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2011.06.28

『這いよれ!ニャル子さん(7)』

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這いよれ!ニャル子さん(7)』(逢空万太/GA文庫)

前作からその予兆のあった、”物語”の発動が確認された。すなわち、真尋とニャル子のラブコメである。ニャル子が真尋に対して基本ラブであることは、この物語が始まった当初からのお約束ではあるのだが、そのラブが、少しずつ、そのあり方を変えつつある。これは、ニャル子側の変化もあるが、それ以上に、真尋側の変化の持つ意味が大きい。簡単に言えば、デレのないツンデレと形容された真尋が、除々にデレてきたということだ。いつものごとく一途ながらも巨大な迷惑をかけ続けるニャル子に対して、それを迷惑に思う気持ちよりも、ニャル子が可愛いな、という気持ちの方が強くなりつつある。もちろん、とつぜん家にやってきた美少女が嫌いな男子などいるはずもないが、いままでは基本、(極論すれば)性的衝動、言い換えれば若い野生(なぜ言い換えた)オンリーだったものが、少しずつ、ニャル子の行動を受け入れてきているというところが、非常に大きなデレであるといえよう。

これは、非常に迷惑な人格の持ち主であるニャル子の行動に慣れてきたことで、彼女の巻き起こす迷惑に耐性が出来てきたということもあるだろう。きちんと数えてはいないが、ニャル子の同棲を始めて一ヶ月(まだ一ヶ月かよ……)ぐらいになろうということもあり、ようやく、ニャル子(たち)のキャラクターに慣れてきた。それによって、事件が起こっても、素直に受け入れることが出来るようになった。これは非常に大きい。そして、それによって、彼女たちのキャラクターそのものを、ようやく受け入れることが出来るようになったのだろう。相手のことを理解できていれば、大抵のことは受け入れられる。それが真尋にとって、デレさせる要因となったのだろう。

さて、真尋のデレによって、”物語”は発動する。物語の発動によって、この作品は、一つの緊張感を生み出すことになる。すなわち、変化による緊張感である。真尋とニャル子の距離感が除々に縮まるにつれ、クー子との関係は、摩擦を生み出してゆくことになる。これは、普通のラブコメであれば、些細な問題である。誰かと誰かがくっつけば、誰かが振られる。そんなことはいちいち考えるまでもなく、当たり前のことだ。だが、ニャル子さんという作品、ひいては逢空万太という作家は、そうした、いかなる葛藤、摩擦、挫折を排除してきた物語を作ってきた。というのは、あくまでも僕の判断なので、留意いただきたいのだが、それが、僕の逢空万太評である。とにかく、徹底してぬるい。断固たる、果断なるぬるさだ。この作品には、悪意がない。というよりも、悪意が無力である、と言ったほうが正しいか。誰かに対して、害そうとする意思と行為は、この作品の中では、もっとも無力である。そうしたものは、登場人物のだれにも影響を与えず、無力にニャル子たちに蹂躙されてしまうのがお約束である。悪人たちの存在意義は、主人公たちに爽快に殲滅されることであり、彼らが起こす事件は、解決されるためにのみ存在する。

つまり、徹底して、誰も傷つかない、優しい作品を描いてきたのが、ニャル子シリーズという作品なのだった(ある意味、萌え四コマ的と言ってもよいだろう)。だが、物語の駆動によって、”誰も傷つかない”というラインが、怪しくなってきているのだ。珠緒は、物語には深く関わってなかったおかげて、そうそうに真尋とニャル子の関係から身を引いた。それによって彼女は前向きに失恋を受け入れることが出来たわけだが、それだって、ニャル子シリーズとしては、十分に異色の展開である。真尋とニャル子の関係が進展したために、彼女はそのような決断をせざるをえなくなってしまったのだ。はす太の展開も、明らかに真尋とニャル子に、関係を統一化しようという意図が垣間見える。

作者は、おそらく、派手な関係を描つもりはなく、珠緒とハス太の例にように、関係を真尋とニャル子オンリーにソフトランディングさせるつもりなのだろう。あくまでも、優しい結末を考えているはずだ。ただ、それによって、この作品が、どのように変化していくのか、いささか見切れないように思う。そろそろ主人公たちはラブラブ寸前くらいになっているが、ラブラブになったら別の作品になってしまうだろう(それも面白いと思うが)。物語の駆動によって、この作品がどのように変化していくのか、その意味でも、緊張感のある展開だと思うのである。

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