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2012.03.18

『魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>(3)』

魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉(3)』(川口士/MF文庫J)

ティグルが戦姫を”落としていく”話になるのかと思っていたのだが、三巻目にして少しだけ方向が変わってきた。と言ってもそれは意外な展開と言うわけではなくて、ただ戦姫の存在よりも、ティグル自身の動機を見直しているところがあって、つまりティグル自身の物語に推移しているように思える。ティグルは、ただ自分の領地であるアルサスが平穏であれば良いとだけ思っていたのだけど、エレンとともにいくつかの戦いを勝利した結果、ただ守っているだけでは未来がないということに気づかされることになる。それ自体、当初からエレンたちは想定していたことであるのだが、ティグルにとっては国そのものをどうこうするなんて話は現実味のある話ではなかったのだ。

今回登場した黒騎士ロランは、ブリューヌ最強の騎士であり、おそらく個人戦闘力では作中でもトップクラスの存在である。戦姫とも対等以上の戦闘力であり、軍略も鋭く、さらに擁する騎士団は精強である。そんな相手と戦うにあたって、もはやティグルは自分がぬしさしならない立場であることを、ようやく”覚悟”することになる。覚悟と言うのは、つまるところ”自ら戦を起こす”ということだ。ただ守るだけではなくて、自分の運命を切り開くという決意であり、それは自らの意思で血を流すということだ。

”民を守る”と言うのは確かに尊いものだが、そのためには戦わなければならないのであり、それは誰かを傷つけることにもなる。その矛盾を知っているから、ティグルは戦が嫌いなのだろうし、多くを求めることもしなかったのだ。しかし、彼はただ平穏に暮らすのではなく、戦うための力を求め、おそらくはその力は更なる戦を引き寄せることになるのだろうが、それを受け入れる決意をしたということだ。その決断に後悔するときが来るのかもしれないし、あるいはすべてに勝利して平和な世界を取り戻すことが出来るのかもしれないが、それはこれからのティグルの意思に関わってくるのだろう。

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