« 2011年4月 | トップページ | 2011年6月 »

2011.05.27

『天国に涙はいらない(終)』

51z8kunv0yl__ss500_

天国に涙はいらない(終)』(佐藤ケイ/電撃文庫)

イメージとしては、TV最終回の後の映画版という風。例えばアブデルが冒頭で退場してしまうとか、いかにも映画的なピンチのフラグだ。そして登場する映画版オリジナルの悪役、ヒロインを救出するために行動する主人公、そして、彼を支援する今まで関わってきたキャラクターたち、などなど。このようにオールスターキャストになると、いかにも最後という気分が盛り上がってくる。雰囲気も常時シリアスさを保っており、今までのような露骨な萌え描写は控えめになっている。もともとシリアスな物語を背景に、そのシリアスさに乗っかって、あざとく萌え描写を入れてくる作品ではあったのだが、今回は登場人物が多いこともあって、そちらの描写は控えめになっているのかもしれない。

そうした萌え描写は控えめながら、逆に、キャラクター描写に繊細な気遣いがされているようだ。多くの登場人物が入り乱れた、相当にごちゃごちゃしたストーリーでありながら、キャラクター一人一人のキャラ立てをきちんと行い、キャラクター性に沿った活躍の場を用意しながら、ストーリーを阻害しないレベルの描写に留めている。これは今までの巻で、極端なキャラクター設定を行ってきたことの確かな成果であろう(あるいは、三十三間堂学院でやっていることをフィードバックしているのかもしれない)。作者の積み重ねてきたものが見えてくるようで、長くこのシリーズを読んできた身としては、正しいようにも思う。

物語的には、是雄とたまちゃんの、なんて言うんだろう、恋愛?擬似兄妹?正直、この二人の関係は、あまりにもピュアすぎてよくわからないのだが、ほのぼのとした庇護欲と信頼欲求に満ちた関係に収斂していくことになった……む、もしかしてこれが”萌え”による結びつきということなのだろうか?まあそれはともかくとして、この二人の関係というのは、一巻の時点で完成していた関係を、再度、確認していくという手続きが取られていて、なるほど納得感がある。最終的に、その結末さえも一巻の結末に回帰していくところなど、非常に端整であるとさえ思った。それは同じような結果に見えるけれども、それでも関係は大きく進んでもいる。一回りして、大きく強くなった関係を、最初の関係と対比する形で見せてくれるので、非常にわかりやすく感じるのだろう。

最終的な関係の結論が”あれ”というのは、なるほど、先ほど適当に書いた”萌え”という関係に落ち着いた証左なのかもしれない。すなわち「YESロリータ、NOタッチ」。幼女を愛するものではなく、愛でるもの。そういう関係なのではないか。まあガチで恋愛してしまうと、ちょっと絵面が背徳的過ぎるという側面もあるのかもしれないが。この辺りも、この作品の健全性というか、高いモラルを感じさせるのだが、その高いモラルが、逆説的に”ガチっぽさ”を醸し出しているような気もするのだが……まあ、このシリーズらしいように思う。

登場人物たちの決着も一通り済んでいるし、完結編としては綺麗に落としている。なんだかんだで長い物語となったこのシリーズを、このように綺麗に終わらせてくれた作者には、ただ感謝をしたい。

追記。後半の描写はいかにも大災害の後、と言う感じで、非常に描写がやばかった。自分が読んだのが、4月だったこともあって、強くそう感じた。3月に発売されていて本当によかった……。4月刊行になっていたら、自粛していた可能性もあったかもしれない。くわばらくわばら。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年5月27日のつぶやき

【リューシカ・リューシカ(2) (ガンガンコミックスONLINE)/安倍 吉俊】安倍先生のカラーは独特の”汚れ”があって良いですね。 →http://bit.ly/m3ZSQE #bookmeter

posted at 21:29:27

【生徒会長の××はまったくもってけしからん ほうそうぶ2 2 (ほうそうぶ2シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫 み 4-5)/宮沢 周】主人公の”足りなさ”が逆に主人公性を補強している、というの... →http://bit.ly/lY0eHb #bookmeter

posted at 21:30:40

【魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 (MF文庫J)/川口 士】変な方向に行かなければ、第二のゼロ使になれるかもしれない。 →http://bit.ly/l1CkvU #bookmeter

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.26

『ゴールデンタイム(2) 答えはYES』

51pseuesgol__ss500_

ゴールデンタイム(2) 答えはYES』(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)

香子さんの情緒不安定ぶりは本当に凄まじい。一人だけ思春期が遅れてきたレベル。大学生となるとエエカッコしいが多くなる中で、たった一人だけこれほどの純粋性を保持してきた香子さんのピュアぶりは奇跡的とも言える。前巻の感想でも書いたけど、彼女の”残念”ぶりは、萌えとか可愛らしいという言葉には還元しにくいところがあるのだが、自分を偽ったり、カッコつけたり、少なくともそういう方向には向かっていない。おそらくは、それこそが”無垢”というものであろうし、万里が守らなくてはいけないと思ったものなのだろう。

とはいえ、遅れてきた思春期全開で行動する香子は、かなりめんどくさい女だ。言うこと、やることが重いし、行動もいちいち極端すぎる。中庸って言葉をぜひ知ってもらいたいところだけど、それでも、彼女なりに起こった出来事を消化しようという表れでもあるのだろう。その意味では、わりと香子はタフなタイプというか、大河と違って、かまってやらないと死んでしまうタイプではない、と言えるのかもしれない。どちらかというと、実乃梨タイプなのかもしれない(というのは自分の勝手な印象)。

今回のメインは、実は多田万里の方である。香子を助けるために奔走した彼が、彼の土台のあやふやさに翻弄されることになる。自分が感知していない縁を知り、自縄自縛になってしまう。過去なんて未来には関係ないといいつつも、過去を捨てることは出来ない。過去から逃げてしまった(とはいえ、それを責めることも酷ではある)万里がそのツケを払うことになる。

このあたりの関係は、実は、とらドラで描かれた最終巻近くの展開に似ている。ヒロインを一方的に助ける”ヒーロー”である主人公自身の物語において、潰れそうになる主人公を、ヒロインが助け返すのだ。一巻の内容が、とらドラシリーズのクライマックス直前までの焼き直しだとすれば、今回はクライマックスの焼き直しのように思える。つまり、ヒロインのヒーローへの依存で成り立っていた関係を、対等の関係にバランスを取り直す、というもの。対等な互助関係を構築したことで、ようやく関係を永続的なものにすることが出来るようになるわけだ。

自分が興味があるのは”この次”である。つまり「対等な互助関係となった恋人たち」がともに歩む道程だ。とらドラにおいて、未来への可能性として描かれた、未来そのものをどのように生きるのか、という物語だ。ハッピーエンドを迎えたとしても、そこで人生が終わるわけではない。これから先に起こる試練に、力を合わせて取り組んでいくのかもしれない。あるいはあえなく破局するかもしれない。だが、お互いに信頼しあった関係であっても、それが永遠に続くわけではない。そうした関係を、どのように描かれるのか、今後の楽しみとしたいと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年5月26日のつぶやき

