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2011.10.03

『あなたが泣くまで踏むのをやめない!』

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あなたが泣くまで踏むのをやめない!』(御影瑛路/電撃文庫)

サスペンスフルで乾いた物語を書いていた御影瑛路が、毒舌幼女に踏まれる物語を書いたとのことで、当初は(自分の)正気を疑ったものだが、しかし、中身を一読して一言言いたいことがあるとすれば、「楽しそうでなによりだ」ということだ。

何よりも、作者が本当に楽しそうに書いているのがよい。パツ金ロリ美幼女に罵られたり踏まれたりワガママを言われる描写に対する熱意は通り一遍のものではなく、作者がきちんと自分の書きたいことを書いているということが感じられる。例え今までの作者の路線が好きな人であったとしても、決して手抜きや流行に乗っただけの出来であるとは考えられないであろう。

ちなみに自分はというと、まあ、パツ金ロリ美幼女に罵られるのなんて大好きな人間なので、なんの問題もなかった。ここで一つ誤解しないで欲しいのだが、別に罵られるのが好きなわけではない。あくまでも、パツ金ロリ美幼女に罵られるのが好きなだけなのである。それがなぜかと言うと、パツ金ロリ美幼女、というか、子供とは守られるべき存在だからだ。

子供とは、大人からの攻撃に抵抗することは出来ない。一方的に傷つけられるだけの存在である。それゆえに、子供は大人に対して”可愛く”振舞う。可愛さことが、大人に対して抵抗する唯一の方法だからだ。可愛くあることによって、唯一、子供は己の身を守ることが出来る。

アリスが、家庭の中で、そのように振舞ったように。

彼女が”可愛い”としたら、それは己の身を守るための殻なのである。彼女の家庭は、両親は、決して悪意を持ってではなく、それでも彼女をどうしようもなく傷つけた。そして、今でもなお、傷つけ続けている。繰り返すが、彼らは決して悪意を持っていない。善意と良心で行動をしている。だが、決定的に”想像力”が足りなかった。子供とは、それほどまでに傷つきやすく、脆いものだということを。彼女はなんのために、”可愛く”あるのかを、彼らは気がつかなかった。

彼女の”可愛さ”は、殻であると同時に、助けを求める声でもあったというのに。

それゆえに、彼女の罵る声というのは、彼女の本当の声でもあるのだ。”可愛さ”という武器である殻から離れた、彼女本来の声。それが彼女の罵りであり、わがままであり、踏みつける行為である。”可愛さ”を武器にしていないということは、彼女は攻撃されていないということ。傷つけられていないということ。守られているということ。だからこそ、彼女の、本来の声は好ましいのだ。

それゆえに、主人公が、彼女に”可愛さ”を取り戻させてしまったことは、主人公が彼女を傷つけたことを意味する。それは、彼が犯した誤りであり、それゆえに、彼が、彼女の両親と”戦う”理由には、彼女の”可愛らしさ”を打ち砕くためとなる。彼は、彼女が憎たらしく、生意気で、傍若無人なありさまを取り戻すために戦うのだ。

なぜなら”可愛くない”彼女こそ、真の意味で尊いものだと、彼は知ってしまったからなのだ。

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