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2013.03.25

『甘城ブリリアントパーク(1)』

甘城ブリリアントパーク(1)』(賀東招二/富士見ファンタジア文庫)

主人公が最初から最後まで成長しない完成された人格を持っているのは人によって評価が分かれるところかもしれない。成長物語ってのはわりと無条件に称揚されるところがあるし、物語に起伏も作りやすいしね。世間の評判はいまいち良く分からないんだけど、たぶん、主人公がピンチに陥ってないとか盛り上がりに欠けるとか言われているんじゃないかな。まあ、それも一面の事実ではある。正直なところ成長物語にもいろいろあると思っていて、あんまり興味の持てない成長をされても困ると言う感じがあるのだった。まあ、そういう作品にも”届く”読者はきっといて、その読者にとっては替えの効かない作品なのだろうし、そうであるべきだとも思う。”唯一正しい成長物語”なんてゾッとしないしね。

ともあれ、最近は成長物語に対してそれほど強い思い入れはなくなってきているのだった。たぶん、自分の中で成長すると言うことに興味がなくなってきているのだろう。別に成長を否定しているつもりはなくて、成長と言うのはあくまで結果であるという想いだ。つまり、成長するために行動するのではなくて、行動した結果成長するものなのだ。知識や経験と言うものは、ただそれだけで価値がある。別に”成長するために”知識や経験があるわけではないと思うんだよね。だから成長することが無条件で称揚される物語にはいろいろと考えてしまうところがある。もちろん成長することは良いことだが、それだけがすべてではないはずだ。

まあ、だからと言うわけではないけど、主人公の成長が描かれていない(少なくともメインではない)この作品には安心感があるのだった。感情に流されず、心の機微にも敏感な主人公がいてもいいじゃない。与えられた無理難題に対して、奇跡を求めるのではなく、他者の助けを借りることもなく、自分の手を汚すことも恐れない主人公の姿には、作者の一定の誠実さが感じられる。主人公のやり方は決して正しいやり方ではないし、もし明らかになれば失われるものも多いものだけど、それでもやらなければいけない時がある。それは自分がきれいなままでいるために周囲を不幸にするような人間よりも余程マシな人間だろう。つまり、そこにはちゃんと本当の事(現実的と言う意味ではない)を描こうとしていると言うことで、そういうのは誠実さと言うものだと思うんだよね。

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