日記
・書いている小説のプロットを推敲していると、どうにも流れがしっくりこないところがあって、そこをどうするべきか悩んでいたが、ようやくいいアイディアが浮かんだ。不思議なことに一度アイディアが浮かぶと、なぜ今までこれを思いつかなかったのか不思議なくらいにしっくりくる。と言うか、最初からこうするように話を作ってきたような気さえしてくるのだが、まあでもそういうものなのだろう。
・『芙蓉千里』(須賀しのぶ)を読んでいた。すごく面白い。少女大河ロマンと言った風情で、強い意志を持った少女が現実にぶつかりながらも足掻く話で、まあいつもの作者の作品だと言えるけど、舞台が1900年初頭の哈爾濱という歴史を背負ったことで、不思議なまでの情念の物語になっている。その土地に生きる人の持つ業、と書くと陳腐ではあるのだが、歴史というものはそれだけで積み重ねられた念(情念、想念)を持つものであるし、その上で描かれる物語は否応なしにそうした念を引き受けねばならない、と言うことかもしれない。
自分が読んでいるのは文庫版のⅠとⅡまで。Ⅰも面白かったけど、無邪気な少女ではなく一人の女として惑うようになったⅡが良かった。惑うというのはつまり選択肢を持つということで、選べるものがなければ選択の余地はない。そして選ぶことは手に入れることと同時に失うことである。人間の中身と言うのは、何かを得るときよりも何かを失うときの態度こそが真価を見せるものだと思うのだ。
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