美容室
家から駅までの道のりに、なぜか美容室がいくつもある。正直、10分ぐらいの道のりに、なんでこんなに美容室が密集しているのか不思議でしょうがないのだが、あるいは住み分けが出来ているのかもしれない。
家を出てから駅に向かって歩く。5分ほどで最初の美容室が見えてくる。十字路の隅にあるその美容室は、入り口の扉に古びたポスターが貼ってあるのが目印だ。入り口は曇りガラスになっていて、中の様子はわからない。貼られているポスターには粗い印刷で俳優がポーズを決めているのだが、残念ながら誰なのかまではわからない。あるいは俳優でさえないのかもしれない(ただなんとなく映画っぽい印象がある)。ポスターだけではなく、全体的に古びた印象のある美容室で、昭和の匂いを意識させるものがあった。この昭和の匂いというのも、勝手な印象に過ぎないのだが。
それから50mほど歩くと、二つ目の美容室が見える。一つ目とは対照的に、前面がガラス張りになっていて、店内が一目で見渡せる。なにやらキラキラしたデザインで、すごく明るい印象がある。美容師さんがきびきびと立ち回っていて、いかにも最近の美容室と言った感じだ。とはいえ、あまりにも明るくきらびやか過ぎて、どことなくプレッシャーを感じる。あるいは僕だけかもしれないけれども。
それから100mぐらい歩く。駅はもう目の前なのだが、その途中にもう一つ美容室がある。この美容室は意識を凝らしていないとすぐに見落としてしまうぐらいにこじんまりとしている。というか、極端に小さい。何しろ客が一人しか入れるスペースがないのだ。まさに美容”室”という形容にこれほど相応しいところもない。いつも美容師のお兄さんが一人で暇そうにしているのだが、果たして客が入っているのだろうか。
駅に到着して、振り返るとテナントの入っている建物がある。どうやらそこにも美容室が入っているらしいのだが、さすがにそれを確かめようと言う気にはなれなかった。
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