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2011.08.28

『シュヴァルツェスマーケン(1) 神亡き屍戚の大地に』

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シュヴァルツェスマーケン(1) 神亡き屍戚の大地に』(内田弘樹/ファミ通文庫)

本家マブラヴと同様、BATAという人類の敵が確実にあり、それと戦うことは何一つ疑うことのないほどに正しきことなのに、それでも人類は争いあうことを止められないという泥沼の戦場が描かれるとともに、その戦場で生きる少年少女たちの出会いと別れ、生と死、そして成長が描かれている。

己以外の何一つも信じられず、敵も味方も同様に憎悪するべき相手でしかないテオドールが、憎悪する必要のない少女と出会う。そして、ある目的のために亡命してきた彼女を助けるうちに、彼自身が抱える人間不信(引いては、それは主人公自身に対する不信でもある)から、己自身を救い上げていくことになる。このあたりは非常に納得の行くところだ。彼の人間不信は、人間に対する漠然とした(むろん、過去の出来事に起因しているが、特定の何かに対象があるわけではない)ものであって、その不信を払拭するためには、たった一人でも信頼できる人間がいればいい。現時点では、ヒロインたるカティアはそこまでの信頼を受けているわけではないが、少なくともテオドールの懐に飛び込んできている。そこで突き放せなかった彼にとって、彼女がかけがえのないものになってしまうのは、避けられないことなのではないだろうか。

もし、テオドールがカティアを”信じる”ことが出来たとき、彼が根深く抱いている不信は、引っくり返るはずだ。彼が「あらゆる人間は信じられない」という信念は、一人でも信頼できる人間がいたとき、崩壊するからだ。そうなったとき、果たして彼は、この絶望の戦場で、破滅を目の前にしながら、それでもなお内ゲバを続ける国で、なにをすることになるのか……。そこはまだ不明であるので、今後の楽しみとしたい。

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