裏道
所用があって電車を使った帰りのこと。いつもの通りに帰ろうと歩き出したとたん、別の道が目に付いた。右に行けば商店街になり、いつもの帰り道。その反対側にある、山のふもとに向かって伸びる道だ。なぜか、気が惹かれるものがあり、なんとなく、そちらに足を向けた。道の脇には小さな川が走っている。川の周りには植物が植えられ、きちんと手入れがされていた。底に泥はたまっているものの、水そのものは澄んでおり、そのことにひどく心が動いた。あるいは山から水を引いているのかもしれなかった。川の流れを遡るようにして歩く。左側にはうっそりとした山と川がある。右側には住宅街となっており、おそらくはその向こう側には商店街があるはずなのだが、そちらの音は不思議と届かない。川の途中、網が張ってあった。覗いて見ると、小さな魚が何匹も泳いでいた。鯉のように思える。天然の水槽、あるいは池のように使っているのだろうか。魚たちは区切られた空間の中央に集まって泳いでいた。さらに歩くと小学校に出くわした。正門があり、校庭が広がっていた。こんなに大きな学校だったっけ。川はまだまだ続いている。川は広くなったり狭くなったりを繰り返し、曲がりくねった道に連なる。川にそって道が作られているんだ。ここまで来ると山も随分低くなってくる。山の斜面に強引に立てられた家がいくつかある。玄関から階段を30段くらい上がらないと家に入れない家があって、お年寄りには大変そうな家だ。途中、学校から帰宅した小学生とおぼしき一段が、10人くらいで遊んでいる。車止めの柵の周囲をぐるぐる回っている。どういう遊びなのかはわからなかった。子供たちの横をすり抜けると、ついに水の源流までついた。120cmぐらいの石垣の中から水が噴き出ていた。後ろを見ると長く続いていたが、途中で石垣が消えてしまった。ふと顔を上げると、いつもの帰り道に合流していた。
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