« 2011年7月 | トップページ | 2011年9月 »

2011.08.31

7月に読んだ本

先月の分。また忘れてた。

7月の読書メーター
読んだ本の数:57冊
読んだページ数:12475ページ
ナイス数:91ナイス

B.A.D. 6 繭墨はいつまでも退屈に眠る (ファミ通文庫)B.A.D. 6 繭墨はいつまでも退屈に眠る (ファミ通文庫)
方向性はとても好きなんだけど、語りすぎな感じもする。
読了日:07月30日 著者:綾里 けいし
新装版 プリプリプラネット 武梨えりアトラス作品集 (IDコミックス DNAメディアコミックススペシャル)新装版 プリプリプラネット 武梨えりアトラス作品集 (IDコミックス DNAメディアコミックススペシャル)
昔は緒方剛志先生みたいな絵だったんですね。
読了日:07月30日 著者:武梨 えり
アザナエル(1) (IDコミックス/REXコミックス) (IDコミックス REXコミックス)アザナエル(1) (IDコミックス/REXコミックス) (IDコミックス REXコミックス)
ゲームのノベライズにしては、物語として成立する範囲でまとまっている。
読了日:07月30日 著者:村崎 久都:漫画 ニトロプラス:原作
そこに、顔が (角川ホラー文庫)そこに、顔が (角川ホラー文庫)
幽霊の正体見たり枯れ尾花、でも枯れ尾花が実は幽霊だった、みたいな。
読了日:07月30日 著者:牧野 修
約束の方舟 (下) (ハヤカワ文庫JA)約束の方舟 (下) (ハヤカワ文庫JA)
物語の転がし方に飛躍が少なく、極めて論理的である。
読了日:07月25日 著者:瀬尾 つかさ
約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)約束の方舟 (上) (ハヤカワ文庫JA)
ゆるゆると、主人公たちが暮らす世界が明らかになっていく感覚が良い。
読了日:07月25日 著者:瀬尾 つかさ
異形たちによると世界は…異形たちによると世界は…
コミカルな中に、不気味な雰囲気を忘れないのがいいね。
読了日:07月25日 著者:coco
血まみれスケバンチェーンソー 3 (ビームコミックス)血まみれスケバンチェーンソー 3 (ビームコミックス)
ギーコのぽっちゃり化がとまらない。
読了日:07月25日 著者:三家本 礼
超人ロック 嗤う男3 Locke The Superman SNEERING MAN (MFコミックス フラッパーシリーズ)超人ロック 嗤う男3 Locke The Superman SNEERING MAN (MFコミックス フラッパーシリーズ)
枯れたロックも、たまには熱くなることがあるのだろうか。
読了日:07月25日 著者:聖悠紀
お前のご奉仕はその程度か? (GA文庫)お前のご奉仕はその程度か? (GA文庫)
森田季節とも思えぬ普通のラノベ。にわかに信じられぬ。
読了日:07月25日 著者:森田 季節
ベン・トー 7.5 箸休め 〜Wolves, be ambitious!〜 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)ベン・トー 7.5 箸休め 〜Wolves, be ambitious!〜 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
佐藤のハーレムみたいになってきたが、一番脈のない白梅様が目立っている不思議。
読了日:07月22日 著者:アサウラ
3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)3月のライオン 6 (ジェッツコミックス)
『聖の青春』を読んでみよう、と思った。
読了日:07月22日 著者:羽海野チカ
へうげもの(13) (モーニングKC)へうげもの(13) (モーニングKC)
武士としては最低だが、人間としては魅力的な織部さんである。
読了日:07月22日 著者:山田 芳裕
脱兎リベンジ (ガガガ文庫)脱兎リベンジ (ガガガ文庫)
粗も瑕疵もあるが、情熱だけですべてを突き抜ける。そういうの、嫌いじゃないぜ。
読了日:07月22日 著者:秀章
とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)とある飛空士への夜想曲 上 (ガガガ文庫)
やっぱり小説が上手いなあ。
読了日:07月22日 著者:犬村 小六
RPG W(・∀・)RLD9  ‐ろーぷれ・わーるど‐ (富士見ファンタジア文庫)RPG W(・∀・)RLD9 ‐ろーぷれ・わーるど‐ (富士見ファンタジア文庫)
リア充になるのより、リア充でいつづけることの方が大変なんだよね。本当は。
読了日:07月22日 著者:吉村 夜
トカゲの王 1 (電撃文庫 い 9-22)トカゲの王 1 (電撃文庫 い 9-22)
異能バトルラノベに対するアンチテーゼとして、面白く読めた。
読了日:07月22日 著者:入間 人間
つぐもも(6) (アクションコミックス(コミックハイ!))つぐもも(6) (アクションコミックス(コミックハイ!))
