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2013.02.15

『棺姫のチャイカⅥ』

棺姫のチャイカⅥ』(榊一郎/富士見ファンタジア文庫)

作者は本当に手堅く物語を書くなあ、と感心してしまった。ここまで何一つ尖ったところがない作品と言うのはある意味すごい。正直、個人的にこういうのは褒めたくはないんだけど、ここまで徹底されると褒める以外の言葉が出てこないなあ。

なぜ褒めたくないのかと言うと、この作者は物語に対してまったく愛がないように見えるからです。まあ、愛がないと言うと言い過ぎかな。物語を書きながら何を考えているのかが分からない、と言うのが正確かもしれない。まあ、これは自分の趣味の問題になるので賛同されない可能性もあるけど、小説ってのはやっぱり作者本人の思考や嗜好がどうしても反映されるものじゃないですか。抽象的な言い方で申し訳ないですけど、作者が重視しているものは過剰になったりするんだけど、自分はそういうのを求めて小説を読んでいるところがあって、そういうのがあるといろいろ破綻していても許せてしまうんだ。

それに対して、この作品に感じるのはまったく逆なんですよね。キャラクターの行動原理は明確で、伏線もきちんと回収して、シリアスとギャグのバランスも良く、硬質さを残しながらも程よく崩されている。もうライトノベルのお手本と言ってもいいんだけど、どうもこう、破綻がなくて、個人的に物足りない。作者、本当はもっと過剰になんか突っ込めるんじゃないの!?本気を出せばもっとぶち壊せたんじゃないの!?みたいな感じが沸いてしまうんだ。いや、ぶち壊したら駄目だけど。

前から思っているんだけど、どうも榊先生は本気で限界に挑戦していないって感じがあって、そこがもどかしいですね。いつも高いレベルで安定しているんですけど、高いレベルを突き抜けようという気がなさそうと言うか。まあ、挑戦的なことをすると失敗のリスクもあって、それを考えれば挑戦しないというのも悪い選択肢ではないけど。それを責めるのはちょっと読者としても無責任すぎるかな。

でも、自分は安定した秀作より、破綻した駄作の方が好きなんだよなー。だったら他を読めって?そりゃそうだ。

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コメント

共感しました。
この人の本気作が読みたくなるんですよね。

投稿: | 2013.03.27 10:52

榊先生の現在の作品を貶めるつもりはまったくありません。ただ、余計なお世話だと思うんですが、榊先生はまだまだ実力を隠している感じがするんですよね……。

あるいは、自分の知らないシリーズではまた違うのかもしれません。

投稿: 吉兆 | 2013.03.27 20:09

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