起こるんだろうなあ。

というのは、本題ではない。

とにかく今週の月光条例すげー!!

鬼の金棒2撃で人類滅亡!?あまりにも嘘くさい上にスケール極大なハッタリに僕はもうメロメロです。

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2006.03.27

『ブロッケンブラッド』読了

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ブロッケンブラッド』(塩野干支郎次/少年画報社)を読んだ。あまりに凄すぎた。

無理矢理魔法少女にされてしまった健一君(当然男。ただし美少年)がフリフリふわふわの恥辱のコスチュームに身を包み、立ちふさがる凶悪な真性変態どもを相手に繰り広げる血と汗とフリルに満ちたバトルロワイヤルを繰り広げる…という話になるかと思ったら突然芸能界にアイドルデビューを果たした上に女優デビュー(ポロリもあるよ!)まで果たしてしまった健一君の明日はどっちだ!!という話(恐ろしい事ですが、この説明には一切の誇張も法螺も含まれておりまっせーぬ。内容そのままでありんす)。

まったくあたまがおかしいですねこの作者、と大絶賛をしておきます。

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2005.12.18

コミック版『皇国の守護者』って人気あんのかな

突然に特設サイトがオープンしておる。そんなに編集部にプッシュされているのか。まあ、小説のコミカライズとしては、私見では稀有なる出来栄えであると思うので、これを機に知名度が上がってくれると良いと思う。

つか、ダイジェストムービーが格好良いな。愛されているのー。

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2005.11.14

今日の戯言

個人的に今週の『魔人探偵脳噛ネウロ』に大注目。前々からこの作者は本物だと思っていたが、元ヤクザまがいのチンピラの吾代の人間性を描いた今週の話でますますその思いを新たにした。つーか、脇役の内面を描くのに一話丸ごと使っているよ!何このジャンプ漫画。

もともと粗暴な言動とキレた気性をもった男であって、紛れもないチンピラなんだけど、恩を受けた社長には(口汚くも)信頼していたり、わずかな良心のようなものが見え隠れした複雑なキャラクターだったのだけど、今回のエピソードでなんか非常に良いキャラクターになったような…。「寛大な自分が許せない」なんて、ちょっと理解できるよ…。この作者は、異常なサイコパスを描く事に注目が行きがちだけど、実際には人間の心理を描写すること自体が巧みなんだよなー。

弥子と吾代のやり取りも絶品。たまらんぜ。

と言うわけで、普通の意味でオススメな『魔人探偵脳噛ネウロ』でした。

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2005.11.13

怒涛の如く今更な話

『カムイ伝』が面白すぎる点について。…本当に今更だな…。

だが、世間一般の流行とかなんとかを無視して自分の考えた事をそのままだだ漏れさせるのがこのブログの基本方針(基本方針とか言ってるよププー!)。とにかく書く。

つーわけでカムイ伝全集の4巻まで読んだんですが、とりあえずあまりに面白くてたまりません。何が面白いのかと言えば、「差別」をテーマにした人間の平等への希求を描き続ける部分(このあたりは行き過ぎるとまた別の問題が生まれそうではあるが…)とか、自らの望みのために生きようとする人たちが、運命だとか良く分からん代物に絡め取られていきながらも足掻き続ける姿とかそんな感じの奴です。あと登場人物たちが一杯出てくるのだけど、それぞれの目的が絡み合ったり離れたり、ある所で出会った者たちが全然別の場面でまた別の登場人物と出会ったりと群像劇として面白いのなんのといったら…。どうでも良いが、カムイ伝というわりにカムイの出番はあんまり多くないよな。どっちかと言うと、カムイ個人が世界と対峙する話よりも、差別を無くそうと農民一揆の方が主軸のような…。間接的には影響を与えてはいるのだけどね。

続きが出たら買います。

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2005.03.19

『ぼくは、おんなのこ』読了

ぼくは、おんなのこ』(志村貴子/エンターブレイン)を読みました。すごい面白かった。
ほのかで淡い感情の動きをとても柔らかに描いた作品集。控えめで繊細な表現は、決して『何か』を訴えかけるものではなく、人々の日常を軽やかに、時に親身に時に突き放すように描いている。ほのかに香るエロスも良い感じ(表現は決してほのかでもないのに、何故かほのかに感じられてしまうのは不思議だ)。

しばらく志村貴子を集めてみようかと思います。

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2004.12.10

「JINKI-人機」を読んだ

あ、あれ?面白いなあ。

ジンキ-人機 (1)~(4)」を読みました。いや、面白いですわ、本当に。

一見、ベタな美少女+メカものに見えるのですが、事実その要素は強いのですが、それと反比例するがごとく展開自体はハードかつ地に足のついた展開です。メカを動かすのに、きちんと予算を組んで運用している描写があったのには感心しました。大体、主人公が物語に関わるのも金の問題だし…。

きちんと「戦争」と言う物に対しても真面目に取り組んでいるように感じますね。「戦闘」→「解決」というロボット物にありがちな展開を否定したストーリーテリングが好ましい姿勢です。その姿勢がより明らかにされているのは4巻に収録されている読みきり「ヘブンズ」です。この話、「美少女」+「ロボット」+「地雷」という…。ま、地雷撤去のお話なんですが、この目の付け所に作者の人品がにじみ出ますね。

とても誠実な人柄なんだろうなあ、と感じます。

エクステンドの方も読まないわけにはいかないな、これは。

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