作者の精神状態が心配になった一冊。狂気が宿ってる。
読了日:07月22日 著者:浜田 よしかづ
マギ 9 (少年サンデーコミックス)マギ 9 (少年サンデーコミックス)
怪物の襲来が祭りの始まり、とか、すごく異国感が出てて良い。
読了日:07月20日 著者:大高 忍
変ゼミ(5) (モーニングKC)変ゼミ(5) (モーニングKC)
”良い話”ではまったくないが、”イイ話”ではある。
読了日:07月20日 著者:TAGRO
地雷震 ディアブロ(2) (アフタヌーンKC)地雷震 ディアブロ(2) (アフタヌーンKC)
飯田が殺さないだと?と思ったが、そうか国家権力の庇護を受けていないんだった。
読了日:07月15日 著者:高橋 ツトム
地雷震 diablo 1 (アフタヌーンKC)地雷震 diablo 1 (アフタヌーンKC)
確かに、飯田響也と同じものを見て、同じ場所に立てるのは、彩しかいなかったなあ。
読了日:07月15日 著者:高橋 ツトム
乱と灰色の世界 3巻 (ビームコミックス)乱と灰色の世界 3巻 (ビームコミックス)
女の子(女性)たちがエロい。エロ可愛い。小悪魔的なイノセント。すげーなおい。
読了日:07月15日 著者:入江 亜季
XBLADE + -CROSS-(1) (シリウスコミックス)XBLADE + -CROSS-(1) (シリウスコミックス)
仕切りなおした意味がわからん……。
読了日:07月15日 著者:士貴 智志
ツマヌダ格闘街 10 (ヤングキングコミックス)ツマヌダ格闘街 10 (ヤングキングコミックス)
ほぼ一発勝負なところを、解説の多用でエンタメにしているのが偉い。
読了日:07月15日 著者:上山 道郎
ボアザン (シリウスコミックス)ボアザン (シリウスコミックス)
時間改変に対する禁忌の無意味さってのは、クロノアイズでもやってたな。
読了日:07月15日 著者:高遠 るい
ウィッチクラフトワークス(2) (アフタヌーンKC)ウィッチクラフトワークス(2) (アフタヌーンKC)
お姫様な男の子が受け入れられる時代ってのは、価値観の多様化を感じますね。
読了日:07月15日 著者:水薙 竜
マップス ネクストシート ⑬ (フレックスコミックス)マップス ネクストシート ⑬ (フレックスコミックス)
あそこから逆転できる伏線をきちんと張っておくとか、マジパネえ……。
読了日:07月15日 著者:長谷川 裕一
荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)
荒木先生の人柄なにじみ出る。好きな映画をただ語るだけなのが良い。
読了日:07月15日 著者:荒木 飛呂彦
学園キノ〈5〉 (電撃文庫)学園キノ〈5〉 (電撃文庫)
徹頭徹尾ふざけていて良い。あと木乃はマジかわいい。腹ペコ系ガンヒロイン
読了日:07月11日 著者:時雨沢 恵一
神様のメモ帳 7 (電撃文庫 す 9-15)神様のメモ帳 7 (電撃文庫 す 9-15)
愚かであるというのは、罪であることに他ならない。そして愚かでない人間などいない。
読了日:07月11日 著者:杉井 光
狼と香辛料〈17〉Epilogue (電撃文庫)狼と香辛料〈17〉Epilogue (電撃文庫)
”終わる”ということだけで、物語は出来るものだなんだなあ。
読了日:07月11日 著者:支倉 凍砂
真マジンガーZERO 5 (チャンピオンREDコミックス)真マジンガーZERO 5 (チャンピオンREDコミックス)
過剰なヒロイズム、過剰なお色気、過剰なインフレ。何もかもが過剰であり、逸脱している。
読了日:07月11日 著者:永井 豪,田畑 由秋
ジンキ・エクステンド ~リレイション~ 4 (ドラゴンコミックスエイジ つ 1-2-4)ジンキ・エクステンド ~リレイション~ 4 (ドラゴンコミックスエイジ つ 1-2-4)
何をやっているのかさっぱりわからん……。
読了日:07月11日 著者:綱島 志朗
護樹騎士団物語 外伝 ビアン13歳 (徳間文庫)護樹騎士団物語 外伝 ビアン13歳 (徳間文庫)
美少女で姫でツンデレなのに、萌えではなく、カッコイイのがビアンである。
読了日:07月10日 著者:水月郁見
天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語 (新潮文庫)天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語 (新潮文庫)
ある建築家の作った家屋の奇譚、を通じて、建築家そのものを掬い上げている。
読了日:07月06日 著者:中村 弦
To LOVEる―とらぶる― ダークネス 2 (ジャンプコミックス)To LOVEる―とらぶる― ダークネス 2 (ジャンプコミックス)
黒幕が女の子じゃハーレム入り確定じゃないですかー!
読了日:07月04日 著者:矢吹 健太朗
保健室の死神 9 (ジャンプコミックス)保健室の死神 9 (ジャンプコミックス)
アシタバ君達の知恵と勇気や、それに対する大人達の反応とか、キャラ描写は実に特筆すべきレベル。
