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2012.07.06

『烙印の紋章(11)』

烙印の紋章(11)』(杉原友則/電撃文庫)

ここに至るまで、オルバは着実に成長してきている。それは何のために権力を求めるのかという問いの答えを得るためのものであって、当初は自身の虐げられたものの憎しみから始まり、その後持てるものの義務へ繋がり、いま世界の未来を見据えるところまでやって来ている。彼のあり方はかなり理想に近く、仮に正解ではないにしても、正解を追い求めようとする意思はあって、それはとても価値あることなのかもしれない。

しかし、ここに来て彼の過去が彼の足を引っ張ろうとする。虐げられたものを含めてすべてを背負おうとした彼自身のすべてが、彼にその未来を奪おうとしてくるのだ。結局のところ、人間にとって最大の敵は”過去”であり、過去に為したこと為されたことが、そのまま本人のところへやってくるものだ。過去は絶対に消えないし、絶対に逃げられないものなのだろう。

まあ、ちょっと穿った見方をするならば、物語的には過去からの刃とはオルバが成功するためには避けては通れないものであって、これを乗り越えることによってオルバの英雄伝説はクライマックスを迎えることになる。そういう風に考えてみると、後は”乗り越え方”の方法をどのような形を取るのかという事になって、それがグール皇帝との直接対決となったのは実にドラマティックだったし、納得のいくところだった。

ただ、少し読みきれないところがあって、それはイネーリの存在が良く分からない。彼女はヒロインなのか、あるいはラスボスなのか、その辺りが自分の中では結論が出てないところがあって、先ほども書いた”過去との対決”というオルバの物語にとって極めて重要なところに介在したあたりはかなり驚いてしまった。そこまでオルバの物語に深く関わっちゃうのかよ、という感じ。まあちょっと関わりが強くなりすぎてしまったので、これはヒロインと言うよりラスボスかなーという感じもするけど。その辺りを注目しながら、物語の行方を見ていこうと思う。

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