朝早く起きた日記
・奇妙な寝苦しさを感じて夜明け直後ぐらいに目を覚ました。外はまだ薄暗く、青黒い光に覆われたような冷たさに包まれていた。もう一度寝ようとしたが、なにかに動揺しているように、動悸と喉の渇きに襲われて眠れそうにない。仕方がなく起きた。
・夜明け直後の光は、見慣れた家の中を見知らぬもののようなよそよそしさを際立たせる。まるで他人の家に迷い込んだような、あるいは自分が異物になったような。ここはお前のいる場所ではない、そう言われているような感覚が意識のどこかに生じているような。それが錯覚なのはわかっているが、意識の一部、脳の裏側あたりに、そういう意識がある。
・牛乳を飲もうと思った。台所へ出て、コップに牛乳を注ぎ、レンジで温める。最近、レンジの調子が良くないのか、汁物を温め過ぎて吹き零れることがある。レンジの様子を伺いながら、部屋の中を眺める。相変わらずそこは違和感のある空間で、しかし、そうした違和感が、実はそれほど嫌いではない。知らない場所と言うのはそれだけで心躍るものだからだ。
・部屋で暖めた牛乳を飲みながら、夜が完全に開けるのを待つ。窓から見える景色から、少しずつ夜の気配が後退していく。青がゆっくりと薄れ、白が強くなる。しかし、なかなか明るくならない。空を見上げてみると厚い雲に覆われていて、光が差し込む様子はない。窓を開けると近くの道路を走り抜ける自動車の音が通り過ぎる。ぽつぽつと何かが弾ける音。そうか、雨が降っていたのか。
・冬の気配を感じさせるひんやりとした空気は肌に心地よく、しかし、眠気は遠くに去ったままだ。今日はどうしようか。そんなことを考えつつ、雨の音を聞いている。
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コメント
前の、道端を切り取った描写よりも匂いが強く感じられる文脈で好きですね。
いや、感想を付けるのはおかしいかもしれませんがw
ふと、日常描写について、以前に魔法使いの夜(?)かなにかについてコメントされていたのを思い出しました。
普段の気配を切り取る力というか、そういうものは作品として見ると(エンタメでは)部分に回収されるべきものだとも思いますが、それでも不可分のものとして強みがあるなあと。
投稿: 名無し | 2013.11.12 07:00