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2011.05.27

『天国に涙はいらない(終)』

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天国に涙はいらない(終)』(佐藤ケイ/電撃文庫)

イメージとしては、TV最終回の後の映画版という風。例えばアブデルが冒頭で退場してしまうとか、いかにも映画的なピンチのフラグだ。そして登場する映画版オリジナルの悪役、ヒロインを救出するために行動する主人公、そして、彼を支援する今まで関わってきたキャラクターたち、などなど。このようにオールスターキャストになると、いかにも最後という気分が盛り上がってくる。雰囲気も常時シリアスさを保っており、今までのような露骨な萌え描写は控えめになっている。もともとシリアスな物語を背景に、そのシリアスさに乗っかって、あざとく萌え描写を入れてくる作品ではあったのだが、今回は登場人物が多いこともあって、そちらの描写は控えめになっているのかもしれない。

そうした萌え描写は控えめながら、逆に、キャラクター描写に繊細な気遣いがされているようだ。多くの登場人物が入り乱れた、相当にごちゃごちゃしたストーリーでありながら、キャラクター一人一人のキャラ立てをきちんと行い、キャラクター性に沿った活躍の場を用意しながら、ストーリーを阻害しないレベルの描写に留めている。これは今までの巻で、極端なキャラクター設定を行ってきたことの確かな成果であろう(あるいは、三十三間堂学院でやっていることをフィードバックしているのかもしれない)。作者の積み重ねてきたものが見えてくるようで、長くこのシリーズを読んできた身としては、正しいようにも思う。

物語的には、是雄とたまちゃんの、なんて言うんだろう、恋愛?擬似兄妹?正直、この二人の関係は、あまりにもピュアすぎてよくわからないのだが、ほのぼのとした庇護欲と信頼欲求に満ちた関係に収斂していくことになった……む、もしかしてこれが”萌え”による結びつきということなのだろうか?まあそれはともかくとして、この二人の関係というのは、一巻の時点で完成していた関係を、再度、確認していくという手続きが取られていて、なるほど納得感がある。最終的に、その結末さえも一巻の結末に回帰していくところなど、非常に端整であるとさえ思った。それは同じような結果に見えるけれども、それでも関係は大きく進んでもいる。一回りして、大きく強くなった関係を、最初の関係と対比する形で見せてくれるので、非常にわかりやすく感じるのだろう。

最終的な関係の結論が”あれ”というのは、なるほど、先ほど適当に書いた”萌え”という関係に落ち着いた証左なのかもしれない。すなわち「YESロリータ、NOタッチ」。幼女を愛するものではなく、愛でるもの。そういう関係なのではないか。まあガチで恋愛してしまうと、ちょっと絵面が背徳的過ぎるという側面もあるのかもしれないが。この辺りも、この作品の健全性というか、高いモラルを感じさせるのだが、その高いモラルが、逆説的に”ガチっぽさ”を醸し出しているような気もするのだが……まあ、このシリーズらしいように思う。

登場人物たちの決着も一通り済んでいるし、完結編としては綺麗に落としている。なんだかんだで長い物語となったこのシリーズを、このように綺麗に終わらせてくれた作者には、ただ感謝をしたい。

追記。後半の描写はいかにも大災害の後、と言う感じで、非常に描写がやばかった。自分が読んだのが、4月だったこともあって、強くそう感じた。3月に発売されていて本当によかった……。4月刊行になっていたら、自粛していた可能性もあったかもしれない。くわばらくわばら。

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