【銃夢 Last Order(16) (KCデラックス)/木城 ゆきと】ゴタゴタをまったく感じさせず何事もなく続いている。プロの仕事だ。 http://bit.ly/ltkjvR #bookmeter

posted at 22:17:59

【CLOTH ROAD 10 (ヤングジャンプコミックス)/OKAMA】物語は王道なのに、表現が過剰極まりなく、倉田+okamaコラボの可能性を見た。 http://bit.ly/jywzZF #bookmeter

posted at 22:16:05

【げんしけん 二代目の壱(10) (アフタヌーンKC)/木尾 士目】斑目のピュアボーイっぷりがさすが。男はいつでもボーイなんだよ。 http://bit.ly/lPgaJT #bookmeter

posted at 22:14:23

【シドニアの騎士(5) (アフタヌーンKC)/弐瓶 勉】みんな大好きな内ゲバの始まりでござる。 http://bit.ly/mnuQ0f #bookmeter

posted at 22:13:25

【セレスティアルクローズ(2) (シリウスコミックス)/塩野 干支郎次】まるで話が動いていないのだが、群像劇要素も増えてきたので致し方ない。 http://bit.ly/k2TKaB #bookmeter

posted at 22:12:34

【ブロッケンブラッド7 (ヤングキングコミックス)/塩野 干支郎次】ブロッケンの血族というエクスキューズが作中でさえ無視されてきた。 http://bit.ly/l6zQQU #bookmeter

posted at 22:11:40

| | コメント (0) | トラックバック (0)

買ったもの

1.『リューシカ・リューシカ(2)』 安倍吉俊 スクウェア・エニックス
2.『生徒会長の××はまったくもってけしからん ほうそうぶ2(2)』 宮沢周 スーパーダッシュ文庫
3.『魔弾の王と戦姫(1)』 川口士 MF文庫J

買った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.23

買ったもの

1.『ブロッケンブラッド(7)』 塩野干支郎次 少年画報社
2.『セレスティアルクローズ(2)』 塩野干支郎次 小学館
3.『シドニアの騎士(5)』 弐瓶勉 講談社
4.『げんしけん(10) 二代目の壱』 木尾士目 講談社
5.『CLOTH ROAD(10)』 脚本:倉田英之 漫画:okama 集英社
6.『銃夢 Last Order(16)』 木城ゆきと 講談社

買った。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2011.05.22

『わたしと男子と思春期妄想の彼女たち(1)リア中ですが何か?』

61mbxflvrl__ss500_

わたしと男子と思春期妄想の彼女たち(1)リア中ですが何か?』(やのゆい/ファミ通文庫)

この作品の描写を見ていると、時折、はっとさせられる鋭さがあって、非常に興奮させられた。全体的に見て、基本的にはゆるい作り(をしているように見える)なのだが、事実、それほど綿密に構成されている作品ではないにも関わらず、ところどころにおける描写の意外な視点に、「なるほど、そのような認識の仕方があったのか」という意外性があるのだ。

僕がこの作品にいちばん素晴らしいと思ったのは、主人公の造型である。主人公が中学一年生という年齢設定がまた良い(なお、もうこの年齢の記憶など涅槃の彼方にある自分にとっては、ほとんと外国人か未来人と変わらないレベルに遠い存在ではあるので、これが”リアル”なのかは考慮しない)。情緒においても思考回路についても未熟な存在である主人公が、恋と言う感情を知っていくと言う過程に、作者独特のおもしろい手触りが感じられる。子供時代の関係を引き摺りながら、恋と言う感情についてもはっきりとした輪郭をつかめていない。けれど、恋に恋する感情はある。そのような、非常にふわふわした女子中学生の思考が描かれていて、これは自分の中のどこをひっくり返しても出てこない作品だと思うのだった。

このふわふわした感触は、少女小説を読んだときの感触とも、また異なっている。少女小説の女の子は、もうちょっとヒロイックで生っぽい感じがするのだが、この作品の主人公は、さらにふわふわした、甘やかな印象がある。少女小説の主人公から、生っぽさを抜いた感じ、という形容は正しくはないが、そんな感じだ。これが中学一年生という年齢から来るものなのか、それ以外の意味があるのかはわからないが……。わからなくてもいいような気もする。

この、情緒も思考回路も未熟な主人公の”恋以前の気持ち”というものが、クローズアップされている。恋、だと主人公は思っているけれど、実のところ、そこまではならない、はなはだ微妙な感情。それゆえに、揺らぎがあり、どのように振れるか、予測不能なところがある。その、いい加減というか、うつろいやすい、輪郭の曖昧な気持ちの描写に、すごく鋭いものを感じるのだ。もっとも、作者はわりと天然で書いているようにも思うので、これからどうなるかは分からないのだが、それゆえの面白さも確かにある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年5月22日のつぶやき

【棺姫のチャイカII (富士見ファンタジア文庫)/榊 一郎】最後の決着の着け方が、どうにも自分の中で理路が通せなくてもどかしい。 http://bit.ly/msfKha #bookmeter

posted at 18:11:21

【東京レイヴンズ4 GIRL RETURN & days in nest Ⅰ (富士見ファンタジア文庫)/あざの 耕平】動作と説明が多く、描写が少ない文体に、なかなか慣れない。 http://bit.ly/lvuYnm #bookmeter

posted at 18:09:08

【STEEL BALL RUN スティール・ボール・ラン 23 (ジャンプコミックス)/荒木 飛呂彦】この作品には最後までどす黒い悪はいなかった。 http://bit.ly/jKB1iT #bookmeter

posted at 18:05:54

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.21

『メグとセロンVI 第四上級学校な日』

511e8psx6dl__ss500_

メグとセロンVI 第四上級学校な日』(時雨沢恵一/電撃文庫)

時雨沢作品の面白いところは、作品に対する、冷徹と言っても過言ではない、突き放した距離感にある。しかし、突き放した、と形容すると違和感を覚える人もいるかもしれない。メグとセロンの物語は、とても優しく、ほのぼのとした物語ではないか、そのように言う人もいるだろう。だが、優しく、ほのぼのとした物語を描くことと、作品に対して冷徹な距離感を保つことは、必ずしも相反するものではないのだ。

作者の語り口は、非常に平易であり、淡々と、穏やかでさえある。しかし、その穏やかさは、作品に対してどこまでもフラットである。作者自身が物語そのものに対してどのような立ち位置にあるのか、まったく分からないのだ。登場人物たちが喜びを享受していようと、あるいは悲しみにくれていようとも、作者は常に穏やかに、その姿を見つめているだけのように思える。

それは、作者が登場人物たちに対して、不幸になることを望んでいるわけではもちろん無い。同時に、常にハッピーエンドを望んでいるわけでもない。(あくまでも主観だが)正確には、「どちらでもいい」と思っているようだ。だが、無関心であるわけでもない。彼らの喜びがあれば、それはもちろん喜ばしいことだし、彼らの悲しみには、とても哀しいことだ。”しかし”、その上で、喜びも悲しみも、すべては人の営みであり、当たり前にあるものとでも言うような、突き放した感覚が、あるのだ。

