『太陽のプロミア
』(SEVEN WANDER)
ヒロインの個別ルートをプレイした順番で簡単に書いていきます。致命的なネタバレは避けるけど、それでもポロポロと書いてしまうので、プレイしてない人は読まない方がいいんじゃないかな。
・アマリ
たぶん、ほとんどの人はアマリ編を最初にやるんじゃないの?あそこであの選択肢を選ばないなんてありえないだろ、エロゲーマー的に。
アマリさんは、非常に分析的な性格なので、右も左も分からないプレイヤー(と主人公)にとって世界観の説明をしてくれるというとても重要な役割を担っています。個別ルートも物語の当初で提示された太陽神プロミアと賢者コダマの正体に迫っていく、という感じで、プレイヤーが最初に気になるところを取り上げているあたり製作側の攻めの姿勢が伺えます。「この程度では、何も明らかになってねえんだぜ?」みたいな感じ。
ここでプロミアと賢者コダマの正体と、その二人と主人公がどのような関係にあるのかが(一応)明らかになるのだけど、ここで明らかになるのはあくまでも土台と言うか、前提条件みたいなもので、ここで明らかにされたことを巡って、他のヒロインルートでの葛藤に繋がっていく位置付けになるんだと思う。
キャラクター的にはわりと優遇されていて、後半の問題点である「ヒロインの物語と設定の開示との対立」が少ないので、キャラクターを魅せることに制限がないのが強い。他のヒロインの物語でもアマリは活躍するし、美味しいキャラだよなー。
・ジゼル
階層としてはアマリ編と同じ階層に位置していて、おそらく上の階層へシフトするためには、アマリかジゼルのどちらかをクリアすれば良いと思われます。まあ、二人を攻略して、設定を十分に理解してから次に行った方がベターでしょうけどね。
アマリとうって変わって感覚的というか、野生的なヒロイン。なので設定の開示とか分析とかは一切ありません。彼女の物語で明らかになるのは、18年前の黒の六花であるエコーとジゼルの関係で、ひいてはエコーのパーソナリティに踏み込むことになります。アマリ編におけるラスボスみたいな存在であったエコーを、ここで解体してしまうというのはかなりすごいことなのではないか、と思うんですけど……。このジゼル編自体は、かなりストレートな家族の物語なんだけど、それゆえに物語としてはバランスが良くなっているように思います。
あと、細かい設定のひとつとして、魔獣の人の存在が明らかになったりするけど、この辺りは最後まで直接には物語に関わってこなかったな……。ジゼル編に限らず、『太陽のプロミア』という作品全体でそうなんだけど、まだまだ語っていないことが多そうな感触がある。物語に関係のない裏設定はあっさりカットしている感じがあって、こういう割り切り方は、わりと面白いと思いました。
ジゼルというキャラクターそのものについて語ると、彼女はあんまり自己主張しないんで、ちょっと語り方が難しいですね。まあ、懐かない野生動物が、エサを食べてくれるようになった感じ?(よくわかってない)
確か、この辺りで情報が段階的になっていることに気がついて、ものすごく驚いたような気がします。
・ニーナ
物語は次の段階へ。伝説として語られていた300年前の魔獣王との戦いの真相が明らかになる話。いやー、僕、この子の物語、好きだわー。300年前のミルサントが舞台になっているので、それまで謎になっていたことがどんどん明らかになる快感もあるけど、それ以上にニーナのヒロイックさに痺れた。
ニーナは不器用だし頭も良くないけど、その分、自分の大切なものは石にかじりついても守るド根性があって、それがあらゆる摂理をぶちやぶってハッピーエンドをもぎ取るというラストもすごくて、なんだこのスーパーヒーローは、と思った。アマリ編やジゼル編では可哀想なことになっていたカシェットが救われているのも重要なところかも。ハッピーエンドの中にも、実は救われていない存在がいた、ということを知るのはけっこう堪えるものがあるからね。それが救われるってのは、やっぱり文句なく良いことだと思うのです。
個人的には300年前のコダマであるところの賢者コダマ(≒エコー)が活躍しているところも楽しい。この人、主人公と基本的なパーソナリティは同一なんだけど、性根がねじくれまくっているために素直な感情表現が出来なくて、そういうところがすごく良いと思う。真っ当すぎるほどに真っ当な人間が、ねじくれるとこういう風になってしまうんだなあ。
