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2011.06.14

『青い星まで飛んでいけ』

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青い星まで飛んでいけ』(小川一水/ハヤカワ文庫JA)

以下、各話感想。

「都市彗星のサエ」

懐かしいボーイ・ミーツ・ガールの香りが漂っている。都市彗星の描写については、(現代人の視点から)日常と非日常の両方を感じさせるものがあり、ギャップを感じさせるところが面白い。とはいえ、基本的には、そのような世界にで生きる少年と少女が出会い、そこから抜け出そうとする物語となり、ジュブナイル小説としての側面が強い。小川先生が初期に書いていた、ボーイ・ミーツ・ガールの冒険物に近い印象を受けたが、あの頃に比べると、小川先生もすっかり枯れたように思う。それでも十分にウェットだけどね。このくらいのバランスが、好きかな。

「グラスハートが割れないように」

祈りというものそのものは、とても尊いのだが、そもそも”祈り”とはなんなのだろう。自分の私見を述べさせてもらうと、自分のために行うことは、どのような意味であれ、それは”祈り”ではないのだ。自分のために祈るというのは、それは祈りではなく願望であって、そこには、祈りの本来の意味は失われている。というよりも、「意味を求めない」ということが、祈りなのではないか。そのようにも思う。

あと、作者のオカルトを嫌悪し、科学を信奉する態度が非常に良く出ている作品。自分もオカルトは嫌いだが(正確にはオカルトで商売することが嫌いなのだが)、最後の科学の立ち位置も、それが正しいという保証は、一般人には分からないと思うのだ。だから、最後の主人公の独白は、なんか皮肉な印象を受けた。主人公と、主人公の彼女の間に、本質的な違いはあるのだろうか?

「静寂が満ちていく潮」

小川一水という作家は、実のところ、エロス……というか、エロに非常に強いこだわりを持っていると思っていたので、このような作品を書いてくれたのは、なかなか嬉しいところだ。もちろん、セックスというのはコミュニケーションの手段であり、その意味ではファーストコンタクトものとしては十分にユニークな視点ではあるが、個人的には、小川先生が、自分の好きなシチュエーションで、エロが書きたかっただけだと信じている。確かに異種姦SFとか熱いよねえ。

エロが楽しすぎたせいか、感想を書くときに、内容をまったく思い出せなくて困った……。

「占職術師の希望」

これは面白い。普通にシリーズ化しても面白いような気がするくらい、もったいないアイディアの使い方。まあ、それが短編の醍醐味とも言えなくもない。ただ、人の”天職”がわかるというだけの(すごい)能力の、微妙な使いどころの難しさが、サスペンスを成立させているといえる。あと、ヒロインの”天職”が面白かったですね。確かに萌えヒロインには重要な天職ですよ(それかよ)。

「守るべき肌」

これは完全に『エンダーのゲーム』をモチーフにしているような気がする。”世界”が異なる少年と少女がであって、お互いの認識のギャップを埋めていくボーイミーツガールではあるんだけど、苦さとやるせなさを生じさせるラストが、むしろロマンティズムを刺激していくところなど、小川先生らしいなあ、と思った。

作品全体が、実に白っぽくて、どこかなんというか、すごくデジタルな話だと思う。

「青い星まで飛んでいけ」

分かり合いたいけど、近づくのが恐いという、いわゆるATフィールドの話、なのか?毒づきながらも人(知性体)恋しい人工知能の不器用な間合いの取り方が、いかにも人間的。明らかに、ダメンズに引っ掛かって過去にひどい目にあった女性が、それでも恋することを止められない的な、非常にウェットな、ウェットすぎてドロドロな思考が、妙にスケールの大きい物語とあいまって不思議な印象を受ける。人類補完計画をやっても、その先には、結局、他者を見出してしまうのかもしれないね。

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