« 2012年の振り返りにも似たランキング | トップページ | 『魔法少女育成計画 restart(後)』 »

2013.01.05

『RPF レッドドラゴン(3) 第三夜 妖剣乱舞』

RPF レッドドラゴン(3) 第三夜 妖剣乱舞』(三田誠/星海社FICTIONS)

もうTRPGリプレイ(いやRPFだが)とか関係なく異常に面白いぞこれ!?なんかこう、なんだ、ほら時々さ、小説を読んでいると「お、こういう展開って俺大好きなんだよね!無条件でワクワクするぜ!」っていう感覚があると思うんだけど、それが一冊読んでいる間ずっと続いている感じだ。おかしいだろ!なんでこんな感覚がずっと続くんだよ!

やっぱりさ、参加しているプレイヤーとFM(GM)全員が”創る人”であると言うのが大きいんだろうね。普通の小説って、なんだかんだ言っても作者は一人なわけで、一人で書いているとどうしても緩急が生まれてくる。これは読者に必要以上に負荷を与えないということだけではなく、緩急の落差によって読者を最小限の力でショックを与えることにも意味があるんだろう(まあ、もちろん緩急の意味はそれだけじゃないけど、ここでは一応そういうことにしておく)。

しかし、この作品では創作者が一人ではないせいで、全員が”自分の話”をガンガン本編にねじ込もうとすることによって物語がどんどんヒートアップしていくんだ。「緩急なんてしったことじゃねえ!そんなことをしている暇があったら自分のキャラの話をさせろやコラ!」と言わんばかりに(偏見)各PCのドラマがすさまじい勢いで展開して言って、読んでいるこっちは「ちょ…ちょっと待って!?」と言いたくなるぐらいにドラマの波に翻弄されるのだった。

ウロブチ先生、ちょっと一人で血と闘争の宴に耽溺しすぎ!剣に対する恋慕にも似た狂気とともに、破滅に一直線に突き進む婁震戒(ロー・チェンシー)は完全にウロブチ暗黒武侠ストーリーの主人公と言う感じなのだが、それに対して立ちふさがるは、奈須きのこが演じるスァロゥ・クラツヴァーリ。己の剣にすべての狂気を捧げる婁に対して、”己の触れるものすべてを破壊してしまう”呪いを持つ彼は、見た目はのんびりとしたお人良しの青年にして見えない。しかし、その内実に「大切なものを何一つ持てない」という絶望的な狂気を抱えており、”己の剣にすべての狂愛を捧げる”婁に対して、”そもそも一つに拘ることが出来ない”スアローは、存在のとしての在り方そのものが相容れないのだ!なんだこりゃ宿命のライバルじゃねえか!? 己の全存在をかけて否定しあわなければ自分が崩壊しちまう関係じゃねえか!!お前ら二人、グルになって関係を作り上げただろ!?しかもゲームセッションだから本当の意味でどっちが勝つのかわかんねえじゃねえか!!

もう、この二人が緊張感をもって接しているだけで異常に面白かったのだが、ついに今回、婁がその牙をむいたことによって、二人の関係は緊張の限界を突破してしまったのにはびっくりした。しかも、ウロブチ先生も奈須先生も、どっちも”わかっている”と言うか、「宿命のライバルたるもの、このようにして相容れない対立を深めていくもの」という共通了解があるせいで、これがまたリアルタイムで宿命が見事に紡がれていくのだ(相手にとって重要な意思を否定する、相手にとって大切な女性を傷つける、等…)。二人で打ち合わせでもしていたんじゃないかと思うのだが、それにしても明らかに神が降りていた……。

このあたりは前も書いた気がするんだけど、なんというかさあ、昔読んでいたRPGリプレイってのはさ、やっぱりGMが物語の語り手だったんだよね。プレイヤーはGMの語る物語を体験する読者の立場だったと思うんだよ。でも、やっぱこのシリーズは違うわ。全然違うわ。FMはあくまでも世界を提供するだけで、そこで語られるのはプレイヤーの作る物語なんだよね。しかも、今回で明確になったんだけど、”プレイヤー同士もまたお互いに協力して物語を創っている”んだ。婁とスワローの関係は完全に宿命的に対立する二人だし、紅玉先生としまどりる先生が演じるキャラだってそうだ(エィハと忌ブキの関係は完全に数奇な運命に翻弄される少年と、それを支える少女の恋愛物語になっている)。この関係は、それぞれの”物語”を紡いでいくにあたって不可欠な存在になっているのだが、それでもお互いが完全に予想通りに動かないために、時に破綻しかねないほどの流動性を持つ。これはもう、全員に”物語を描く”と言うことに対する強い目的意識(まあ、あるいは創作者としての業かもしれんが)が共有されているからだろうね。だからこそ、作者一人の手によってコントロールされた物語にはない、生々しい面白さがある。前から同じようなことは思ってはいたんだけど、今回、それをはっきりと実感したと言うか、いや、やっぱプロは違うな!うん!

|

« 2012年の振り返りにも似たランキング | トップページ | 『魔法少女育成計画 restart(後)』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/56476155

この記事へのトラックバック一覧です: 『RPF レッドドラゴン(3) 第三夜 妖剣乱舞』:

« 2012年の振り返りにも似たランキング | トップページ | 『魔法少女育成計画 restart(後)』 »