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2012.06.23

『ミスマルカ興国物語Ⅹ』

ミスマルカ興国物語Ⅹ』(林トモアキ/角川スニーカー文庫)

マスラヲの重要キャラクターが登場して、作品間のリンクが強まってきている。マスラヲも徐々に物語の水位が上がってきているところもあって、並行して描かれることによる面白さが見えてきているようにも思う。過去と未来が描かれることによってミッシングリンクが明かされることで生まれるカタルシスだけじゃなくて、あの物語とこの物語が遠い、はるかに遠いどこかでつながりがあるという、どこかで生きていた人々の物語がなんらかの形でこの物語に届いているのだ、と言う広さを感じるのだった。

まあそれはともかくとして、帝国三姉妹エピソード(と言うのか知らんけど)も最後の一人、ユリカさんの登場です。まあ、この人とマヒロの付き合いも長いので今更という感じもあるんだけど、真面目に戦うシーンは初めてだし、今までにない側面も見れたりして、それなりに活躍している感じがします……って自分で書いておいて感じわりーな。まああんまり目立つこと好きな人じゃないし、自己主張も強くないし、そもそもこの人マヒロにそんなに興味なさそうだしね。そういう人が当番回とは言えヒロインを務めるのもすごいもんだな。

帝国三姉妹で言えば、三人の父親である皇帝陛下とマヒロは仲良すぎねーか?二人の心温まる交流には心があったかくなりますね。実の父親に得られなかった男同士の交流とでも言うべきものを得ていると思うと涙が止まりません。笑いの。こんなに楽しそうに喧嘩していると、これはいよいよルナスとの結婚が物語的にも具体化してきているという感じがあって、ルナス贔屓の自分としては、うっひょーって感じ。まあ、宰相の人がやたらと不穏な行動をしているので(フェイクの可能性もあるけどね)、帝国が倒れる可能性もあるけど……。作者のことだからどうなるか知れたもんじゃねえや。

今回から初登場のキャラクターも何人かいるみたいんだけど、どうも新キャラなのか別シリーズにもいたのか良くわからない人もいて(新キャラでも古顔みたいな感じで出てくる)、良い意味で混乱する。出てきた瞬間に過去を想起させられるってのは、僕はマイナスではなくプラスだと思ってて、ケセランパサランみたいに何食わぬ顔して出すやり方はけっこう好きなのだった(この人初登場…だよね?いまいち自信がないんだ)。

しかし、林トモアキって不思議な作家だなあ、としみじみ思う。基本的にマクロ、つまり国家スケールの話はまったく書けない人だという失礼な認識を持っているのだけど、このシリーズみたく国家の話をしている物語にまったく違和感を覚えない。むしろすごく楽しんでいる。これは国家の話をしつつも、描写は徹底してそこに所属する個人の物語を描くことで、結果的にそれが国家の話になっているためなのだろうと思う。ここまで個の話しかしてないのに、なぜかそれが大陸の構図を塗り替えていくことに、違和感を覚えない自分が良く分からない。引っかかる部分をスルーしているだけなのか、あるいは描写に納得しているのか……。どっちしても、面白いなあ、などということを読みながら思っていました。終わり。

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コメント

お久しぶりです。

僕はどちらかと言えばウィル子より「英雄のような」人物の、クローンの方に興味が出ました。そのうち出演したりして。

ところで「興国しない物語」は読みましたか?

投稿: もじのくまさん | 2012.06.30 13:29

クローンまで出てくると、もう何が起こるかわかりませんね。オールスター展開もありえるかもしれません。

「興国しない物語」は存在そのものを知らなかったので、さっそく読んできました。で、「そうだよこういうのが読みたかったんだよ!」と言う感じ。前巻を読んであのシャルロッテとマヒロの話はまだまだ可能性があると思っていたんですよね。

この二人の関係はあまりにもしっくり来ていると本編でも思いましたけど、初期設定では本当に姉弟だったんですね。驚きというか、納得と言うか。

投稿: 吉兆 | 2012.07.01 10:03

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