喜びも悲しみも、すべてが人間の生そのものであり、すべてを受け入れる。それが、自分が時雨沢作品に共通して感じる”フラットな視線”である。それゆえに、作者の描く物語は、どんなに悲惨な出来事が起ったとしても、どこか穏やかな印象を受ける。それは、いかなる悲惨な出来事であったとしても、それは決して驚くべき、異常な出来事ではなく、当たり前の出来事だからである。そして、いかなるめでたい出来事であったとしても、同じなのだ。どちらも、決して驚くべきことではなく、そして、どちらも同様に世界には行っているのである。

この語り口は、無謬の幸福を肯定しないという意味では、非常に冷酷である。ハッピーエンドの裏にも悲惨さは必ずあるものだからだ。そして、無限の不幸も肯定しないという意味では、どこまでも優しい。この世の悲惨さの影には、必ず人間の優しさもあるはずだからだ。このように、希望と絶望、それぞれを別々に語るのではなく、希望と絶望は表裏一体であることを、穏やかに受け入れている語り口には、不思議な切なさとはかなさがあるのだ。

作者の、残酷さも優しさも内包したそのような語り口を、自分はとても好ましいものと、思うのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年5月21日のつぶやき

僕が子供が嫌いなのは、子供の無自覚さが、己の無自覚さを糾弾するからだ。僕がTVを嫌いなのは、TVの無責任さが、己の無責任さを自覚させるからだ。僕が批評家が嫌いなのは、批評家の傲慢さが、己の傲慢さを理解させるからだ。嫌いなものと言うのは、自分自身の嫌いな部分の反映が多いように思う。

posted at 11:43:53

どうも自分は世の中に嫌いなものが多すぎるので、おそらく、それだけ自分の嫌いな部分も多すぎるのだろう。従って、自分の嫌いな部分を許すことが出来れば、世の中の嫌いなものも少なくなっていくはずだ。これでも、十代の頃よりは、たしかに嫌いなものは少なくなっている。

posted at 11:49:15

世の中の嫌いなものの多くは、自分自身の嫌なところの反映であると気がつくこと。それだけで、おどろくほど多くのことが許せるようになる。自分が直せてないのに、世の中にばかり変化を求めるのは、さすがに虫が良すぎるというものだ。

posted at 11:53:46

これで、自分も直すから世の中も変われ、と考えられる人は、政治家か革命家の素質があるだろう。世の中が変わったら自分も変えるという人はテロリストになる他あるまい。そして、自分が直せないから世の中も変わらないでもいいや、という人はニートの素質がある。僕は最後だ。

posted at 11:57:20

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2011.05.20

2011年5月20日のつぶやき

【キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)/赤月 カケヤ】ライトサイコサスペンスはガガガ文庫のお家芸となりつつあるな。 http://bit.ly/k4eR5l #bookmeter

posted at 19:11:21

【こうして彼は屋上を燃やすことにした (ガガガ文庫)/カミツキレイニー】まさか一冊で三人分の「そげぶ」をやってしまうとは思わなかった。 http://bit.ly/iQouW9 #bookmeter

posted at 19:12:30

【蓮華君の不幸な夏休み〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)/海原 育人】この作者の書くものには同時代、同世代感と言うべきものを強く感じる。安堵感さえ覚える。 http://bit.ly/kyJElT #bookmeter

posted at 19:15:23

競争原理に晒されていない組織は、難局の際に馬脚を現すものなのだな。東電しかり、相撲協会しかり。相撲協会は改善案をほぼ無効化してしまったが、あれをファンが見たらどう思うか考えたのだろうか。それとも、あれを見てもファンは相撲協会を支持してくれると思っているのだろうか。傲慢極まりない。

posted at 20:23:34

電子化を進めてゆく上で、意外な難所が発生した。ライトノベルの問題である。イラストをきちんと読み込もうとするとグレースケールで行わなければならず、本文とイラストを別々に読み込まなければならない。しかも、紙質によっては裏写りすることがある。あああ、面倒くさい……。

posted at 20:26:08

神林長平先生の著作を電子化していると、ああ、ついに時代が追いついたな……と、感慨深くなる。

posted at 20:36:57

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.19

『花咲けるエリアルフォース』

51ld7gtbeol__sl500_aa300_

花咲けるエリアルフォース』(杉井光/ガガガ文庫)

非常に俗悪な形容をすると、萌える天皇ならば愛国心が刺激されますよね、と言う話だろう。つまり、国のために戦う、ということに興味も理解もないニート気質の主人公が、大義のために戦うために必要なものは何か、と言う物語になる。

自分もそうなのでわかるのだが、国のために、大義のために戦え、と言われても、まるで実感が沸かない、そういう人間はいるのだ。多くの人の未来のために戦え、と言われても、その正しさは理解できても動機にまではならない。自然なナショナリズムは現代においては動機にはなりえないのではないか。

もっとも、これは東北大地震の後では、多少、状況が異なるのだが。あの地震は確かに悲劇ではあったが、同時に、素朴な愛国心というか、困っている人を助けたいと言う気持ちはわりと普通に沸いてくるものだ、ということを発見する契機にもなったと言える。たとえそれがミーハーであっても、一時の感情であったとしても、誰かが困っているのならば、なにかしら出来ることをしたい、と言う気持ちは、誰にでもあるのだ、ということがわかった。今後、フィクションを描くにあたって、こうした感情の動きは、無視することは出来ないであろう。本当に誰かが苦しんでいるとき、それに”同情しない”ことの困難さを踏まえないといけないから。また、セカイ系のあり方は意味が問われるところかもしれない。

話が逸れた。作中におけるナショナリズムの話だ。

この作品の主人公は、杉井光作品における男主人公の常として、ニート気質が強い。自分の殻に閉じこもり、ごく個人的な動機のもとに行動する。自分の感情を意図的に鈍磨させることで、世界と対峙している。そんな主人公が、国家と国民の未来のため”敵”と戦うことになる。”敵”と言っても、別に異世界人ではなく、同じ人間でしかない。しかし、そんな相手と殺し合いをする事実に、主人公はまったく納得が出来ないでいる。国のためだとか、国民のためだとか、そんな理由では殺し合いは肯定出来ない。なにしろ、”自分のため”でさえ殺し合いを肯定出来ないのだから、何をか言わんや、だ。

ならば、殺し合いが出来る、”人間を殺す”ことを肯定できるのはどんな時か。それは極めて個人的な動機のためである(なお、ここに”自分”は含まれない。自己否定の強いニートには、自分とは最大の外部だ)。すなわち、”好きな女の子のため”だ。もっとも身近で、もっとも大切な異性のためであれば、彼は戦える。それがもっとも個人的動機として、行動を起す理由になる。その意味では、典型的な”君と僕の物語”と言えよう。

