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2012.09.09

『人生 第3章』

人生 第3章』(川岸殴魚/ガガガ文庫)

ちゃんと物語が動いていることに衝撃を受けた、と言うのは大袈裟な言い方ではあるんだけど、そういう感覚がまったくないとも言えない感じ。いや、二巻でもわりと動いていたような気もするんだけど、そうして生まれた関係がリセットされずに継続していくと言うところがはっきり見えたのに安心したと言うか。

一応、今回は表紙にもなっている鈴木いくみの回になるようで、相談の傍ら彼女の突拍子もない言動によって物語は動くことになる。相談BOX焼失事件の犯人を捜すという物語の前提は提示されるものの、そこは素直に行動を起こす人間など一人もいない相談対応者たちの答えの見えない(主にいくみが原因の)迷走が、いつのまにか商店街を舞台にした捕り物に発展していく。いちおう、三人の中ではいくみがもっとも行動的ではあるので、彼女の行動にそれぞれ引っ張られるところはあるのだけど、いくみは行き先を考えないで行動に移すため、結局、グダグダの展開になる展開には、ある意味お約束といった安心感のあるコメディとなっている。

そんな中でも物語はそれなりに動いていて、いくみにとっては非常に重要な存在を”再生”することが必要になり、そのために主人公が奔走することになる。その結果として主人公といくみの関係には多少の変化が生まれていくのだが、おそらくこのあたりが前作の『大沼』シリーズと大きく違うところかもしれない。と言うのも、前作の場合、人間関係が基本的に変わらないところがあって、そしてそれはギャグとしての純粋さと言う意味ではそちらの方が王道だと思うのだが、キャラクターの関係性を見たいという不満も、まったくないとは言い切れない。いや、自分でも軟弱なラノベ脳だとは思うのだけど、勇者を初めとしていろいろと面白いキャラクターは多かっただけに、主人公との関係がいつまでたってもクラスメイトAでしかないと言うのは、ちょっと勿体無いと思わざるを得ないのだった。今回のシリーズにおいては、あるシチュエーションにおける登場人物たちの非常にローテンションでグダグダな会話が描かれると言う点では前シリーズと同様なのだけど、キャラクターの関係性にも時間が流れているあたりに痒いところに手が届いたと思えるところがあって、非常に満足度が高いのだった。

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