読了日:07月04日 著者:藍本 松
シュヴァルツェスマーケン 1 神亡き屍戚の大地に (ファミ通文庫)シュヴァルツェスマーケン 1 神亡き屍戚の大地に (ファミ通文庫)
架空戦記とは、戦争という強固な縦糸がある分、人間という横糸を描き易いのかも。
読了日:07月03日 著者:吉宗 鋼紀,内田弘樹
Landreaall 18巻 限定版 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)Landreaall 18巻 限定版 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
”正しい”というのは、本当に良い。それを身につけた人が滅多にいないだけに。
読了日:07月03日 著者:おがき ちか
ミスマルカ興国物語 IX (角川スニーカー文庫)ミスマルカ興国物語 IX (角川スニーカー文庫)
帝国皇女が弟分を引き連れてハチャメチャな活躍する話になっているぞ……。
読了日:07月03日 著者:林 トモアキ
ゴルフ13(3) (KCデラックス)ゴルフ13(3) (KCデラックス)
さすがにヒロイン多すぎかなあ、と思ってたので、NTR展開は良いヒネリになるかも。
読了日:07月03日 著者:赤衣 丸歩郎
アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う (英国パラソル奇譚)アレクシア女史、飛行船で人狼城を訪う (英国パラソル奇譚)
マコン卿はさすがに駄目すぎるが、時代的背景を考えれば、同情の余地はある。でも駄目。
読了日:07月03日 著者:ゲイル・キャリガー
マルドゥック・スクランブル(5) (少年マガジンコミックス)マルドゥック・スクランブル(5) (少年マガジンコミックス)
この巻のバロットは、普通の萌え豚的観点から見ても可愛いじゃないですか……。
読了日:07月03日 著者:大今 良時
侍ばんぱいや   (F×COMICS) (F COMICS)侍ばんぱいや (F×COMICS) (F COMICS)
エロスの使い方が明るく楽しいのが作者らしくて良い。
読了日:07月03日 著者:おがきちか
バカとテストと召喚獣9.5 (ファミ通文庫)バカとテストと召喚獣9.5 (ファミ通文庫)
キャラにお題を与えて”回す”手法は永久機関を思わせるな。
読了日:07月03日 著者:井上 堅二
クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーⅢ (ハヤカワ文庫JA)クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーⅢ (ハヤカワ文庫JA)
万華鏡のごとき大伽藍のイメージ。カッコいいなあ。
読了日:07月03日 著者:五代ゆう
囮物語 (講談社BOX)囮物語 (講談社BOX)
可愛い子というのは駄目なところさえも可愛くなってしまう。卑怯、ねえ……。
読了日:07月03日 著者:西尾 維新
バビル2世ザ・リターナー 3 (ヤングチャンピオンコミックス)バビル2世ザ・リターナー 3 (ヤングチャンピオンコミックス)
あんちゃんあんちゃん。なんでロデムは力尽きると人間になってしまうん?
読了日:07月02日 著者:横山 光輝
魔乳秘剣帖(6) (TECHGIAN STYLE)魔乳秘剣帖(6) (TECHGIAN STYLE)
魔乳一族って、本当に乳によって人生を翻弄されている人たちだよな。
読了日:07月02日 著者:山田 秀樹
黒のストライカ 3 (MF文庫J)黒のストライカ 3 (MF文庫J)
主人公の内面と外面のギャップ萌え小説なんじゃないのこれ。
読了日:07月02日 著者:十文字青
オブザデッド・マニアックス (ガガガ文庫)オブザデッド・マニアックス (ガガガ文庫)
またしても”メタ”ゾンビ小説なんて書いてしまう大樹先生のガチっぷりに惚れ惚れ。
読了日:07月02日 著者:大樹 連司
赤鬼はもう泣かない (ガガガ文庫)赤鬼はもう泣かない (ガガガ文庫)
コミカルな前半とのギャップを狙ったところが、丁寧な仕事で好感度が高い。
読了日:07月02日 著者:明坂 つづり
あえなく昇天!! 邪神大沼7 (ガガガ文庫)あえなく昇天!! 邪神大沼7 (ガガガ文庫)
……ん?微妙にハーレム展開?
読了日:07月02日 著者:川岸 殴魚
されど罪人は竜と踊る 10 (ガガガ文庫)されど罪人は竜と踊る 10 (ガガガ文庫)
常に最悪の結果にしかならない負のご都合主義が炸裂してて、思わず爆笑。
読了日:07月02日 著者:浅井 ラボ
神さまのいない日曜日V (富士見ファンタジア文庫)神さまのいない日曜日V (富士見ファンタジア文庫)
理想を実現する過程で、理想を実現することの困難を理解するのは、必要な過程だよね。
読了日:07月02日 著者:入江 君人
調停少女サファイア1 (富士見ファンタジア文庫)調停少女サファイア1 (富士見ファンタジア文庫)
世界を揺るがすラストバトルを背景にして、話し合いをしている絵が面白い。
読了日:07月02日 著者:瀬尾 つかさ

