« 日記 | トップページ | 日記 »

2013.09.16

『大日本サムライガール(6)』

大日本サムライガール(6)』(至道流星/星海社FICTIONS)

相変わらず面白いことは面白いのだが、面白いほどになんとも暗澹とした気持ちにさせられる話だった。なんというか、作者は本当に大衆がバカだと思っているんだろうな、と言う感じか。いや、さすがにそれは言い過ぎかもしれない。

主人公たちは超有能な集団で、この六巻まで来るともはや向かうところ敵なし、と言った風情があって、実際、彼らが仕掛ける戦略はどんどん成功して社会に対して影響力を生み出していく。その活躍は痛快であり爽快であるのだが、同時にそれは大衆を思うが儘に動かして、都合の良いように誘導していると言うことも出来る。別にそれが悪いというわけではなくて、社会を個人(に近い小集団)で動かして行くのならば、これは当然の選択であろう。そして、これは『羽月莉音』でもそうだったが、”超有能な小集団によってしか世界は動かない”という作者の前提があっての判断なのだろう。

今回、活躍するのは主人公の後輩にして右腕として活躍している由佳里で、彼女もまた若いのにでかい企画を実行できる超有能な天才なのだけど、彼女がメディアに登場することで彼女に大衆がどんどん感化されていく姿が描かれている。その感化と言うのが曲者で、由佳里に憧れる人々は実際のところ由佳里の実像などはどうでも良く、あくまでもイメージとしての由佳里でしかないようだ。由佳里が言ったと思われる気持ちのいい言葉によって、大衆はいくらでもその意思を左右されてしまう。こんな簡単に”イメージだけ”によって操られている大衆の存在、そしてそれが少数の意思によって動いてしまうことに恐ろしいような気持ちになるのだった。主人公たちの活躍が痛快であればあるほど、痛快に撃破されているのは”大衆”ではないかと言う感覚があって、いろいろ考えさせられるところがある。

もっとも、これは貶しているのではなくてむしろ逆で、実際のところは知らないが、このようにして(あるいはこの程度で)世界は動いているのではないかと思わせる現実感さえあるのだった。

|

« 日記 | トップページ | 日記 »

コメント

これからもっとダークになるのかな?

至道流星さんの新作『東京より憎しみをこめて』を読みました。
マスゴミはマスゴミだね〜

http://birthday-energy.co.jp/ってサイトは至道流星さんの生年月日は瀬戸朝香と同一。
つまり、気性的には本人も闘争的なあの一面がゴッソリあり、なんて書いてましたよ。どうなんだろ?コラムをぜひ読んでね♪
「ハレる運命2014」も配信中!!

投稿: hiro | 2014.01.16 22:10

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『大日本サムライガール(6)』:

« 日記 | トップページ | 日記 »