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2012.07.26

『あるゾンビ少女の災難Ⅰ』『あるゾンビ少女の災難Ⅱ』

あるゾンビ少女の災難Ⅰ』『あるゾンビ少女の災難Ⅱ』(池端亮/角川スニーカー文庫)

ゾンビ少女と言うものの、死体から生み出された擬似生命体と言った風情な主人公を見るにフランケンシュタインズモンスター少女、という感じがする。まあ、フランケンシュタインズモンスターだって、ゾンビみたいだと言われたら、そうかなと言う気もするけれど。もっともそれはたいして問題ではなくて、重要なのは、この物語の主人公はいわゆるホラー映画で言うところのモンスター側の存在だということ。『13日の金曜日』におけるジェイソンや、『エルム街の悪夢』におけるフレディ、それに相当するのがこの物語の主人公、ユーフロジーヌだ。

ユーフロジーヌはイタリア生まれの可愛らしい怪物である。育ちが良くて天然ボケでかなりのドジだけど、人間の命を歯牙にもかけぬ恐るべき殺人鬼だ。彼女は別に残酷と言うわけではない。むしろ気立ては良いし優しい良い娘なのだが、人間に対しては恐るべき殺戮者となる。なんとなれば、彼女は”怪物”であり人間とは別の生き物だからであり、感情移入の対象とはなりえない。目的の障害となるのなら、道端にいる小石をどける感覚で、彼女は人を殺すのだ。

この物語は、そうした美しき……いや、ちょっとドジで可愛いらしい怪物が繰り広げる虐殺劇。閉鎖空間に閉じ込められた学生たちの疑心暗鬼を書き立てつつ、一人一人殺戮を始めていく姿はホラー映画の怪物そのものである。まあ、ちょっとうっかりミスは多いけれども、それはまあご愛嬌というものだろう(現代の怪物は愛嬌だって振りまかないといけない)。ただ、彼女にとって誤算だったのは、学生たちの中にも、”怪物”が存在したことである。その怪物は、決して人外の存在ではないが、人間の持つ悪意を凝り固めたような邪悪な存在であった。言うなれば『羊たちの沈黙』のレクター博士のような、人間ではあっても”怪物的精神”を持ったキャラクターと言えるだろう。これもまたホラー映画の”怪物”そのものだ。”怪物”ではあっても善良なユーフロジーヌは、逆に追い詰められていくことなり、そうして物語は”怪物”対”怪物”の物語となっていく。片や人間をやめた人外と、片や邪悪の権化のごとき人間、その戦いは熾烈を極め、最後の戦いに向かうのだった。

個人的な好みで言えば、”精神的怪物”である彼女は、最後まで人間のままでいて欲しかったところなのだが(人間的邪悪のままで”怪物”と対峙して欲しかったが)、それはそれとして、愛しき怪物であるユーフロジーヌが泣いたり笑ったり怒ったり憎んだりしながら学生たちを殺戮していく物語はやっぱりキュートで爽やかなものになっていると思う。

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