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2012.06.28

『おまえは私の聖剣です。』

おまえは私の聖剣です。』(大樹連司/GA文庫)

少年が早々に覚悟完了しているのに対して、少女の方がなかなか少年を受け入れられないあたりが面白かった。主人公側の方が異常に対する適応性が高いと言うのは、ある意味において非日常を常に妄想しているボンクラ的な発想に近く、『オブザデッド・マニアックス』の主人公を思い起こしてくれればよいと思う。ただ、こうした伝奇ものにおいて、本来は主人公を異界に導く役目であるはずの少女が少年の存在を受け入れられないと言う点に、作者の不思議な倒錯と言うか、あるいは逆に健全な感覚なのか、そのあたりははっきりとは分からないものの、強く感じるのだった。

こうした倒錯は、あるいは過剰に意味づけされる少女側の反論という感じにも取れるのだが、つまり非日常に身を置いている少女だって、別に非日常を好んでいるわけでも適応しているのでもなく、ただ仕方なく、ブツブツ文句を言いつつやっているのだと。そこには戦闘美少女の持つ”萌え”と言うか、そういうものとはいささか以上に異なる泥臭さがあって、それゆえに「非日常が日常」化している感覚がある。つまり、より一層の非日常に対する近さがある。

そこには非日常に対する近さと共に、伝奇アクション的な世界においても、個人的な感情に拘泥してグダグダしてしまっていると言う不思議があって、そこが並列化されてしまっている。つまり、バトルと人間ドラマが等価として扱われている。その扱い方は結果的に読者をどちらかに没頭させることを妨げているのだが、どちらかに没入させないという事には、たぶん意味がある。それは、おそらく非日常に対する態度の問題であって、非日常に叩き込まれたからと言って、女の子の気持ちを無視してよいかと言えばそんなことはないという事で、そこでは非日常の中にさえ日常が存在しているという事が意識されている。あるいはそれこそが非日常が日常化している、という事かもしれないのだが(これは『オブザデッド・マニアックス』で形を変えて語られていたので、作者が拘っているところなのかもしれない)。

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