だが、そこで作者はもう一つ捻りを加えてきた。それが”萌える天皇”だ。つまり、この作品においては”好きな女の子が国家イデオロギーの体現”となる。彼女は国家そのものであり、彼女のために戦うことは、国家のために戦うことと同義であるのだ。好きな女の子が国家だとすれば、そこで主人公の行動は愛国心と区別はつくまい。もちろん、本人の気持ちはまったく異なるのであろうが、結果としてはさして変わらないものとなる。萌え国家万歳、というわけだ。

ちょっと俗悪な読み方をしてしまったけれども、自分は、この作品は、個人的動機の発掘の物語なのだと思う。何をするにも興味がわかない、誰かのために戦うのも面倒くさい、殺し合いなんてどんな理由があっても冗談じゃない、そして、国家なんて言われても実感がわかない。ただ、そういう人間であっても、別に動機も持ちたくないわけじゃない。自分が誇りを持てる生き方をしたくないわけじゃない。ただ、多くのことに”興味が沸かない”だけなのだ。誰かのために手を汚すには、あまりにも執着が足りないのだ。だが、それでも自分の実感が持てるもののために戦いたい、と思ったとき、好意を持った女の子のために戦うことを選択する。そして、その女の子を通じて大義に繋がるとき、すべてに興味を持てなかった主人公が、ついに大きな物語に接続することが可能となる。少なくとも、そう、錯覚できる。

それは、ニート気質である主人公が、大きな物語につながるため、”恋愛”を経由することで為しえた、と言うことでもあるのではないか、と感じられるのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年5月19日のつぶやき

twitterを書くようになってから、ブログに雑記が書けなくなってしまった。それはそれでいいのだが、twitterは、すぐに書いたものが流れてしまうのが問題。後で見返すのが面倒くさい。そこで、試験的にブログに貼り付けてみることにする。これを雑記代わりにすれば、一石二鳥だ。今回はそのままコピペしてみたが、もうちょっと他に良いやり方がないか探してみる。

【結界師 34 (少年サンデーコミックス)/田辺 イエロウ】最終決戦でありながら良い意味で淡々とした雰囲気がたまらない。 http://bit.ly/kOYC2F #bookmeter

posted at 20:57:33

【史上最強の弟子ケンイチ/43 サウンドロップ付き限定版! (小学館プラス・アンコミックスシリーズ)/松江名 俊】ちょっとこの巻とか傑作じゃないの?引き戻しも、秋雨ならしょうがないな。 http://bit.ly/kQSJJE #bookmeter

posted at 20:56:36

【CD付き初回限定版 魔法先生ネギま! (34) (講談社キャラクターズA)/赤松 健】最重要戦力が行動不能になって、それでも現戦力でやりくりしようとするのが熱い。 http://bit.ly/kyxCnk #bookmeter

posted at 20:55:01

【あるいは現在進行形の黒歴史4 -リトル・ヴァンパイア☆が俺の嫁?- (GA文庫)/あわむら 赤光】もう一人天使がいたのを素で忘れておった……。 http://bit.ly/iFCXXC #bookmeter

posted at 20:53:38

【もののけ草紙 4/高橋 葉介】あとがき読んだ後だと、第一話が切な過ぎる……。一人立ち出来てないじゃないか。 http://bit.ly/jCz2ds #bookmeter

posted at 20:49:14

【もののけ草紙(3)(ぶんか社コミックス)/高橋 葉介】夢幻と出会う手の目が幼いのは、夢幻は女泣かせなので、そういう関係にはしない、て事かな。 http://bit.ly/kiLAqT #bookmeter

posted at 20:48:13

【マップス ネクストシート ⑫ (フレックスコミックス)/長谷川 裕一】コピーとオリジナルの違いの話を真面目にやるというのも偉いものだ。 http://bit.ly/k4IswI #bookmeter

posted at 20:46:25

【アリョーシャ! 1巻 (ヤングキングコミックス)/近藤 るるる】このままアリョーシャはどんどん堕落して普通の女の子になっていけば良いよ。 http://bit.ly/kHz7iG #bookmeter

posted at 20:43:52

Jコミには自分も申請(って言うの?)したい気持ちがないでもない。っていうか、これ、自分のような人間が率先して協力すべきPJかもしれぬ。

posted at 20:26:13

バラエティ番組的なものを嫌悪するようになってから十数年。あの辺は、事実でないことを、さも事実のように語るのがいやなんだ。現実とフィクションの区切りがついてないんだよね。断片的には事実を散りばめているから、余計に見極めが難しい。切分能力の未発達な子供には見せたくないものNo.Iだ。

posted at 20:19:36

| | コメント (0) | トラックバック (0)

買ったもの

1.『蓮華君の不幸な夏休み(2)』 海原育人 Cノベルスファンタジア
2.『罪火大戦ジャン・ゴーレ(1)』 田中啓文 Jコレクション

体がだるい。昨日、暑くてお腹を出して寝たのはさすがに良くなかったか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.18

買ったもの

1.『アリョーシャ!(1)』 近藤るるる 少年画報社
2.『マップス ネクストシート(12)』 長谷川裕一 ソフトバンククリエイティブ
3.『もののけ草紙(3)(4)』 高橋葉介 ぶんか社
4.『神曲奏界ポリフォニカ ウィズアウト・ホワイト』 高殿円 GA文庫
5.『あるいは現在進行形の黒歴史(4) -リトル・ヴァンパイア☆が俺の嫁?-』 あわむら赤光 GA文庫
6.『北の舞姫 芙蓉千里Ⅱ』 須賀しのぶ 角川書店
7.『キミとは致命的なズレがある』 赤月カケヤ ガガガ文庫
8.『こうして彼は屋上を燃やすことにした』 カミツキレイニー ガガガ文庫
9.『魔法先生ネギま!(34)』 赤松健 講談社
10.『史上最強の弟子ケンイチ(43)』 松江名俊 小学館
11.『結界師(34)』 田辺イエロウ 小学館

電子化しているのに、本を購入していては減らないではないか、と母親に言われてしまった。確かにそのように思えるが、電子化していなかったとしたら増え続けているだけのところを、押えているという意味があるのだ。それ全体で見れば減っているし、大丈夫だ、たぶん。

なんか今日は酒を飲みすぎて眠くなってしまった、ので、更新はお休みです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.17

『ゼロの使い魔(20)古深淵(いにしえ)の聖地』

51ipuha7uil__bo2204203200_pisitbsti

ゼロの使い魔(20)古深淵(いにしえ)の聖地』(ヤマグチノボル/MF文庫J)

物語としては非常に重要なところである。最後の使い魔が誕生したこと、”扉”の所在が明らかになったことなど、今までの伏線が一気に花開いたと言った印象だ。とりわけ重要っぽいのが最後の使い魔の存在だろう。随分前からデルフリンガーが何度も言及していたり、ロマリアの教皇主従の最終目標に非常に大きな役割を果たすらしかったり、最後の使い魔はものすごく悲劇的なものらしいということが伝聞されていたり、とにかく伏線ばかり張られてきたものが、ようやく明らかにされると思われる。と言っても、具体的な内容は最終盤まで持ち越されるのだろう。このあたりの謎は、おそらくゼロの使い魔という物語そのものに関わってくるのだろうし。

