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2011.07.06

『キミとは致命的なズレがある』

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キミとは致命的なズレがある』(赤月カケヤ/ガガガ文庫)

ライトサイコサスペンスとしては、ほどよくまとまった作品。タイトルからして、妄想的な文学になるか、セカイ系に走るかと思わされたが、一貫してブレなく、サスペンスに徹したところは評価できる。個人的には、もう少し認識系の話を掘り下げて行われた方が好みだったのだが……。この認識系の設定は、あくまでも舞台設定としての異能とそれほど差異のない存在なのかもしれない。そのために、物語の深刻さ、緊張感をやや削がれるところはないこともないが、物語をスピーディなものにしようという意図は感じられなくもないので、その意味でも、”ライト”サイコサスペンスとしては、まとまっていると言える。

”彼女”の存在は、物語的に上手く使われている。と書いてもわけがわからないと思うが、まあ、主人公が公園で世間話をしたりする、彼女である。で、彼女は、主人公の”ズレ”を象徴、というか、バロメーターとしての役割なのだ。彼女は当初、主人公の親友みたいな立ち位置で登場し、途中で、主人公のズレが明らかになると同時にその正体を明かす。そして”回復”した主人公にとって、現実の存在として立ち上がってくる。彼女の状況を見れば、主人公のズレがどのようになっているのか、わかるというわけだ。いささかガジェットとしての役回りが強すぎて、もったいない使い方をしたものだとも思わないではないが、サスペンスとしては正しく感じるのだった。

”犯人”の存在は、あまり恐怖を感じる類いの設定には感じられなかった。動機を持たない殺人者なのはともかく、その裏の存在を感じさせるのは、続編を描くにしろ、あまり良い手ではないと思う。犯人の格を落とすだけではなく、物語全体の緊張感を削ぎかねない。”怪物”として描くのならば、徹底してそのように描いた方がよいと思うのだが……。あるいは、あえて不完全な怪物として描くという意図なのだろうか?犯人は怪物ではなく、あくまでも怪物にさせられた人間である、と?ということは、味方になるフラグなのかもしれないなあ。でも、そういう展開は、よほど上手くやらないと、無粋な展開になりそうな気がする。まあ邪推ですけどね。

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