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2013.04.08

『シュヴァルツェスマーケン(5) 紅蓮なる弔鐘の中で』

シュヴァルツェスマーケン(5) 紅蓮なる弔鐘の中で』(内田弘樹/ファミ通文庫)

主人公テオドールが、己にとって大切なもの、すなわちアイリスディーナ、カティア、リィズのすべてを助けようとして、結果的にすべてが瓦解していく姿が描かれる。アイリスディーナを切り捨てていればカティアとリィズと共にあるいは平和な日常に戻れたかもしれない。リィズを切り捨てていれば中隊は無事であったかもしれない(まあフォート級を倒せたかどうかわからないが)。しかし、そうだとしてもどれかを切り捨てることなど選べないテオドールは、自身の能力を限界まで振り絞ってかつ最善を尽くし切って希望を見出そうとしたのだろう。

実際、彼の機転や判断は絶望的な事態を切り抜ける希望となったこともあるし、それによって幾人かの命を救いもしている。彼はすでに自分の選択が正しいのかどうかはわからないまでも、正しいと思う選択を積み重ねていこうと決意しているのだ。今までアイリスディーナに依存していた状態から、たとえ相手の意に反することだとしても、自身が信じる道を選択できるようになったのだ。それは実に正しい成長であるし、それは希望であるかに見えた。しかし、それでもなお届かない。すべてを救い上げたと思った瞬間に、彼の手から多くのものが零れ落ちてしまう。なんというか、そこに”絶望”と言うものを感じた。絶望とは希望がないことではなく、希望を奪われることを言うのだ、というような。

結局、彼が必死になってつかみ取った救いは、その後奪われるためだけのものに過ぎなかった。果たしてこの事実はテオドールをどのように受け止めるのだろう。再び希望を掲げて立ち上がるのか、あるいは絶望に飲み込まれてしまうのか。少なくとも、あらゆる状況は彼に”選択”を迫りつつあるようだ。何を救い、何を切り捨てるのか。その選択が、またテオドールに何をもたらすのか、今はまだわからないのだが、それでも残酷はすぐそばまで迫っている。それにどう向き合うのかが描かれることになるのかもしれない。そのあたり、なんともマブラヴシリーズらしい物語だと思うのだった。

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