読書メーター

| | コメント (2) | トラックバック (0)

『天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語』

51stgjsyfl__ss500_

天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語 』(中村弦/新潮文庫)

この物語は、ある建築家をめぐる物語である。ただし、建築家はあらゆる物事の中心に位置してはいるものの、建築家自身はほとんど語ることはない。多くは、建築家の周囲にいた人々が、彼について語るのみだ。彼はどのような人間か、あるいは彼の作った建物について、あるいは彼の過去に、あるいは約束について語る。語り手は、彼を知る人もいるし、あるいは知らない人もいる。そもそも、本人に会ったことのない人さえもいる。それでも、語られているのは、彼、笠井泉二の物語なのだった。

彼の存在は謎めいている。果たして彼は、何を思い、何を意図して、家を建てているのかを知るものはいない。ただ、彼の残す、ひたすらに妖異に満ちた、容易ならざる建造物を見て、きっと彼には神か悪魔にでも取り付かれているに違いない、と噂をするのだ。

彼の作る建物は、一つの共通点がある。それは、依頼主の”本当の望み”が反映されているということ。”本当の望み”。それは依頼されたことと同一、ではない。依頼者が心の奥で望んでいたことを、本人も意識せざることを、笠井泉二は汲み取ってしまう。そして、彼は、その”本当の望み”を、かなえる(かなえてしまう)力があるのだった。土台のところ、人間が本当に望むことなど、かなえることなど出来るはずがない。なぜなら、想像をすることは、現実に囚われない唯一の手段だからだ。想像の中でのみ、人は時間と空間の制約をなしにして、夢を紡ぐことが出来るからだ。

しかし、笠井泉二は、それをかなえる。すなわち、ある老婦人には、「亡き夫と共に暮らせる家」を。あるいは、偏屈な推理作家には「永遠に興味が褪せない家」を。彼は創り出せるのだった。だが、”本当の願い”とは、あらゆる意味で夢想の世界である。夢幻の世界なのである。彼の行うことは、夢幻をこの世に降ろしてしまったことに等しい。彼の依頼者は現世にありながらにして、夢に惑うことになるのだ。

しかし、それ自体は”さして重要なことではない”。なぜなら、この物語は、夢幻を作り出す建築家である、笠井泉二にまつわる幾つかのエピソードであるからだ。彼のつくりし夢幻は、人を惑わし、時に破滅させるが、それは本題ではない。より強く描かれるのは、彼の幼少時代、代えがたい青春、儚い喪失など。それらのエピソードは、どこまでも人間的であり、同時に、拭いがたいほどに神秘が垣間見える。大いなる存在に祝福されているかのように、彼の周囲には、神秘が満ちている。そして、それに対する苦悩もまた、彼を語る人々の口からは、あるように思えるのだった。彼は、神秘に彩られながらも、あくまでも人間であろうとしたし、そして、それに失敗することになったのだった。彼が、限りない喪失を味わったことで、彼は、人間ではなくなった。実際に何が起こったのか、それを知るものは本人以外にはいない。ただ、我々は、それを伝え聞くだけである。

彼は、まぎれもなく、人でないものからの寵愛を受けた、特別な存在。だが、彼は、その寵愛により、すべてを失った。そして、彼は、それ以降、”本当の望み”を叶え続けている。彼自身が抱える”本当の望み”を叶えることの、ないままに。彼の神懸かったほどの建築の才能は、祝福であり限りなく呪いに近いものであったのだろう。彼の生み出したものが、果たして祝福に満ちたものなのか、呪いで満ちたものなのか、それを判断することは、もはや本人たちにも、不可能に違いない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.08.28

『シュヴァルツェスマーケン(1) 神亡き屍戚の大地に』

51i13gsghll__ss500_

シュヴァルツェスマーケン(1) 神亡き屍戚の大地に』(内田弘樹/ファミ通文庫)

本家マブラヴと同様、BATAという人類の敵が確実にあり、それと戦うことは何一つ疑うことのないほどに正しきことなのに、それでも人類は争いあうことを止められないという泥沼の戦場が描かれるとともに、その戦場で生きる少年少女たちの出会いと別れ、生と死、そして成長が描かれている。

