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2011.07.02

『RPG W(・∀・)RLD(8)‐ろーぷれ・わーるど‐』

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RPG W(・∀・)RLD(8)‐ろーぷれ・わーるど‐』(吉村夜/富士見ファンタジア文庫)

前回で、仲間達に危機的状況に陥ったところから、一巻かけての大逆転劇。完全に戦記ものになってきているが、なに、世の中にはTRPGというものがあって、そこでは戦争シーンは一大スペタクルシーンなのだ。ロードス島戦記から続く伝統といえなくもない。

そして、戦記ものとなった関係か、ユーゴ以外の仲間達の活躍が目立っていた。これは、戦争というのは、個人の武勇で左右されるものではなく、組織としての強さが問われるものなので、必然的に個人のみの活躍では勝利はおぼつかないためだろう。とくに、前回が、ユーゴの指揮に失敗によってピンチに陥ってしまったので、そこからの挽回をするためには、仲間全員の力を集結させなくてはならなくなった。まさしく総力戦です。

少ない手勢で必死で敵の大軍の攻勢をしのぐかたわら、援軍かきあつめ、隣国を味方につけるように口説きおとし、敵の作戦の要を見抜いて奇襲をかける。その一つでも失敗をしていれば、堤防が蟻の一噛みで決壊するのと同様に、すべては瓦解していただろう。そこを、ただただ目の前の厳しすぎる現実に、その場しのぎを延々と繰り返すことで、”結果的に”それがもっと大きな”絵”の重要な構成を為している。こういうのは、組織活動に親しんでいると、非常に共感できるんじゃないかと思います。もちろん、全体のラインを統括するヘッドがいないと、非常に非効率になってしまうこともありますけど、究極的な話、現場では、現場の判断でしか乗り切れないんです。刻一刻と変化する状況に、必死になって対処していく。役に立つのかどうか、意味があるのかどうかさえわからない手をどんどん打っていく。このような、いわゆるデスマーチ状況において、速さは重要です。一瞬の判断の遅れが、全体を崩壊せしめる可能性があるのです。

そうした分裂した集団の、意図せざるチームワークがきちんと描かれていて、とても良かったと思います。それぞれの局面にいる仲間たちは、他の仲間がどのような行動を取っているのか、必ずしも把握していません。むしろ、何をしているのか、まるで分かっていない。ただ、それぞれが自分の置かれている状況の中で”仲間たちが何かをしてくれていることを信じて”ひたすら対処していくことで、結果的にチームプレーになっているわけです。これはご都合主義にも見えますが、実はそうではありません。これは、ある”目的”のために”モアベター”を積み上げていくと、最終的に最善の手段に、自然に辿り着いた、ということですね。ただ、最善の手段というのは、往々にして、”何か一つでも誤ればすべて瓦解する”ということが多いです。ここが組織で活動することの難しさというものですね。組織において最高の手段を求めれば最高の結果を得られるとは限らないのは、組織の構成員がすべて最高の手段を取れるとは限らないからです。どうあっても、意識が揃わない。そもそも、揃えられるものではない。だから、そろわなくても大丈夫なように、次善の手段を選択するのが、健全な組織なんですが、まあ、大ピンチ的危機的状況のときには、そんなことを言っていられない。とにかく最優先効率で、最善の行動を、組織だって行う必要がある。まあ、ある意味、これもロマンの類い、ファンタジーですね。

ただ、自分が出来ることは、目の前のちっぽけなことに対処するだけだけど、そうしたちっぽけなことが、沢山あつまることで、大きなことが出来るようになるというのは組織の力だし、それが正しいことのために結実するというのは、すごく嬉しいことでもある。組織というものは、人のつながりであり、それが正しく運用されることは、とても素晴らしいことであると思うのです。

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