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2012.06.26

『メグとセロンVII 婚約者は突然に』

メグとセロンVII 婚約者は突然に』(時雨沢恵一/電撃文庫)

メグミカとセロンの恋の駆け引きって言うか、感情のすれ違いがややこしいのか単純なのか良く分からなくて、メグミカさんも乙女だったんだなあ(超失礼)と思った。メグミカさんは別に聖女でもなんでもなくて(セロンはたぶんマジで聖女だと思っていそうだけど)、言葉が不自由なせいで天真爛漫に見えているけれども、内面は怒ったり悩んだりへこんだりもする普通の女の子なんだね。ただ、それを知っているのはスー・ベー・イル語を喋ることが出来るリリアだけ、と言うのが問題ではあったわけだけど。

今回のゴタゴタは、そうしたメグミカの内面と外面の乖離から生まれたものだ。もちろん、新聞部員たちは、ちゃんとメグミカだって普通の女の子なんだということは分かっていると思うけど、それでも普段の(言葉が不自由なゆえの)空気の読めなさ、(ロクシェ語では伝えきれないものを伝えるための)行動力から生まれる先入観みたいなものが残ってしまっている。これは読者にとっても、少なくとも僕にとっては同じで、ときどきメグミカは女神みたいな子なんじゃないかと感じるのだが、時折挟まれるリリアとメグの会話でようやく、あメグミカって普通の女の子なんだな、と思い出すのだった。一方でスー・ベル・イル語を使う側であるリリアやメグミカの家族の方ならばメグミカの本当の姿は分かっているかというと必ずしもそうとは言えなくて、ロクシェ側での彼女を知らないという側面がある。つまり、彼女らは”普通の女の子”としてのメグミカしか知らず、新聞部において皆を引っ張る起爆剤としてのメグミカを知らないのだ。

結局のところ、人間の”本当”などと言うものは環境や状況、ここでは言葉の問題も含まれるけど、そうしたもので見え方は変わるのだ、ということが描かれていて、それは本当に正しいことだと思う。どちらのメグミカも”本当”であって、しかし、それを把握している人間がほとんどいなかったことが、今回のすれ違いの本質なのだ。だからセロンがするべきことはそのギャップを埋めることであって、それが”スー・ベル・イル語を学ぶ”ということを選択したセロンは本当に正しい。物語の最後で、セロンがメグミカに対して下手くそなスー・ベル・イル語で語りかけたというのはそういう意味であって、つまり、メグミカの両面をきちんと受け入れたいということを態度で示したということなのだ。

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