己以外の何一つも信じられず、敵も味方も同様に憎悪するべき相手でしかないテオドールが、憎悪する必要のない少女と出会う。そして、ある目的のために亡命してきた彼女を助けるうちに、彼自身が抱える人間不信(引いては、それは主人公自身に対する不信でもある)から、己自身を救い上げていくことになる。このあたりは非常に納得の行くところだ。彼の人間不信は、人間に対する漠然とした(むろん、過去の出来事に起因しているが、特定の何かに対象があるわけではない)ものであって、その不信を払拭するためには、たった一人でも信頼できる人間がいればいい。現時点では、ヒロインたるカティアはそこまでの信頼を受けているわけではないが、少なくともテオドールの懐に飛び込んできている。そこで突き放せなかった彼にとって、彼女がかけがえのないものになってしまうのは、避けられないことなのではないだろうか。

もし、テオドールがカティアを”信じる”ことが出来たとき、彼が根深く抱いている不信は、引っくり返るはずだ。彼が「あらゆる人間は信じられない」という信念は、一人でも信頼できる人間がいたとき、崩壊するからだ。そうなったとき、果たして彼は、この絶望の戦場で、破滅を目の前にしながら、それでもなお内ゲバを続ける国で、なにをすることになるのか……。そこはまだ不明であるので、今後の楽しみとしたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.08.23

『ミスマルカ興国物語IX』

514kfdye9gl__bo2204203200_pisitbsti

ミスマルカ興国物語IX』(林トモアキ/角川スニーカー文庫)

いや、素晴らしい。物語のエンジンがものすごい勢いで回転している感じ、というのはいささか抽象的すぎるけど、とにかく素晴らしい。林先生のダイナミックな作劇が見事に物語と合致しているように思います。個人的に、おお!?とこの作品の見方が変わったのが7巻、つまり、ミスマルカ征服のあたりからなんですが、そこから、物語の速度が突然加速したんですね。それまでは、聖魔杯を探して~帝国と小競り合いをして~舞台となる国の陰謀に関わって~、と、ある意味、パターンに入っていたように思います。それはそれで面白くはあったんですけど、結局、物語としては一話完結的で、もちろん、そこで張られた伏線はいくつもあって、それが物語をつなげていたわけですが、それでも、いささか大人しい印象を受けていました。なんと言うか、物語はマクロの志向を持っていたんですが(国と国のあり方の問題ですからね)、マヒロたちがやっているのは、どうもミクロな話に終始しているというか、一部の例外の除いて、ごく個人的な冒険をしていたように感じたんです。

しかし、ミスマルカという足枷(という言い方は悪いけど、マヒロがどうしてもそこに帰ってこなくてはならない、という意味)から解き放たれたマヒロの物語は、一気にスケールアップした感があります。お前ら、今まで必死こいて集めていた聖魔杯はどうした、とツッコミたくならないではないぐらい、帝国内部に侵入したマヒロは謀略を楽しそうにやっていますね。ここから、物語は帝国側から大陸を統一するという物語が(ようやく)発動し、今までのパターンから脱したように思います。まあ、まだわからないですけどね、そう思った方が楽しそうなので、今のところはそう思うことにします。なにしろ、今まであくまでも帝国へのカウンターだったので、どうしても話が小さくなっていたように感じてしまっていたので(言いすぎかな?)、僕はこの展開はすごく楽しく、ようやく物語が本格的に始まったような気さえします。

あと、僕が楽しくて楽しくてしょうがないのは、帝国の三皇女たちがいるから、というのもあります。前巻で、ルナスのヒロインぶりがヤベエ!という話をしたと思いますが、今回はシャルロッテがヤベエ!という話になりました。具体的になにがヤベエかと言うと、下手をすると主人公交代の危機クラスのヤバさです(林先生ならやりかねない)。ルナスはあくまでもヒロインですが、シャルロッテは、マヒロとのキャラクター方向性の類似と、そしてマヒロ以上に映えるキャラクターであり、つまり彼女はマヒロの上位互換系のキャラクターに当たります(系というのは、あくまでも似ているだけであり、同一ではないためです)。そのため、少なくとも今巻に限って言えば、ハチャメチャ帝国皇女の破天荒な活躍を描いた物語以外のなにものでもなくなっていますね。マヒロは主人公の弟で、姉のひどい暴走にひどい目に会う役回り(ほら、そういうラノベ、ありそうでしょ?)。シャルロッテはなにがどうなってもヒロインというポテンシャルでは収まらないキャラクターで、しかし、そんなキャラクターをポンっと(主人公が食われることを恐れず)登場させてしまう林先生は本当に凄いなあ。正直、畏敬の念を押えられませんよ。なんでこれで物語が破綻しないのだろうか……あるいは、破綻したらしたで、それもまた良しと思っているのかもしれませんね。かっこ笑…えねーなー。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2011.08.17

『バカとテストと召喚獣9.5』

518p2cuooql__ss500_

バカとテストと召喚獣9.5』(井上堅二/ファミ通文庫)