ただ、ある程度の推測は出来る。ロマリア側やデルフの発言から考えるに、おそらくは”犠牲”に関係することだろう。大を救うために小を犠牲にするかどうか、という選択肢がサイトの前に提示されることになるはずだ。なぜなら(たぶんこれはみんなに忘れられていると思うけど)、この物語は、ごく普通の現代の少年であるサイトが、マクロ的な価値観と対峙していく物語だからだ。”みんなのために”自分を犠牲にするということなど、考えたこともなかったサイトが、”ただ一人の女の子のため”ならば、自分の命と引き換えにしても良い、そのような物語だった。

ゼロの使い魔という作品において、”人が人を救うこと”については、ひどくシビアなものとなっていることは、いまさら言及すべきことではない。実のところ、この作品の中で、何かを救うことは、常に犠牲の上に成り立っている。なんの犠牲もなく、誰かを、あるいは何かを救えたことは、実は物語中にほとんど存在しない。誰かを救うことは誰かを救わないことだし、誰もを救えたときは、自分が救われないことになる。そうした冷酷な現実を踏まえた上で、それでも己に恥ずかしくない生き方をしようとしたとき、問われるのが”正しさ”の所在となる。「何が正しいのか?」という問いに対して、自分なりの答えを用意しておくことが必要になるのだ。

例えば、ロマリア側の主張は実に明快だ。人間の未来のために、エルフたちに犠牲になってもらう、すなわち絶対多数たのめに少数を犠牲し尽くすというもの。これは正しいか間違っているかで語るのではなく、これを正しいと認める人々が多く存在するであろう、という事実をもって語らなくてはならない。多くの人に支持されている以上、これは一定の正義が担保されている。ロマリアの教皇主従は、合理的に、正しい選択をしている、と少なくとも自分たちは確信しているのだろう。

おそらく、サイトたちに今後襲い掛かってくるのは、このような”正しさ”である。何かを助けるために、何かを犠牲にしてくれ。今後、彼らの”敵”はそのように持ちかけてくるはずだ。そして救われないのは、おそらく”敵”は、サイトたちが”守るべきもの”でもあるだろうということ。大切な何かを助けるために、大切な何かを犠牲にしなくてはならないという選択が、サイトの前に突きつけられることになるはず。この正義を受け入れたとき、犠牲にすべき”何か”が、己にとってなによりも大事なものであったとしても、それは犠牲にしなくてはならない。それはたぶん正しいことのはずである。少なくとも、少数の犠牲の上に立って、多くの人の未来を救うことになるからだ。それは、公平に見て、正義であろう。

しかし、そうした”正義”に常に抗ってきたのも、サイトたちであるのだ。サイトは、好きな女の子を助けるために数万の軍勢に立ち向かい、しかも、相手を殺さなかった。また、国家間の問題として犠牲にされかけたタバサを、立場を捨てて救った。そのどれもが、己をギリギリまで削ってなしたことである(一度は死に、あるいは己の立場のすべてを捨てた)。結果的に、彼らの決断は最良の方向に向かったものの、いつでも最悪に振れる可能性は、あった。それでも、多のために、少を犠牲にすることに、抗ってきた。もちろん、それによって多を見捨てることもしなかった。すべてを救おうと、どちらも助けようと、彼らは抗ってきたのである。

おそらく、この物語の最終盤において、”多数の正義”と”サイトの正義”が対峙することになるのだろう。そこで行われることこそが、サイトたちが今まで積み上げてきたものの、集大成となるはずだ。どちらを選んでも、犠牲を出すという、その選択をさせる構造そのものに対する抗いが、そこには必要となる。ここは非常に難しい問題であり、容易に答えを出すことは困難であるが、ヤマグチノボルがどのような結末を見せようとするのか、見守りたいところである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.16

『はるかかなたの年代記(2) 荒ましき驃騎兵』

51t99kfhwpl__ss500_

はるかかなたの年代記(2) 荒ましき驃騎兵』(白川敏行/スーパーダッシュ文庫)

数多い登場人物の扱いが非常に巧みであると感じる。敵と味方を合わせると10人以上のキャラクターがいるのだが、そのすべてに対する作者の気の使い方が非常に丁寧なのだ。ユウやカティアと言った主人公級、あるいはメインキャラだけではなく、今回の敵役の面々に至るまで、作者はきちんと掘り下げて描いているところが好ましい。ユウが自分のコンプレックスと格闘しつつもさまざまなヒロインたちと交流を深めているように(なんたるリア充か)、カティアもまた自分の生まれに苦悩し、クリスは幼馴染(本人は気がついていない)とのフラグを立ててはへし折り続けているように、キャラクターの関係を丁寧に描いている。また、敵側にも理由があり、主人公たちとの交流を経て、彼らが背負う苦悩なども過不足なく描かれている。ただ背景を描くだけではなく、その背景を軸に敵役たちの人間関係模様まで描いているあたりは、これは非凡な手腕と言ってもよいのではないだろうか。それだけでも群像劇として成立しているし、それをキャラクター小説的なキャラクターの魅力を保持したまま、なによりもこのページ数で処理しきっていると言うのは、かなりすごいことのように思う。

話が脱線してしまうが、群像劇と言うのはエピソードを積み上げる形式となるので、いちいちキャラクター全員のエピソードを描いていくと、多くの場合、ページ数がえらいことになる。それに、物語も冗長に陥る可能性も高い。そこで、エピソードを簡略化しつつ、かつ、読者に魅力を伝えるようにするのが群像劇の肝ではないか、と言うのが私見だ。この考え方に立って、この作品を読んでみると、キャラクターのエピソードの作り方に技巧を凝らしているのが良くわかる。主人公側のエピソードを、一つのエピソードに統合することによって、それぞれのキャラクター描写に繋げていくという方法は、なるほど上手い、と感嘆せずにはいられなかった。

個人的に白眉として、敵役たちの描写を上げたい。敵側も決して一枚岩ではなく、彼らにもさまざまな事情があって、必ずしても最善手が打てない状況や、彼らの中での対立と友情の物語など、よくぞここまで一巻だけのぽっとでの敵キャラにさえ、これほどのキャラクター性を描写できるものなのかと思わされる。先ほどの群像劇を描くエピソードとしても、物語の中で、主人公側と絡ませることによって生み出しているのだ。単にキャラクター性を付与するのではなく、描写することで生まれる強固な説得力は、この物語全体を、骨太なものとしているように思えるのである。その結果として、この物語には、主人公級の物語を背負っているキャラクターが三人もいると言う状況が発生している。このままでは、三人の物語を決着させる必要があると思われるが、おそらくそこも作者の射程内に入っているのだろう。彼らの物語が、どのように影響しあい、どのような決着を見せるのか、非常に期待しておきたいと思うのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.14

