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2012.10.21

『這いよれ!ニャル子さん(10)』

這いよれ!ニャル子さん(10)』(逢空万太/GA文庫)

とても安心感の漂う作品だった。この危機感のなさ、カタルシスのなさはすごい言うかなんと言うか、やっぱりすげえ。事件がろくに起こらないくせに、キャラクターが動いているだけで一定を面白さを引き出しているわけだから、下手に事件を起こすことよりもずっとすごいことをしているのではないだろうか。

まあ、別にすごく面白いというわけでもないんだけど、そういうはらはらドキドキ系の面白さは読者である自分も求めていないって言うか。そもそもそういう方向性は作者も最初から考えていないことをあとがきで書いているしね。それにシリアスに物事を描けば良いかと言うと、そうでもないとも思う。シリアスに描かなくても真面目な物語は描けるし、シリアスだから真面目な物語とも限らないものだ。前回の話はいかにもシリアスに描かなくても真面目な物語だったと思うし(前巻の物語は、真宥が自分の平凡な日常よりもニャル子たちの方がずっと大切なんだと言うことを示したエピソードだった)。どうも自分はシリアスと言うか、深刻に物事を描くことに対して懐疑的なところがあって、深刻な問題を深刻に描いても面白くもなんともないと思うのだ。深刻に描いたところで問題が解きやすくなるわけでもないし、むしろ視野狭窄に陥っているんじゃないかと思ってしまう。まあ、これはぜんぜん関係のない話だったな。閑話休題。

えーと。そういや今回登場したアト子さんは、だいぶ固まってきてしまった真宥たちの関係を動かすために投入されたのだろうか。ニャル子はともかくクー子が真宥に完全にデレてしまって、またハス太とルーヒーがいい雰囲気になりつつある状況だと、どうもやり取りがワンパターンになりやすくなっている。いわゆる倦怠期と言うやつか(違う)。その意味では前巻でニャル子たちとの日常を受け入れた次の回にアト子を放り込んだのは、絶妙のタイミングだったと言ってもいいのかもしれない。アト子が入ることで、安定しているニャル子たちに対する危機感を演出することが出来る、と。キャラ的に、この上なく冗談ではすまない凄みもあって、本当に何かをしでかしそうな雰囲気がある(まあ何も起こらないんだろうけど)。倦怠期に陥った関係を新鮮なものにするのは、やはり外部からの刺激なのだろう。何の話だ。

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