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2012.03.03

『小学生にもデキること! 超誕!Jオオカミ団』

小学生にもデキること! 超誕!Jオオカミ団』(蕪木統文/一迅社文庫)

孤独ってのはいったいどう言うものなんだろう?と考えた時、自分が思う一つの結論として、価値の喪失と言うのがある。価値と言うのはあくまでも相対的なものであり、他者との比較の中にしか存在しないという考え方をするなら、孤独の中にあるときは比較するべき他者が存在しないということになると言うことだ。

価値が相対的と言うのは、例えばある絵画があったとして、それには素晴らしく芸術的な価値があると評価が下されている。しかし、その価値は普遍性を持ったものかと言うと、そうではないと言う考え方のことです。だって、芸術家が存命のうちにまったく評価されないなんてこともあるし、ある日突然評価されて価値が上がることだってあるしね。要するに、それは誰かが価値があると思い込んでいるだけで、別に絶対的な意味で価値があるわけじゃない、と。

この考え方が正しいかはともかく、孤独と言うものにはこれと同じような感覚がある。この世には価値があるものなどはなく、ただ価値があると思い込んでいるものがあるのだけなのだ、と言う感覚こそが孤独というものなのだと思う。作中の言葉を借りるなら「人生とはファーストフード店で食事をするようなもの」であり、この世にあるものはすべてハンバーガーのようなもので、種類はたくさんあってもどれも同じような味しかしない、と言うわけだ。

孤独って言うのは、本当に人間を殺す毒で、こういう孤独に侵された人間と言うのは虚無の中に落ち込んでいくしかない。あらゆるものに意味が見出せなくなって、そのうちあらゆるものを憎悪するようになって、最後には周囲を巻き込んで自分も破滅していくしかない。まあ、主人公はそこまでひどくはなかったけどね。ただ、孤独を癒すためには他者というものが必要不可欠で、だから主人公の能力のあり方というのには意味があるのだと思う。

彼の能力は少女たちと肉体的な接触というのが不可欠なので、いろいろと危機に陥った主人公はどう足掻いても少女たちと接触しないわけにはいかない。接触してしまえば、孤独に閉じかかっていた主人公と言えども意識しないわけにはいかなくて、ついには”自分から手を差し伸べる”ことさえもしてしまう。少女たちの力の発動は、実のところかなり恥ずかしい接触が必要になるけれど、そういう接触こそが主人公を救う鍵となる。

無視できないものが生まれて、そこで主人公は考えることになる。人生というのはファーストフードみたいなものだ。選択とは、チーズバーガーかハムバーガーかを選ぶぐらいと意味しかない。だけれども、もしかしたらそれは世界で奇跡的に世界で一番美味しいチーズバーガーなのかもしれない、と。まあ、それを確かめる術もないんだけどね。美味しいかどうかもまた相対的なものであり、味覚など個人によって異なるもので、普遍的な美味しさなんてものは存在しないんだから。だからこそ”自分でそのチーズバーガーが世界一美味しいと決める”のだと言うことには、たぶん意味がある。きっとそういうのが”価値”と言うもののを本来の意味なんだろう。

でも、これって最初に書いた「それは誰かが価値があると思い込んでいるだけで、別に絶対的な意味で価値があるわけじゃない」ってことじゃね?と思えるかもしれないけど、これはまったくその通りだよなあ。この世には”価値”など実は存在しないんだ、と言う主人公の考え方は最後まで変化していなくて、ただ結論を反転させただけだ。価値など存在しないから無意味だ、から、価値など存在しないのだから自分が意味を与えてやる、と言う方向に。まあこれは単なる開き直りでしかないわけだけど、まあ開き直った方がたぶん良いことなのだろう。価値に意味を与えるのは、他者によってではなく、自分でやらなければ意味がないものなのだし。

追記。脱線するけど、この主人公の考え方は世界の捕らえ方、つまり世界観の問題であって、世界観の問題を正しいとか間違っているとか言うのは無意味だということは注意しておきたい。ここで「この主人公の考え方はおかしい」と言っても、そういう風に世界を捉えている人に、間違っていると言ってもどうしようもない話だからだ。間違っているといわれても、本人には確かにそのように世界を捉えているのだから、本人が考え方を改めてもどうしようもならない。自分が青だと思っているものが、実はそれは赤なんですよと言われても、自分にはそれが青にしか見えないということと同じこと。別にこの本の話とは関係ないんだけど、そういう意見を良く見かける気がするんだよね。まあぶっちゃけ、こないだコメントで「文章ひどいですね」って言われたことなんだけど。そんなことを言われてもなあ。

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