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2011.12.21

『天獄と地国』

天獄と地国 』(小林泰三/ハヤカワ文庫JA)

小林泰三先生はアニメや特撮に対してものすごく思い入れのある方みたいで、よくその辺からモチーフを持ってくることがあるんだけど、同時バリバリの理系でハードSF志向もあるために、その二つを融合した作品を描くことが多い(特にホラー以外)。で、今回の作品も作者の趣味が爆発している作品で、それがハードSF的にもアニメ的にも読み手をくすぐられるものだった。

ハードSF的には、タイトルにもある”天獄と地国”の設定がものすごい。と言っても、自分はバリバリの文系なので理系の人には「あーあれね」と言われる可能性もあるが、とにかく、この世界には大地とは頭上にあるものであり、空とは足下にあるものなのである。この時点で、設定を理解するまでに時間がかかってしまった。重力が空に向かって存在する時点で、この世界がどれだけ過酷なものであるかはすぐに分かるのだが、ならばなぜそのような世界が存在するのかについても、極めて論理的に説明されるところがハードSF作家としての小林先生の面目躍如と言ったところだろう。後半で明らかにされる世界設定の広大さと、そこから生じる絶望的な閉塞感。SFだなあ。

ところで一方で、これはスーパーロボット小説の側面を持っている。先ほども言ったように”天獄と地国”という世界設定で、スーパーロボットバトルをやったらどうなるか、と言うことで、主人公たちの前に次から次へ(一体づつ)敵ロボットが出現して、タイマンバトルをするという古式ゆかしいストロングスタイル。しかし、なぜ敵ロボットが一体づつしか出てこないのかとか、そういうお約束にはすべて論理的な理由で潰しているあたり、作者らしい。筋金入りのオタクと言う感じだ(褒め言葉)。そして繰り広げられるバトルも、設定にきちんと沿ったもので、これが非常に地味なんだけど、しかし、オタク的な文脈として文句のつけようもないほどにお約束を踏襲しているというヒネクレぶりを楽しめる。いやー必殺技を一つ撃つのも楽じゃないよね。

娯楽性を十分に持ちながら、ハードSFとしても品質が高いと言うことで、なかなかに面白いのだけど、しかし、この面白さは80年代的なアニメや特撮の文脈に依存しているので、ある意味挑戦的な作品だなあ、とも思いました。

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