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2013.01.08

『魔法少女育成計画 restart(後)』

魔法少女育成計画 restart(後)』(遠藤浅蜊/このライトノベルがすごい!文庫)

いやー面白いねー。こういうバトルロイヤルものを自分が好むということを除いても、とても面白く読めた。面白く読めすぎてどうも上手く評する言葉が出てこないんだけど、まあ、やっぱり登場キャラクターが平等に殺されていくような話は良いね!なんて書くと人格破綻者のように思われてしまいかねないので補足すると、殺されるのが良いのではなくて、平等に殺されていくというのが良いということ。やっぱり、主人公補正で死なないことが確定しているような登場人物がいるとバトルロイヤルは面白くないしね。

バトルロイヤルの面白さと言えば、容赦なく殺されていく登場人物にも、様々な葛藤や意思があって、その上で大いなる不条理や他人の意思によって押しつぶされていくという無常観もあると思うんだけど(言うまでもなく個人的な嗜好です)、今回はその点も良かったですね。なんといっても、今回殺される魔法少女はなんだかんだで前巻を読んでその背景や想いもきっちり描写されているし、いろいろな冒険を見守っていたこともあってそれなりに愛着もある。そういう子たちが志半ばで殺されていくのは、やっぱりグっと来ますよねえ。……いや、負のね、カタルシスと言うかね、そういう話ね。

でもまあ、バトルロイヤルものだとキャラクターがすごく多くなるから、キャラ一人一人を書き分けていくことを考えると、ある程度の長さがあった方がやっぱりいいね。一巻も良く出来ていたけど、どうしてもスポットが当たるキャラは限定されているところがあったので、今回は上下巻になったことで、ちょっとした脇役を描写することも出来るようになっているのが良いですね。ちょっとしたエピソードがあるだけでずいぶん印象が変わる。例えばディティック・ベルとか。実は自分、彼女がすごく好きなんですよ。探偵に憧れてその業界に入ったけど、現実にはそこには華やかなものなんてなくて、それでも探偵という職業に対する愛情は変わらない。自分がなりたい自分となれる自分のギャップ。結局、彼女には真実を暴くような力はなくて、作中でも彼女は見当違いのことばかりしてしまうのだけど、そうした自分と、なにより現実と折り合いをつけていって、その上で自分の理想を現実に積み上げようという懸命さ。あーもうどれをとってもたまらん。後半でプフレを見て「こういう人を本当の名探偵と言うんだろう。まあ推理の出来ない探偵と言うのがいてもいいさ」みたいなことをつぶやいたディティック・ベルが本当に良かったね。これだけ抜き出すと諦めただけのセリフに見えるかもしれないけど、これは現実と理想を見据えて、自分の才能のなさに葛藤を潜り抜けた上でのセリフだからね。すごく強くて切ないけど前向きな言葉だと思うよ。だからこそ、彼女に降りかかる運命が悲しく、そこから足掻く姿に感動を覚えるんだ。

ディティック・ベルが好きなんで彼女を話題に出したけど、基本的にメインの活躍をする魔法少女たちはみんなそういう懸命さがあって、生まれてくる残酷さもそういう懸命さが生まれていくというのが無常観がある。どうしようもない現実と、そこで理想をかなえようとする意思。残酷はそうした崇高な意思さえもねじ伏せていくが、いくつもの意思が重なって、ようやく少しの命が救い上げられる。それがきっと本当の魔法だと思うし、奇跡ってはそのようにして生まれていくものなんじゃないかと思うんだよね。

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