『ベン・トー(7) 真・和風ロールキャベツ弁当280円』

51vqglfkbhl__ss500_

ベン・トー(7) 真・和風ロールキャベツ弁当280円』(アサウラ/スーパーダッシュ文庫)

槍水先輩はほとんど登場しないものの、実質的には槍水先輩が物語の中核にいるようだ。敵の狙いは槍水先輩への復讐、ウィザードの目的は槍水先輩を守ること、佐藤の目的は槍水先輩に近づくこと。佐藤は自分がモテモテだとか言っていたが、真のモテは槍水先輩であろう。魔性の女にもほどがあると言うものだ。本人に自覚がまったくないあたりが本当に魔性である。

以前から睨んではいたところの、槍水先輩とウィザードのラインが突然、なんの劇的な流れもなく前面にでてきてしまったことにやや動揺した。てっきりもっともったいぶって明らかになると思っていただけに、さらりと流されてしまったことで、先の展開が読めなくなってしまった。はて、ウィザードと佐藤はふたたび対決するものとばかり思っていたが、現状では、普通に”狼”としての接点しか生まれないぞ。槍水先輩側のアプローチがないので、まだいくらでも展開は動かせるとは思うが、あまりにも因縁がなさすぎだ。これはすこし自分の中で展開を考え直した方が良いのかもしれない。

ただ、かつてのHP同好会の崩壊の真実を、かつての関係者だけの内輪でケリをつけようとしたウィザードに対して、それに自分も無理矢理にでも踏み込もうとした佐藤との関係は、なかなかに興味深いところだ。二人の関係は、師匠と弟子とも、ライバルともつかないところがあって、そこに槍水先輩が加わることでよくわからないことになると思うのだが、そのあたりは今後の期待と言うところだろうか。

ウィザードと言えば、いままでさんざん勿体つけていたわりには、再登場は実に地味なものだった。まあふらりとスーパーに現れるだけと考えれば、劇的であるのもおかしいのだが。むしろこの劇的でなさは、ベン・トーらしい、と言えなくもない。彼には彼の生活があって、半額弁当は、むろん、彼にとって重要なアイデンティティーではあるとしても、半額弁当とは関係のない事柄もある。そういうことなのだろう(むろん、だけれども、と言う言葉がついてくるが)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.13

『むやみに分裂!! 邪神大沼(6)』

51lowckcull__sl500_aa300_

むやみに分裂!! 邪神大沼(6)川岸殴魚/ガガガ文庫)

あらすじを書こうと考えるだけで徒労感に襲われるくだらなさは一読の価値あり。ここまでどうでもいい内容で一冊を書けるというのはすごいと思う。キャラ萌えもストーリーも無く、ひたすら痙攣的なギャグを積み重ねていくと言う極めて困難な道を進んでいる作者には畏怖の念を覚えるが、それを6巻まで良く続けたものだ。さすがに良くも悪くも読者である自分も慣れてきてしまっていて、のたうち回るほど爆笑、と言うのはないが(・・・よく考えたら最初からそういうのは無かったような気もする)、ところどころで発作的な衝動にかられるぐらい面白い。

表紙が酷かったりするけれど、これもまた作者なりのギャグであるのは明白であるが、それにしても編集部もぐるになってネタの仕込み方はたいしたものと感心してしまった。表紙だけではなく帯まで凝っている。ここまで悪乗りが許される立ち位置と言うことなのだろう。決して、作者側が破れかぶれになっているわけではない、と思う。

内容面では、拝金主義の権化と化した露都まわりの話が良かった。生徒会長になったことで常軌を逸したレベルで私腹を肥やそうとする露都の姿は、もはや哀れとか醜いとかそういうレベルを超えている。人間として最底辺、ここまでは落ちたくはないレベルで描かれているのが容赦ない。最初は、まあ無理の無いレベルで(もないが)私腹を肥やしていた露都だが、家計が本格的にやばくなってきたことで、ついに己の人権とか尊厳とかを切り売りするようになり、それだけならまだしも学校、ひいては生徒そのものを切り売りするレベルになる。いちおうこの人も最初は勇者だったはずで、それに見合ったキャラだったはずなのに、それがここまで落とすことが出来る作者には敬意を表したい。もう二度と這い上がれんぞこいつ。

あと、さなえの話もよい。実はさなえ関連の話は、自分はうっかり感動してしまって、まったく年を取ると感動しやすくなってしまって困ったものだ。キャラクターとしてはユルイだけのキャラなのでどうと言う事はないのだが、いつか消えてしまうだけの自分を受け入れて、学園祭を楽しんでいると言うのはなかなかあざといものがあると思うのだが、最後の手紙に参ってしまった。この作品のことだから一体どんな落とし方が待っているのかと思ったところに食らってしまった。かなり意外な変化球ではあって、確かに肩透かし系のギャグとして笑えないでもない落とし方ではあるが、一方でものすごく真剣な行為であるようにも思える。事前にメイド喫茶で伏線が張ってあるのも心憎い。それゆえに、そこから導き出される心情、と言うものを自分で構築してしまったために、勝手に感動してしまったのである。

この感動の仕方は、本当に”勝手に”感動してしまっただけなのだが、人間、感情の流れを線として繋げてしまうことで(本当にそうであるのかは分からないにも関わらず)感動してしまうものなのだから、ままあることである。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

買ったもの

1.『魔法少女おりこ☆マギカ(1)』 ムラ黒江 芳文社
2.『魔法少女かずみ☆マギカ(1)』 原作:平松正樹 画:天杉貴志 芳文社
3.『月夜のとらつぐみ』 笠井スイ エンターブレイン
4.『ジゼル・アラン(2)』 笠井スイ エンターブレイン

買った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.11

『人類は衰退しました(6)』

51z1fjvm2rl__ss500_

人類は衰退しました(6)』(田中ロミオ/ガガガ文庫)

もはや日常系SF(しかし舞台は非日常)となっている人衰シリーズだが、今回のようにアイディアだけで回す話はむしろ技巧的であり、中編ながらも作品としての密度は高いようにも思う。本来は長編になりそうなネタを、下手に事件を起さずに収束させているからだ。そのために至極あっさり物語が終わるように感じられるが、それによってアイディア自体を際立たせると言う意図もあるのかもしれない。まあそうでないかもしれないが、自分の中ではそのように思っておくと「俺は分かっているぜ」感が刺激されるのでそう思っておく。