・リノ=レノ
プレイする前は存在が明らかになっていないヒロインなので注意。
300年前の魔獣王との戦いの真相が明らかになるのはニーナ編と同じだけど、ニーナよりも知的なヒロインなので、もう少し深いところが明らかになる(今思ったけど、物語の対応のさせ方が、ジゼルとアマリのそれに似ているね。たぶん意図的なんだろうな)。
物語としてはニーナの方が好きだけど、キャラクターとしてはリノ=レノの方が好きかなあ(いや、別にロリババアだからだとか関係ないから。マジだって)。300年前、なぜ魔獣王リノワールが現れたのかとか、コダマ(エコー)のキャラクター性をさらに深める描写もあって、ある意味ではジゼル編の補完みたいなところもある。それだけじゃなくて、18年前の失敗も含めて、コダマ本人の物語を除けば語るべき過去の物語はほとんどすべてが明らかになっていると言っていい。なんつーか、キャラ的に裏設定のほとんどを担っている感じがしますね。
過去について一区切り付いたあとは、当然のことながら”現在”と”未来”についての物語になるわけです。
・エレガノ
ニーナ、リノ=レノの物語で存在が明らかになった”黒幕”が中心となる。黒幕が何を考えて、何を望んでいるのかと言うのが明らかになるので、ある意味、次のフレアルージュ編の裏話的な位置付けになるのかもしれない。
エレガノはキャラクターとしては申し分ないのだけど、惜しむらくは、フレアルージュの裏話的な位置付けゆえか、どうも物語的に活躍が出来ないというか……。最初の方にも書いたけど、この辺りから『太陽のプロミア』という作品の全体を総括しなければならなくて、結果的に”ヒロイン自身の物語”が圧迫されるという現象が起こってくる。扱っている設定が、初期攻略できるヒロインとは比べ物にならないぐらい重要なので、仕方のないところではあるのだが……。正直、ヒロインとしてはトップクラスに不遇。黒幕やフレアルージュが担う物語たいして、エレガノ自身は傍観するしか出来ないという結末になる。
ただ、神に愛された天才であるフレアルージュと比べて、秀才ではあるが凡人であるエレガノの物語はすごく好きだ。凡人は自分の出来る範囲のことをひたすら精一杯にやっていくしかないが、それでひがむのではなく、誇りをもって行動するというあり方がすごく良いと思う。そうして訪れた結果を恨むでもなく、憎むでもなく、ただ静かに受け入れる。それがすごく良い。
キャラクター的には、非常に姉御肌というか、果断で男らしい性格が良いですね。他のヒロインたちだと主人公とヒロインがくっつくのは結構物語を進めないとならないのだけど、エレガノは好意を持ったら即行動に移すところとか、さすがだと思いました。まあ、それゆえに物語的な不遇さも避けられないところではあるんですが……。
・フレアルージュ
約束されたメインヒロインであり、『太陽のプロミア』という物語全体において、超重要な設定を背負っている。それゆえに彼女をその設定を受けてなお、自分の物語を紡けるかどうかが重要だと思うのだが……正直、その設定に向き合うことで物語が終わってしまった感じがあります。主人公との関係も良くわからんしなあ(この辺りは自分が読み取れていない可能性もあり)。
なんと言ったらいいか……フレアルージュ自身の悩みや苦しみが、途中で設定の方に飲み込まれてしまっているというか……。いや違うか、フレアルージュ自身の問題が見えないのが気に入らないのかもしれない。もちろん、彼女が背負った設定はかなり重いので、それに向き合うことが必要なんだけど、それは別に彼女の問題とは関係ないじゃん、みたいな気持ちが拭えないのかも。そういう意味では、エレガノに並んで不遇なヒロインかもしれない。
あと。こっちだと”黒幕”の人がきちんとラスボス然としており、たいへん黒幕らしい。ただエレガノ編を先にやっていると、この人がちょっと不憫すぎて……勝っても負けても幸せになれないんですけどこの人。もしかすると、先にフレアルージュ編をやったほうがよかったのかもしれないなあ。
以上がヒロインごとの話は終わり。さすがに疲れたので、総括めいた話はまた明日ということで。
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