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2013.04.16

『聖剣の姫と神盟騎士団Ⅰ』

聖剣の姫と神盟騎士団I』(杉原智則/角川スニーカー文庫)

超人的な英雄たちを前にして、小悪党で機転と悪知恵と小細工を武器にして渡り合っていくという極めてボンクラな話なんだけど、こういうのはやはり楽しいものだ。主人公が凡人であるというだけで感情移入の度合いも違うし、そんな凡人が英雄たちの裏を掻いていくのは爽快感もある。もちろん、主人公もただの凡人と言うわけではなく、大きな野心を抱き、それを実行に移す行動力もあって、ある種のカリスマを持っているという描写はきちんとあって、それゆえに彼が活躍していく物語にきちんと納得がいくのはさすがだった。

この物語は、おそらく主人公の立身出世+戦記ものになると思うのだが、全体的に非常に明るくポップな感じになっている。今回はあまり人間のドロドロとした感情がメインではないようだ(もちろんこれから描かれる可能性はある)。どうも主人公のダークが良くも悪くも陽性の人物であることと無関係ではないだろう。物語そのものは、行間ではかなりの人数が死んでいるし、そもそもダークが仕掛けた策略はかなり悪辣なものなのだが、そこにはどこか抜けたような隙があって、陰惨な気配がまるで生まれないのだ(ダークがいちいちウィズゲーマーっぽい発言が多いのも原因かもしれない)。

これを不真面目と取るかユーモアと取るかで印象は変わってくるだろうけど、個人的にはこういう主人公も悪くないと思う。実力も伴わないのに野心だけは大きく、欲望に忠実で道徳観は薄いと、作中でも描かれている通り小悪党以外のなにものでもないのだが(実のところ彼が大成しそうな感じはあんまりしない)、なんとなく地位や名誉とは関係のないところで大きなことをやりそうなところがあって、そういう中途半端な大物感を漂わせる主人公の描写はけっこう面白い。『烙印の紋章』の主人公オルバも英雄と言うには実に屈折した主人公だったので、きっと作者、ひねくれた英雄が好きなんだろうな(たぶん『皇国の守護者』シリーズが好きに違いない。自分も好きだ)。

そんな主人公が、次々に現れる”英雄”たちとどんなふうに渡り合っていくのか、なかなか楽しみを感じさせる序章だったと思う。

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