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2011.07.20

『涼宮ハルヒの驚愕』

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涼宮ハルヒの驚愕』(谷川流/角川スニーカー文庫)

上下巻でありかつ厚みもかなりあるというのに、長さを感じさせない語り口はさすがですね。文章に、まったく引っ掛かり覚えないので、途切れることなく読むことが出来る。これは文章の巧みさもあるけど、作者の自意識が上手く消臭されているところも大きいと思います。作者はあくまでも観測者に徹していて、作中に自分自身を出していない。知っての通り、涼宮ハルヒシリーズはキョンの一人称で書かれているわけですが、キョンの一人称は、あくまでもキョンの視野内でしか語られず(一部に例外はあるにしても)キョンの知らないことは書かれない。まあ、その分、古泉とか、長門あたりが、作者(あるいは神)の代弁者として行動するわけだけど、それでも、キョン自身は、自分が遭遇していることが、限定的にしか分からず、その限られた情報の中で右往左往している、つまり、本当はもっとスケールが大きいことがあるのだけど、キョンには分かりえないというところが、ハルヒシリーズらしさであろう、と思います。って話がずれたけど、キョンはあくまでもキョンであって、作者から間接的に与えられる情報(古泉や長門からのアドバイス)を受け取る平凡な個人である、というところで徹している。作者はいるのかもしれないけど、少なくとも、キョンからは見えないところにいる、みたいな、そんな演劇めいた感覚がある……というのは、今、書きながら思いました。ここは、結構面白いところのような気がするなあ。

話は変わるけど、佐々木というキャラクターは、非常に面白かったです。というか、とても好きです。”驚愕”(分裂も含む)という物語の中で、最重要人物であり、事実、彼女を巡って物語が動いていたにも関わらず、最後まで物語に関わろうとしなかったというところなど、興味深くあります。しかし、そんなことよりも、彼女が考え深そうな、でもたいしたことでもなさそうな台詞に、なにやらキュンキュンするものがありました。このあたりの佐々木のいうことは、いささか韜晦が多くて分かり難い、いや、言っていることはわかるんだけど、どこまで本気に受け取っていいのかわからないところがある。でも、そこに不思議な可愛らしさがあって、おっさんの夢全開だなあ。とても論理的で合理的だけど、根っ子のところには合理性では説明できない、というか、そんな感じ。ハルヒとは違った意味で、とても面白い子です。一番好きなのが、彼女がキョンに別れを告げて、最後に去っていくところ。爽やかで、さっぱりとしていて、それでいてなにがしかの未練を残しているような雰囲気が、すごく良かった。ぼかぁもう佐々木というキャラクターが出てきただけで、驚愕という物語を肯定できてしまいますね。

そういや、驚愕で唐突に新キャラが出てきましたが、あれはいったいなんだったんでしょうか……。ある人物の”無意識”とは言っているけど、彼女自身にも”自意識”があるわけで……。あー、こういう一夜の夢、みたいな登場人物は好きなんだよなー。蝶の夢を見る自分か、自分の夢を見る蝶か、どちらが本当なのかを知る術はない。彼女は、”夢見る彼女の夢”なのか、あるいは”彼女の夢が夢見る彼女”なのか。うーん、ジュブナイル(たぶん違う)。まあ、きっと、ハルヒシリーズが続けば、きっと、再登場することもあるのでしょう。楽しみに待ちたいとこです。おしまい。

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コメント

古泉です

投稿: | 2011.07.21 18:45

ありがとうございます。修正します。

投稿: 吉兆 | 2011.07.21 20:02

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