もう超安定の面白さ。あるいは、面白いと言うよりも、楽しい作品ですね。キャラクターが完全に安定した配置をされていて、それぞれの役回りがかっちりと決められているので、作者はキャラクターたちに何らかの運動を起こす契機さえ与えれば、キャラくクターたちが勝手に物語を作ってくれるわけですね。これはちょっとすごいことで、作者のキャラクター設計力、ひいては物語の構成の確かさには、読むたびに感嘆させれてしまいます。

アニメでも二期が始まっていますけど、30分という枠組みが決まっているせいか、余計に構造の巧みさが分かります。明久と雄二という物語の根幹にいる主軸たちと、その周囲にいて主軸に干渉してくるヒロイン、そして時に主軸のフォローをし、あるいはヒロインたちをそそのかすサブキャラクターたち。それぞれのキャラクターがそれぞれの”キャラクターらしく”行動するだけで、キャラクター同士が連鎖反応を起こして物語が転がっていく。すごいよねー。もう三回も読み直したけど、そのたびに新しい発見がある。最初にキャラクターの配置(無論、それに見合うキャラクター性もあるし、関係性にも気を配らなくてはいけないが)を固めるだけで、ここまで面白くなってしまうのか。感動に近いものがあります。

この構造の巧みさは、短編においても、いやむしろ短編にこそ真価を発揮します。基本的に、今回の短編は、すべてある種のシチュエーションのみをキャラクターに与えて、あとはキャラクターがそれぞれに行動することで出来上がっていますからね。それぞれのボケとツッコミ、それを上回るさらなるボケ、それに対応するツッコミの繰り返しで話が進むところなど、コント的な側面が強くなっているともいえます。最後の「俺と喧嘩と不思議なバカども」だけは、普通のストーリー物に近くなっていて、上記の枠組みに当てはまらないんですけどね(関係性が固まる前の話なので当然ですが)。ただ、ストーリーものにもシュチュエーションコメディにも、臨機応変に対応できるのは、キャラ設計が非常にシンプルで強靭だからなんじゃないかなあ、と思います。

こういう作品を読んでいると、キャラクターの設計と構造の面白さを実感します。どうすれば読者は”面白い”と感じるのか。たぶん作者は、その方程式が出来上がっているんでしょうね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.08.12

『オブザデッド・マニアックス』

51sgvez4v6l__ss500_

オブザデッド・マニアックス』(大樹連司/ガガガ文庫)

ゾンビ小説のお約束を徹底的に踏襲しつつ。そのすべてが別の様相を見せるという、言うなればメタ・ゾンビ小説とでもいうべき作品だった。まあ、それはそれとして、非常に楽しい娯楽たっぷりなエンターテインメントであることは間違いない。ゾンビ映画のお約束を踏まえつつ、それとは別の領域に持っていく。このあたりのやり口は、非常に作者らしくてさすがであった。本当に作者がそのように考えてるのかは知らぬ。

主人公は世界が突然滅んでゾンビが蔓延しねーかなー、などと無双するゾンビ好きで健全な高校生。まあ、およそ高校生たるもの、世界の破滅の一つや二つを妄想していてしかるべきであるよな。その意味では彼は平凡な人間であり、そんな平凡なる彼が、なぜかとある島にやってきて、補習を受けているところから物語は始まる(しかし、この展開も相当に不自然なものがあるのだが、それを突っ込むのは狭量というものだ。なぜならゾンビと隔離された孤島は切っても切り離せない、とまでは言わないが、タンメンに野菜を入れるぐらいには自然な組み合わせだからである)。そして、唐突にゾンビが発生し(この展開も以下略)、主人公はついに、自分の待ち望んだ非日常がやってきた!と歓喜するわけだが、しかし、いつも思い描いていたようには、彼は行動できない。ゾンビは人間と同じ姿をしており、従って、人間を殺すのと同じように、ゾンビも殺しにくいのである。血だって出るし、脂だって滑る。それは現実である。そして、現実を上手く生きれないから、彼はゾンビ映画に逃避していたのであった。ここで、なんとも皮肉的な、ある意味でしょーもない結論が導き出される。現実となった非日常の中では、彼は現実ではいつだってそうだったように、彼の居場所などはなかったのであった。これまた皮肉なことに、彼の友人たちの中では、非日常に叩き込まれたことで、本来の資質が開花したものがいる(それこそ映画のように)。日常の中でもともと持っていたスキルや能力が、非日常の中ではなによりも重要な力として発揮される。そして、彼らは己に対する肯定を為すことで、成長していく。まさに映画であり、正しい物語がある。そして、主人公には、それすらも与えられないのである。ただ、ゾンビ映画のセオリーを熟知している、ただそれだけの主人公には、成長を行えるだけの実感を得ることが出来ない。自分が愛した非日常の中で、一人取り残される。

