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2012.12.10

『あるゾンビ少女の入学Ⅰ』『あるゾンビ少女の入学Ⅱ』

あるゾンビ少女の入学Ⅰ』『あるゾンビ少女の入学Ⅱ』(池端亮/角川スニーカー文庫)

いきなり告白すると、僕は”怪物”が好きだ。「十三日の金曜日」のジェイソンや「エルム街の悪夢」のフレディを初めとして、人間に対して恐怖と殺戮をまき散らす存在としての”怪物”がとても好きだ。過去に悲しい出来事の結果としての”怪物”も好きだし、過去はなく意味もないただ悪意に満ちた”怪物”も好きだ。だからこのシリーズには、わりあい、結構期待しているところがある。これは”怪物”の話だからだ。

前作がスプラッタホラーのパロディ的な側面の強い変化球であったのに対して、今回はわりと気を衒ったところのない素直なものにしているようだ。もともとユーフロジーヌのキャラクターは、ジェイソンやフレディがおっとりとした美少女だったら、というところから来ていたと思っているのだが、そうした萌え美少女が登場人物たちを情け容赦なく虐殺していくところにねじれた可笑しみがあったように思う。しかし、今回からはゾンビであるユーフロジーヌをそのままに受け入れられる設定がまずあって、そのため”怪物”としての彼女の存在意義は後退して、その代わりに彼女本来のおっとりとした美少女であるという側面が強く表れるようになっているのだ。

これはある意味では先鋭さを失っているとも取れるわけだが、そもそも前回がパロディであったので、同じことをしても二番煎じになりかねないことを考えれば当然の選択であったとも言える。個人的には怪物として排斥されるユーフロジーヌの姿を延々と描写されてもどうかという気もするので、これはこれで悪くないと思う。自分は存外、ユーフロジーヌというキャラクターを気に入っているのだ。”怪物”であり人間の倫理観からはかけ離れた精神を持ちながらも、穏やかで気立ての良い少女でもあるというユーフロジーヌが。だから、彼女が恋をして、ゾンビだから頬を赤らめたりは出来ないにしても、けっこう楽しそうにやっているのは、それだけでも良いものだと思う。

もっとも今回は”入学”であり、あるいはこれは序章に過ぎないのかもしれない。続きが順調に出ていくのならば、もっと別の物語が生まれるのかもしれない。”怪物”であり”少女”でもあるユーフロジーヌが”活躍”する物語が生まれていくのかもしれない。それはとても楽しみなことのように思えるし、いろいろと可能性のある話だと思う。なにしろ僕は”怪物”が好きなのだ。”怪物”であり”少女”でもあるユーフロジーヌが、怪物のまま生きるのか、少女として恋をするのか、あるいはどちらでもないのか。それはとてもわくわくする話だと思う。

例えば、今回から登場して、明らかにユーフロジーヌよりも主人公として描かれている指宿孝晴は、あくまでも人間としてユーフロジーヌに接している。ちょっと鈍感だがおせっかいで前向きな孝晴はユーフロジーヌに対しても”少女”として接していき、二人は”少年”と”少女”として交流を深めていくことになる。これによってユーフロジーヌの”少女”としての側面が強調される結果になるのだが、これは彼女の”怪物性”が否定されることにはならない。やはり彼女は”怪物”のままであって、それは決して消えることはない(後悔している描写はあるが、否定する描写ではない)。

これによって、彼女の背負う”怪物性”と”少女性”は相反しながらも両立する形になるが、それはひどく不安定なものだ。おそらくなんらかのきっかけで容易くバランスを崩す程度の、それぐらいに脆いものなのだ。それゆえに、物語が進むにつれて、ユーフロジーヌと孝晴は、彼女が”怪物”と”少女”のどちらを選ぶのかを迫られることになるだろう。そのとき、どのような物語が描かれるのか、これはとても面白そうなことに、僕には思える。”怪物”は”怪物”であることを乗り越えられるのか、あるいは”怪物”のまま生きるのか、それによって関係はどう変わるのか?こういう話には、実はたいそう弱い自分なのであった。

追記。外見年齢が同い年くらいのお祖母ちゃんとか最高だよな!い、いや別に人外ロリとかそんなんじゃなくて、見た目美少女だけど、孫には優しいお祖母ちゃんとか、なんかこう、ほら、一つの理想がそこにあるっていうか・・・。

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