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2012.03.29

『トカゲの王(2)―復讐のパーソナリティ (上)』

トカゲの王(2)―復讐のパーソナリティ (上)』(入間人間/電撃文庫)

繰り返される自己否定、に見せかけた圧倒的なまでの自己肯定感がすごいと思った。どういうことかと言うと、まず”駄目な自分”と”それを否定する自分”と言うのがあって、”駄目な自分”と言うのは心から憎悪すべき存在なんだけど、そのように”駄目な自分を否定する(憎悪する)自分”は肯定する、という精神的な手続きをとっているということだ。これは自分自身については深刻に憎悪しているんだけど、そういう自分をそれでも肯定したい場合は、自分という”存在”ではなくて、自分と向き合うという”行為”にしかない。これはどうあがいても自分を肯定しきれない人間の苦肉の策と言うか、それでも”救われたい”という祈りみたいなもので、もう少し簡単に自分を肯定する方法があるんじゃないかとも思うのだが、まあそんな簡単に自己否定から抜け出せれば苦労はなく、その過程における格闘のあり方なのだろうと思うのだった。屈折してややこしい自己肯定は、それそのものがいびつな形だけど、否定しか出来ないよりは、マシなのだろう。たぶん。

個人的な印象を言わせてもらうと、この作品はいかに自分を肯定するか、と言う命題に取っ組み合っている感じがあって、しかし、それが果たせずにいるとも思う。なんとかして自分を肯定したいのに、それでも肯定出来ないという、切ないというか涙ぐましいと言うか、とにかく物凄いエネルギーが空転しているような印象があって、そのエネルギーがどこに向かうのかがわからないところがとても面白いと思う。

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