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2013.02.07

『魔弾の王と戦姫(6)』

魔弾の王と戦姫(6)』(川口士/MF文庫J)

前回の話でティグルのカッコよさが頂点に達してしまったため、今回はどうなるのかなあと思っていたので、ちょっと感心してしまった。いやね、今回から登場した戦姫オルガのキャラが、今までのと違って”未熟”であるところが面白いな、と思ったわけです。今までティグルが出会ってきた戦姫は全員が彼よりも上手であり、それに翻弄されれるティグルの図式が定型化されていたわけですが、今回はそこから離れているところが良かったですね。しかもオルガは年齢においてもティグルの下で、戦姫らしく戦闘力は無双であるものの、重い責任を背負うことに対して臆病な少女という面も持っている。そこへやってきたのが、数多くの戦いを経て、己の責任を受け入れて知勇兼備の英雄に成長したティグルさんと言うわけ。

いやーオルガの視点と言うものが持ち込まれたことで、ティグルの英雄っぷりが際立つこと際立つこと。周囲に彼に匹敵する存在がいないこともあって、まるで欠点のない物語の中の英雄みたいな活躍をしてしまっている(いや、物語なんですけどね。そういうことじゃなくてね)。こんなものを見せられたオルガは当然の如くティグルのシンパになっちゃうわけですが、申し訳ないですが、あなたが憧れている男は地元が女の尻に敷かれているんですよ、大丈夫ですか?と言いたくならないでもないですが、その辺は彼の甲斐性でなんとかしてもらいましょう。

えーと、そんな話はどうでもよくて。とにかく、他の戦姫と別れたこともあって、今回は”ティグルの冒険譚”の方向が強くなっている感じです。ティグル自身が考え、決断していくことで物語が動いていく。彼もずいぶん戦慣れをしたこともあって、数々の試練を機転と弓術で切り抜けていく物語には昔ながらのファンタジー戦記を思わせるところもあって、ライトノベルの要請に基づきラブとコメとエロをいれつつも、作者はちゃんと自分のやりたいことをやっているんだなあ、と感心させられます。こういう風にやりたいこととやるべきことをきちんと両立できるあたり、いち社会人として尊敬せざるを得ませんね。

あと、読者の余計な心配としては、前回の最終局面周辺の合戦描写にはちょっと性急さや描写の不足が散見されたので、今回はそういうことがないといいなあ、と。今回の城攻めみたく、こうした細かい作戦の描写があると、戦記物としてとても手触りが良くなる感じがしますね。そして、真面目な描写が続きそうなところでロリ全裸とか入れて来る作者の配慮には頭が下がります。バランスを取るのも大変ですなあ。

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