« 『カンピオーネ!(11) ふたつめの物語』 | トップページ | 『太陽のプロミア』その1 »

2012.03.13

『RPG W(・∀・)RLD(10) ‐ろーぷれ・わーるど‐』

RPG W(・∀・)RLD(10) ‐ろーぷれ・わーるど‐ (富士見ファンタジア文庫)』(吉村夜/富士見ファンタジア文庫)

吉村夜の描く物語の登場人物は、誇り高い人物が多い。彼らは正しいと信じることのために行動することを躊躇わず、それによって生まれる犠牲さえも、その身を引き受けることが出来るのだ。この物語の主人公、ユーゴはまさにそういう人物であるし、今回のメインキャラクターであるナツキという少女も、そういうタイプである。彼らは一時的に弱さを見せることがあっても、それらはあくまでも克服されるために存在する弱さなのである。彼らのあり方はとてもカッコいいのだが、それはある意味において弱者の存在を許容しないということでもあって、そこには肯定しきれないものがあるのだった。

正直なところ、人間は誰しもそこまで誇り高く高潔にはなれないし、逆に徹底した悪人にもなれない中途半端なところに落ちるのが関の山であって、そういう視点は、作者にはあんまりないように思える。分かり易いのがナツキの台詞にもある「正義の味方になりたくない人の気持ちが分からない」というもので、正義の味方を志す人が、正義の味方になりたがらない人の気持ちがわからないなんて言って欲しくないなー、と自分などは思ってしまうのだ。もっとも、ナツキだっていくらなんでも誰もが正義の味方になる”べき”なんてことは言っていない(と思う)のだが、正義の味方になりたくないって人が、なんでなりたくないと思っているのかを理解しようとしていないという視野の狭さがあって、そういうのはかなり危険なことだと思う。偏狭な正義と言うのは悪と同じくらいに厄介なものだし、人間は悪にならなくても他者を蹂躙することは出来るのだから。

ただ、今回の話を読んだところ、そうした狭さ(と自分が思うもの)から離れたものを感じる。今回の話のメインキャラクターであるジローは、かつて教団にそそのかされて邪神を復活させた後、ユーゴと出会って旭日騎士団の仲間になったという少年。彼は自分が情けない人間だと言う事を知っているし、実際ヘタレなところも多くあって、騎士団の連中から微妙な目を向けられたり、危機に陥ってもろくな行動が出来なかったりするのだが、あるところで人を助けるために行動するところがあって、その描き方がちょっと面白かった。

ヘタレな少年が仲間の危機に対して勇気を振り絞って活躍する、の”ではなく”、危機に対しては必死で逃げ出して、仲間の危機に対してはほとんどろくな行動は出来なくても、建物に押しつぶされようとしている市民を助けることは出来るのだ、ということ。その行動は勇者ではないのだが、なんと言うか”分をわきまえた勇気”の持ち方という感じがある。英雄のように誰もが賞賛する勇気はもてなくても、普通の少年としてささやかな勇気を発揮することは出来るのだ、というような。この描き方は、あまり僕の知っている吉村夜の作品の中には見られない描きで、とても印象に残った。

つまり、人はすべて勇者にならなくてはいけないのではなく、自分に出来る範囲で勇気を持てばよいということ。駄目な人間が努力して勇敢な人間に”成長”することを否定するものではないが、駄目な人間なりのちっぽけな勇気を、自分の枠の中で持ち続けることも、決して否定されるべきではないのだ、というような描き方のように思えたのだった。いま思えばショウの描き方にもそういうところがないでもなくて、バカはバカなりのカッコよさがある、みたいなところもあった気がする。

そうなると、ナツキとジローの間になにかしらの繋がりがある以上(まあ、ラブってぽい雰囲気があるのだが)、そこから新しい何かを生み出すつもりがある…のかどうか?正義の味方にはなれないジローを見て、ナツキが何を思うのか?まあ、もしかしたら今後ジローがものすごく勇敢な人間に成長する可能性があるけど、まあそれが別に悪いということもないので(駄目な人間に駄目でいろ、ってのもひどい話だしね)、作者がその辺りをどうするのかも楽しみです。

|

« 『カンピオーネ!(11) ふたつめの物語』 | トップページ | 『太陽のプロミア』その1 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/54180720

この記事へのトラックバック一覧です: 『RPG W(・∀・)RLD(10) ‐ろーぷれ・わーるど‐』:

« 『カンピオーネ!(11) ふたつめの物語』 | トップページ | 『太陽のプロミア』その1 »