« 『棺姫のチャイカⅥ』 | トップページ | 『空ろの箱と零のマリア(6)』 »

2013.02.19

『アクセル・ワールド(13)―水際の号火―』

アクセル・ワールド(13)―水際の号火―』(川原礫/電撃文庫)

ニコがハルユキがバーストリンカー女子にモテる理由みたいなことを言っていて、それがなかなか説得力のある言葉だと感心してしまった。ちょっとだけネタバレになるけど、年期の入ったバーストリンカー女子ほどバーストリンク中の自分とリアルの自分のギャップを感じているという話のようだ。いかに無敵のバーストリンカーであってもリアルではか弱い少女でしかないと言う事実、そして強者の気持ちを知っているからこそ弱者でしかない自分の危うさを理解してしまっていると言うことだろう。それゆえにリアルの男子(あるいはリアルそのもの)は警戒の対象にしかならないというわけだ。

そんなバーストリンカー女子にとって、ハルユキはリアルにおいてもバーストリンクにおいても恐怖の対象にはなりえないらしい。まあ、ある意味において男としてみなされていないという意味もあるんだろうけどそれだけではなくて、彼の見た目や性格には他者を恐怖よりも親しみを抱くものだということだ。確かにイラストで描かれているハルユキのまんまるカワイイ姿はマスコットやぬいぐるみめいたものの方が強く感じられる。ある意味これも「ただしイケメンに限る」と言うやつかもしれないが、イケメンやカッコ良いと言うのは、つまりそれだけ少女を搾取する存在であり、その意味でイケメンはむしろ警戒の対象であるのだろう。このあたりの理屈展開はなかなか納得の行くものだった。これはハルユキがいろいろなバーストリンカー女子にモテまくるのは一見ライトノベル的なご都合主義のハーレムのように見えるけれども、そこには明確な理由付けがされていると共に彼女らが抱えるバーストリンクに対する依存とリアルとの距離を示すものでもあるということ。つまり、”ハルユキがモテる理由が世界設定のレベルで設定されている”と言うことだ。

このように物事の因果関係が非常に拘っているのは川原礫という作家の面白いところだと思う。なんというか、あらゆる物事には必ず理由がある、という信念を感じさせられるんだよね。しかも、作者の想定しているらしき因果関係は二重三重に組み合わさった非常に複雑なものになっていて、しかも、非常に整理されているとも感じるのだ。 まあ、実際に作者がどう考えているのかはともかくとして、少なくとも自分が感じるのは、物語のすべて、それこそキャラクターの心理から世界設定までのすべてを徹底的に制御しようとする作者の強い意志だ。普通ならば”なんとなくお約束だから”ですまされるような描写にさえ作者の考える世界でどのような意味を持つものなのかを考えてしまっているのではないかと思えるのだ。

個人的には、あらゆる物事に因果関係を明確にしようとするのは窮屈だと思うし、それに囚われてしまい過ぎになりそうな危惧も感じるのだけど、それはそれとしてここまでそれをきちんと管理しているというのは、やっぱりけっこうすごいことだとも思うのだ。

|

« 『棺姫のチャイカⅥ』 | トップページ | 『空ろの箱と零のマリア(6)』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/56796681

この記事へのトラックバック一覧です: 『アクセル・ワールド(13)―水際の号火―』:

« 『棺姫のチャイカⅥ』 | トップページ | 『空ろの箱と零のマリア(6)』 »