ところが、物語はさらに反転する。ゾンビで引っくり返った世界が、さらにひっくり返る。ゾンビ世界の中で活き活きとするものたちによる、新たな世界秩序が起こり、かつての世界を排斥しようとするのだ。そうして、非日常がさらに覆される。非日常が反転したとき、そこに現れるのは、すなわち日常である。だが、日常が反転し非日常になり、そこからさらに反転して表われた日常は、厳密には、元通りの日常とは異なる。本来の日常の、複雑骨折したような世界が、あらたに表われた日常であるのだ。そこでは、本来の日常の、醜悪なパロディが繰り広げられることになる。本来あるべきヒエラルキーは崩壊し、ゾンビ世界で生き抜くための新しい階級が生まれる。だが、それはスクールカーストと本質的にはなにも変わるところはなく、階級を支える土台が変化したに過ぎないのであった。そのことに、主人公が早くに気がつくことが出来たのは、さらに皮肉なことに、彼が非日常からも取り残されていたからである。日常が崩壊した非日常の中で、それでも彼はいつも通りの疎外感に苛まれていた。非日常さえも、彼にとっては日常と変わるものではなかった。それゆえに、彼は、非日常が反転した日常の、その醜悪さに気がつくことが出来たのである。日常が反転しようと、非日常が反転しようと、彼にとっては、なにも変わることはなかった。ただ、強い違和感を覚えたのだった。

どの世界からも取り残され、落ちこぼれる主人公。だが、だからこそ、彼が語れることがある。日常からも、非日常からも取り残された”弱者”である主人公だからこそ、彼は、強者が弱者を虐げるシステムそのものに、”反抗”することが出来るのだ。彼だけが、あらゆる状況の中で、”強者として弱者を虐げていない”ゆえに。彼だけが、唯一絶対なる”弱者”として戦うことが、強者が弱者を虐げて良いとするシステムを糾弾することが出来たのであった。そうして、偽りの日常は崩壊を迎え、世界はもとの世界に戻る。結局は、主人公が嫌悪し、憎悪し続けてきた日常に回帰するのである。だが、それはすべてが元通りであることを意味しない。彼がシステムに立ち向かったという事実は残っている。なによりも、主人公自身が、それを知っているのだった。彼が”弱者”であることを言い訳にすることは無いはずである、少なくとも、彼がその事実を忘れない限りは。世界はいつだって、隙あらば食らいつこうとするゾンビの如く、人々を狙っている。戦わなくては、生き残れない。それは、日常だって、非日常にいたって、変わらないことなのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.08.06

『赤鬼はもう泣かない』

51wrsgwzmsl__ss500__2

赤鬼はもう泣かない』(明坂あかり/ガガガ文庫)

前半と後半で物語のカラーが、完全に反転しているところに好感が持てる。前半では、不思議な少女と交流を深めてゆく主人公の、なんとも不思議な学校生活がほのぼのと綴られてゆく。その時点でいくつか提示されている事柄が、後半に入ると、まったく別の意味を持つようになるところは、丁寧な描写であった。主人公とヒロインの交流としても、最初は異形とも思えるヒロインに、だんだんと心を許してしまう過程には、それ相応に納得の出来るところがあって、物語の手続きはきちんと踏まえているように思う。

その一方で、主人公のあかなめと言う設定にほとんど物語的な意味がなかったり、物語が反転する瞬間のシーケンスに、多少のもたつきを感じさせるところもあって(少なくとも、ある瞬間を境に、パッと絵が切り替わるタイプの作品ではない)、いささか洗練のされていないところも見受けられる。とはいえ、これは作者の志向であろうとも思えるので、必ずしも欠点とはいえないだろう。拙速よりも巧遅を尊ぶタイプなのだろう。

後半において残酷を迫られることになる主人公が、きちんとそこに楔を打ち込むことになる展開には、物語的手続きを踏む作者の志向が良く現れている。そこには奇跡も偶然もなく、主人公か築いた人間関係と、ある人が遺した手段によって物事は為される。因習を打破するのではなく、利用して、己も社会の一員となることによって、物語は為されるというところを見るに、これもまた、ある意味ビルドゥンクスを達成しているのかもしれない。

また、話は逸れるが、ヒロインを不幸にする因習を破壊するのではなく、あくまでも保守するというところが、個人的にはとても好きだ。なんでもかんでも壊せば良いと言うものではない。過去のものは、それ相応の理由があって、積み上げられたものである。それを正しく利用することで、人間は生きる力にしてきたことでもあるのだ。壊すことは簡単であるが、創り出すことは困難なものなのだから。壊した後のことを考えないような行為は、あまりに無責任というものだと思うのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.08.04

『スノウピー3 スノウピー、恋愛する』

51rn18jpfzl__sl500_aa300_

スノウピー3 スノウピー、恋愛する』(山田有/富士見ファンタジア文庫)