全体を語るのは面倒なので話別感想。

「妖精さんたち、すかいはい」

これはヤバイ。ものすごくヤバイ。何がヤバイって、これは完全にブラック企業の話なのだ。でかいことばかり言って現実的な手続きを省みないトップ。それをなんとか実現するために地獄のような労苦を味わう中間管理職。優秀な管理職が実現可能なスケジュールを作ってしまったがゆえに完全に無茶振りをされる現場。トップ以外は全員が自分に出来ることを誠実にやり遂げようとしているだけなのに誰も幸せになれないという構造的欠陥。もうだれがどう見たってブラック企業の形態そのものである。あまりの洒落にならなさに、一見したところほのぼのとしてさえ見えるコメディでありながら、読みながら震えが止まらない。”私”の陥る八方出口なし、な状況は自分の身を置き換えてみるだけで吐き気がしそうだ。そして、人類には出来ることと出来ないことがあるため、出来ないことがすべて妖精さんにのしかかっていくと言う展開もブラックにすぎる。妖精さんたちが、最後にすべてを解決するために”歯車”に変身するとか、もうブラックユーモアの域を超えている。ただのブラックだこれ。おそらく田中ロミオの実体験があからさまに反映されていると思うけど、実体験を小説としての再構成が甘く、まったくそのまんまなのが逆に田中ロミオらしい。この作者はこういういやらしいことをするんだ。露出的、露悪的。正直、悪い意味ではなく作者の肥溜めみたいな話だったけど、まあこれでも小説としてはきちんとしているのだから、文句のつけようも無い。

「妖精さんたちの、さぶかる」

これも本当にろくでもない話だ。と言うか、作者に現実を物語に咀嚼しようと言う気がまるでないのがいっそ潔い。ようするに、漫画/同人業界を巡る現実をそのまま書いているだけなのだ。現実に起るさまざまな業界話を、そのままSFガジェットを費やすことで再現している。と言いつつ、自分はそれほど漫画/同人業界に詳しいわけではないが、それにしたってあるあるネタが多すぎると言うものだ。だが、そうしたあるあるネタを、そのままでは物語として成立しないので、多少ぼやかすことによって物語として成立しているところは楽しい、のだろうか。あまり笑い事ではすまない内容をそのまんまやる事で笑いを取る。個人的にその類いはあまり質の良い笑いではないと思うが(何かを貶して笑いを取るのは質が高いとは言えない)、この場合は特定の個人を貶めているわけではないし、誇張はあれども嘘は書いているようには見えないので、苦笑交じりの笑いは出る。ネーム掲載は分かっていても笑ってしまう。ひどい話だ。

さて、二編の作品を読んだ結果、基本的にあまりにも”酷い”作品である(これは貶しているわけではないので念のため)。あまりにも直裁かつストレートに毒をぶちまけている。しかし、これは技巧的ではないと言う事は意味しない。物語としては充分に仕掛けがしており、登場人物もバタバタと動きを見せて、妖精さんたちはホエホエと戯れると言う基本線は守られている。その上で、あまりにも実も蓋も無い話をそのまんま語ってしまうところがあるのだ。このあたりに作者の性格の悪さが滲み出ているようで、非常に好感が持てるのだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.10

『クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーⅠ』

51ynuffpbvl__ss500_

クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーⅠ』(五代ゆう/ハヤカワ文庫JA)

原作ゲームはプレイしていないので、内容の差異については述べない。しかし、アトラスのゲームであるのならば、おそらく主人公にキャラクターが付与されないタイプの作品であるのは容易に想像がつく(調べもした)。そのあたりを考慮して考えると、この作品は、きちんと主人公サーフの物語になっている点は面白いところであるように思う。

主人公が喋らないタイプのRPGと言うのは、プレイヤーが主人公と同化するタイプのRPGであり、プレイヤーは主人公として物語に関わっていくことになる。プレイヤー=主人公であるのならば、主人公のパーソナリティと言うのは存在すると、プレイヤーの同一化を阻害してしまうため、避けられる傾向にある。

従って、主人公が喋らないタイプのRPGをノベライズする時には、色々と苦労することが多いように思われる。これまで真っ白だった部分に筆者の手でキャラクターを付与する必要があり、しかし、あまりにも勝手なキャラクター性を付与してしまっては、今度は読者から拒否反応を受けてしまうことになる。「こんなのあの作品の主人公ではない!」など。これはもうどうしようもないことである。なにしろ喋らないタイプの主人公はプレイヤーによって想像される幾通りものキャラクター性が付与されているため、すべてを満足させることは不可能なのだ。それゆえに多くのノベライズではあまり過度な肉付けはされないまま、希薄なキャラクターとしてノベライズされてしまうことになる。個人的な感覚になってしまうが、そのような希薄性を維持したキャラクターにはあまり興味をそそられないのが正直なところだ。

だが、このクォンタムデビルサーガは紛れも無くサーフの物語である。しかし、サーフ自身はそれほどに強い個性を持っているわけではない。むしろエンブリオンのメンバーの中では一番地味なキャラクターである。つまり、先ほど述べた希薄なキャラクター性の持ち主であるのだ。それでも彼の影が薄いという印象は自分はまったく受けなかった。むしろ尖ったところの無いゆえに、彼の心の動きが滑らかに語られており、一つの作品としてきちんと消化されている。そこに非常に感心したのだった。

この作品はノベライズではなく原典(ゲームを小説化したのではなくこの小説をゲームにした)であるという事情もあるだろうが、それ以上に、五代ゆう先生がキャラクターを描くタイプの作家ではないと言うところが大きいのだろう。そもそも、彼女が描く物語の中で尖ったキャラクターはほとんど出てこない。むしろ内面的にはどこにでもいる普通の、と言うよりもステレオタイプなキャラクターが多い。だが、作者の非凡なところはステレオタイプな登場人物たちが絢爛にして幻想的な物語を経過することによって変化していく心の動きが非常に美しいと言う点にあるのだ。それゆえ、ステレオタイプであると言う点は弱点にはならず、むしろ読者にとって共感しやすい登場人物となりえるのである(自分が思う特徴はそれだけではなく、彼女一流の幻想的なイメージ喚起力も上げられるのだが、一巻においてはまだそれほど全面に出ているわけではないので、次巻以降の感想にて言及したい)。

サーフと言う主人公は今作の中においても非常に淡白なキャラクターではあるのだが、それでいながら、と言うより、だからこそその内面の描写が無理なく描かれている。感情もなく淡々と殺し合いを続けていたサーフたちが突然に得た感情に戸惑い、苦しみ、それゆえに大切なものと考えていく過程が読者に感情移入しやすい形で描かれているのだ。ここはゲームと小説と言う媒体の違いにおいてもっとも大きなところであるだろう部分だが、プレイヤー=主人公と言う図式が崩れ、主人公にパーソナリティを付与しつつも感情移入を阻害しない。これは意図してと言うよりも五代先生の作劇でやったら偶然そうなっただけと言う気もするのだが、少なくともノベライズ(のような作品群において)珍しい結果に終わりそうな印象があって、興味深いところである。

さて、前置きが長すぎてもはや前置きではなくなってしまった感がある(いつものことだ)。内容についてぜんぜん書いていないのはもう自分でも諦めている。しかし、サイバーな世界観でありながら、独特の豊かさを背景に持つイメージは健在である。完全に”五代ゆうの世界”になっているので、一ファンとして結末まで見届けたい。

追記。物語そのものについては次巻の感想で書こうかと思う。すでに2巻も読んでしまったので、まとめて感想と言う事にしても良かったのだが、ごらんのありさまだった。2巻は別に書くことにしよう。まあそっちもちゃんと感想を書けるか分からないのだけれど(と、一応予防線を張っておく姑息さ)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

