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2012.05.14

『あなたが踏むまで泣くのをやめない!!』

あなたが踏むまで泣くのをやめない!!』(御影瑛路/電撃文庫)

わかりにくいけど、これはシリーズ二作目です。僕もタイトルだけだとどっちかわからない。

前半は、最近はやりの”残念系”な導入があって、美少女やイケメンだったりしながらも”残念”な側面を持ったキャラクターたちがわいわいがやがやとやってくれるという非常に”優しい”内容で、これはなかなか面白く出来ていたんだけど、後半に入ってその印象ががらりと変わる。ある意味、奇矯なキャラクターたちの、ある意味”萌え”な振る舞いでオブラートにくるまれていたそれが、突然、現実の壁にぶち当たったような感じ。これが本当に突然な感じなんだけど、だからと言って強引な展開というのとも違っていて、”想定された突然”というか、作者の描きたいところはそういうところなんだと思った。

”そういう”っていうのは、別に「”現実”の方が正しくて、”萌え”なんかに逃げるな」ってことじゃなくて、ギャップの事だ。現実と理想(妄想かな?)、あるいは外部と内部のギャップってのは、自意識の問題と密接に絡まっていて、青春を描く上ではポピュラーなテーマではあるんだけど、なるほどこういう描きもあるんだ、って思った。現実と妄想は断絶しているんじゃなくて、あくまでも地続きなものであって、どちらか一方では完結しない。妄想には現実を反映していて、現実には妄想の要因があって、それは不可分なものなんだ。

だから、現実の方が”強い”という描きにはならなくて、もちろん妄想は現実にいつも脅かされているんだけど、それでも妄想のあるべき姿というのがあるんだと思う。それが正しいのかどうかは、まあ、ちょっと良くわからないけど。だから、主人公を慕う幼女なんていう妄想の権化みたいなヒロインにも、きちんと現実(家族や生活)があって、それと主人公は付き合っていかないといけないってことなんだろう。

物語を動かす時には、当然、主人公の”現実”も動き出していて、そこに一つの”覚悟”をもって望んでいる主人公の姿には、なんと言うか、作者の真面目さというか、決して妄想を妄想のままにしないような態度があって、納得できるところなのだった。まあ、ちょっと直接的過ぎるかな、って気もするけどね。

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