最近のスノウピーの関心事は、恋なのだという。恋という不思議でわくわくするはずのものを、自分も体験してしてみたいと、スノウピーと撲はいろいろと調べてはじめるのだった。が、明らかにスノウピーは相談する相手も間違っていると言わざるを得ない。いや、あるいはクリティカルに相談相手として正しい相手だったのかもしれない。だが、何ごとも過ぎたるは及ばざるが如し。正しすぎるというのも、問題である。さらに、”撲”は、こういうときに真面目に取り組んでしまうものだから。

恋愛というものをしたことがないスノウピー、不思議でおかしなスノウピー。彼女にとって、いままで他者とは、なんだったのだろう?ただ、あるがままに存在する”だけ”ということを、受け入れられなくなってきた彼女は、ある意味において、とても堕落してしまった。冷たい視線で人間共の振る舞いを観察していた妖精は、いつの間にか、誰かと触れ合いたいと思う、普通の女の子になってしまったのだった。

恋という、なんだかよくわからないけど素敵なものを求めて、彼女は動き出す。しかし、そんな彼女たちに、なにやら不穏な気配が(また邪魔者か!?)。引き離されるスノウピーと”撲”。そのことに、激しいショックを受ける”僕”。なぜなら、彼らは”引き離される”のである。あくまでも、まったく別の存在であったはずのスノウピー、”孤”の存在であったはずのスノウピー、しかし、彼らはいつのまにか、それほどまでに近くに寄りそっていたのだ。引き離されたことで、不安を覚えるほどに。”撲”が怒るほどに。

こうして、かつての妖精は、お姫さまとなった。己を否定することしか知らなかった少年は、王子さまになった。王子は、己の存在をかけて、姫を救う冒険に出る。その冒険の過程で、彼は仲間を得る。それは、彼が不器用に、ときに失敗しながらも向き合ってきた、いろいろなものからのご褒美。そうして彼は仲間と剣をもって、姫のもとに向かい、その結果は、とくに語るべきことはないだろう。正しく犠牲を払ってきたものに、正しき対価を。物語とは、このようにあるべき、であろう。

以下、さして重要ではないつぶやき。

スガモさんはとても面白い人だと思うのだが、ヒロインだったということに驚きであった。なんで囚われのお姫さまAをやっているんだ。というか、貴女の目的はなんなんですか?

可香谷さんの空転ぶりが愛おしい……はずだったのだが、意外と噛みあい始めている。主人公の成長が、あるいは素直になったのか。

続くのだろうか……。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.08.02

『アクセル・ワールド(8)運命の連星』

51uklmavm8l__ss500__3

アクセル・ワールド(8)運命の連星』(川原礫/電撃文庫)

呪い、悲劇に彩られた伝説の装備を、親友を救うために躊躇なく使う主人公、そしてその想いに応えて、伝説はその真実の姿を見せる。この一連のシークエンスは、王道少年漫画といった風情で心地よい。少年の決意と想いは、それが純粋であればあるほどに困難な道をゆくことになるが、同時に報われなくてはならないものだ。理想とは困難なものであり、同時に、それが叶えられることが、”物語として正しい”のである。

だが、”物語の正しさ”とは、ご都合主義とイコールではない。物語として正しいからと言って、物事の理路を無視してはただの妄想と異なるところはないのだ。道は困難であっても、その困難を乗り越えられるだけの積み上げがなければ、その物語が人の心をうつことはない。理想が困難であるのは現実、ならばその現実を乗り越えて理想に届くだけの力がなくては理想は実現できない。

だが、力とは、単純な腕力ではない。本人の能力、でもない。もっと大きな、意思の力である。なにかを為そうとする、その志向性。それこそが力だ。何かを成し遂げようとするとき、成し遂げようとする力は生まれる。そして、そこから生まれる力は、多くの人々、物事を巻き込んでゆく。彼を助けるための仲間たち、数多くの偶然、偶然を支える必然、そうしたものが、生まれてくる。

”物語の正しさ”を実現するためには、理想に届くまで、これらの、力によって生まれた”もの”を積み上げることが必要である。その積み上げは、理想に届くずっと以前から、それこそ、この物語は始まってから、積み上げ続けたものだ。主人公のハルユキが、卑屈になり、ヘタレながら、それでも物語ごとに積み上げてきたものが、彼の、親友を救いたいという願いを支える。その時初めて、彼の起こした奇跡は、ただの奇跡ではなく、物語的必然となりうるのである。

このシリーズ、というか作者は、そのような”積み上げ”を行うことに、非常な丁寧だ。作者の手にかかれば、いかなる物語的ご都合も、きちんとした理路が敷かれた、正しい物語となる。そういうところは、作者のすごいところだ、と素直に思うのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年7月 | トップページ | 2011年9月 »