『あるいは現在進行形の黒歴史(7)-中二天使が俺の嫁?-』
『あるいは現在進行形の黒歴史(7)-中二天使が俺の嫁?-』(あわむら赤光/GA文庫)
6巻を買ってないことに気がつかなくて、二冊同時に読んだのであった。なので実質二冊分の感想になります。ご了承ください。
ようするに第一部のクライマックス、と言った感じの展開で、楓子の黒歴史ノートから始まる一連の流れに決着がつく。これまで、死神と幽霊という一巻冒頭で提示された物語が、黒歴史ノートによって別の物語に塗り替えられていて、ある意味、ごっこ遊びみたいな話になっていて、マリスもいまいち真面目に成仏をさせる気がないばかりか、ガンガン戦ってはラブコメしているというパラダイス展開に終始していた。これは前にも書いたような気がするけど、ようするに死神と幽霊という物語(フォーマット)に、別の物語を上書きすることによって、そちらの物語を駆動させていたわけだけど、ついに六巻に至り、塗りつぶされていた本来の物語が反撃に移った、と言う見方も出来るのかもしれない。
死神の持つ圧倒的な力はヒロインたちを容易く滅ぼしていって、本来の救いのない物語が勝つように見えるけれども、そこに対抗するべくヒロインたちのラブラブいちゃいちゃが描かれていくと言うのは、一見異常な展開のようでいて、とても説得力があった。なぜなら、主人公たちが積み上げてきたのはそうしたラブコメであって、死という厳然とした冷酷さに対抗するために彼らが積み上げてきたものを発揮すると言う意味で、すごく正しい展開だと思うのだ。つまりこれは、二つのまったく別の物語が、メタレベルで対立しているわけで、なんか『デートアライブ』を思わせるユニークさがある。こちらの方がシンプルな分、物語としての安心感は素晴らしくて、二つの物語の狭間で起こる主人公の葛藤や、最後の展開にも納得的だった。結局、相手の物語(≒世界観)を飲み込んだ方が勝つんだよね。
7巻で、そうした物語間の対立は、一応終わったように思えるので、ラストシーンの描写には、わりと興味がそそられています。どうやら作者は”新しいルール”を持ち込むつもりがあるみたいで、あれはきっとそういうことなんだと思う。こういうのは、説得力を持って構築するのはものすごく大変で、一度作り上げたのを一度壊して作り直すのはさらに難しい。作者が一度壊すことを選択したのだとしたら、それだけで自分は絶賛するつもりなんだけど、果たしてどなることやら。期待と不安がほどほどに、と言ったところですね。
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