買ったもの

1.『マルドゥック・フラグメンツ』 冲方丁 ハヤカワ文庫JA
2.『アトリウムの恋人 』 土橋真二郎 電撃文庫
3.『ストライク・ザ・ブラッド(1)』 三雲岳斗 電撃文庫
4.『俺の妹がこんなに可愛いわけがない(8)』 伏見つかさ 電撃文庫
5.『酸素は鏡に映らない No Oxygen,Not To Be Mirrored』 上遠野浩平 講談社ノベルス
6.『虚構推理 鋼人七瀬』 城平京 講談社ノベルス

買った。つーか、『酸素は鏡に映らない』は最初からこっちで出してくれよ、と思わないでもない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.09

『神様のメモ帳(6)』

51vjfltjnul__ss500_

神様のメモ帳(6)』(杉井光/電撃文庫)

死せる孔明、行ける仲達を走らす、とはちょっと違うがここにはいない、ただ一人の男に登場人物すべてが右往左往する話である。これは別に悪口ではないが(しかし、このような事を書いている時点で後ろめたい気持ちがあるのは明白である)、エモーショナルな話を書くことが多い杉井先生の作品にしてはかなり男臭い作品となっている。男臭い、と言うよりも、男性的と言った方が良いのかもしれない。不器用で無骨で義理と人情で痩せ我慢でハードボイルド。とりあえず単語を並べてみたが、この辺りに近縁関係のありそうな、そういう男性的な作品なのである。

この男性的な感覚は、ミンさんの父親である花田勝(とある力士と同名だが、無論のことなんの関係もない、はずだ)の存在が大きいのだろう。と言うよりも、冒頭ですでにナルミがこの物語は彼の物語である、とはっきり明言しているので、全体のカラーがいつもと異なるのは当然とさえ言える。あの冒頭の断りは、いつもとは違うことをしますよという作者からの宣言であったようにも、読み終えた後には思える(邪推だろう、がそれは別にどうでも良い事だ)。

この花田勝と言う人物は、ほとんどセリフもなく、ナルミたちの前に姿を表すことはなかったが、彼のことを良く知る人物が彼について語ることによってその人物像が垣間見得るようになる、という不思議な登場の仕方をしている。しかし、その一方で、彼の内面については最後までまったく明らかにされることがない。明らかにされたのもあくまでもごくわずかにであって、そこからそれぞれが真意を汲み取る以外にない、と言う徹底ぶりだ。そこから見えてくる姿は、断片的ながらも娘に対して素直に接することが出来ない不器用さと、同じくらいに人生に対して頑固で筋を通す古臭い人間であると言うことがわかってくるのだが、それさえも確かなものではない。語り手がそのように捉えたに過ぎないかもしれないのだ。

ここにはハードボイルド、あるいは男の痩せ我慢とでも言うべきダンディズムの表出がある。花田勝と言う人物はいわゆるライトノベル的なキャラクターからかけ離れた人物であり、とにかく自分の内面を語らない(なんでもかんでも内面を吐露することはライトノベルの宿痾と言っても良い)。意味も語らずただ本人が行った行動があるのみだ。それはある意味、言葉と言うものに対する徹底した軽視とも言える。つまり、言葉にしたものは常に誤解され曲解されるものであると言う認識。言葉にしてしまった瞬間その行動には解釈の余地のない”物語”が付与され、本人の意図とはかけ離れたものとなってしまうことへの疑い。それに対してひたすらに行動のみを積み上げることで自分の中の真実を守ると言う態度は非常にかっこいいと思う。ただしこのかっこよさは、あまり現代的なかっこよさとは言えないようにも思える(異論は認める)。言葉は確かに不完全なツールではあるが、それでも言葉を使うことでした人間は理解し合えないのではないか、言葉を用いないと言うのは自己満足の檻に閉じこもっているだけなのではないか、そのような疑いを挟むことも出来よう。だが、そうした時代遅れな感も含めてハードボイルドの匂いが漂っているのだ。時代遅れと軽んじられてもそれでも自分の生き方を通す。物語の最後で明らかにされる彼の真意(と思われるもの)は、いかにも彼らしく古臭くて堅苦しいものではあるが、それこそがこの物語のダンディズムをより強固なものにしていると言えよう。

そうして考えて見ると、合わせて収録されている短編の”師匠”の存在は非常に興味深い対比があるように思われる。頑固で一徹で不器用な花田氏に対して、粋でお洒落で捉えどころの無い”師匠”は、なんとも対照的だ。おそらく作者の中でのバランサーとでも言うべきものがあって、ハードボイルドな男の生き方と軟派で器用なヒモの生き方のどちらかに偏った称揚には陥らないようにしているようにしている。無論、ハードボイルドは死にヒモは生きていると言う違いはあるだろう(現代とはそのような時代だ)。だが、生きた事と死んだ事に大きな差はあるだろうか?生あるものはいつか必ず死にすべては無に還るのであり、今を生き延びた事で明日死ぬかもれいないことは疑いの無いことだ。生と死に優劣などは存在しない。あるのはどのように生きて、どのように死ぬかと言う過程だけである。ここにあるのは自分の道を迷いなく(かどうかはわからない。見えないだけで内面では迷いも惑もあるだろう。しかし、それでも)自分の道を進んできた男たちが、いかに自分の生と死に向き合うかと言うだけの話である。

この二人の男を並べて語ったことに意味があるとすれば、おそらくそういうところであろう。どちらの生き方にも優劣などない。ただ生きた過程だけがあるのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

買ったもの

1.『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD (7)』 原作:佐藤大輔 漫画:佐藤ショウジ 富士見書房
2.『オイレンシュピーゲル(4)』 原作:冲方丁 漫画:二階堂ヒカル 講談社
3.『コジカは正義の味方じゃない(1)』 小原槇司 メディアファクトリー

買った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.08

『アクセルワールド07 災禍の鎧』

51ygqauksl__ss500_

アクセルワールド07 災禍の鎧』(川原礫/電撃文庫)

川原礫と言う作家は、本当に少年ジャンプ的なものを愛している作家なのだ、と言うことを改めて感じる作品だった。努力、根性、勝利の方程式を、現代的なライトノベルとして見事に翻案している。正直なところ、この方程式を真面目な顔で語られてしまうと、自分のような根性のねじ曲がった中二病患者には、笑止と言わざるえないベタさではあるのだが、そんな読者であってさえ、ここまで緻密に作られてしまっては、見事を言わざるをえない。この作品には読者にとって原始的本能と言っても良い快楽的な要素を、きちんと作品として作り上げているところに見事さがある、というのは毎回書いているような気もするが、あらためて記しておきたい。自分がこの作者を評価する最大のポイントは、ベタを衒いなく描くことができるということなのだ。

今回の少年漫画ポイントは、なんと言っても、主人公の”呪い”と”開放”である。主人公がピンチに陥るのはその後のパワーアップのためというのが少年漫画におけるお約束であるが、ハルユキの状況はまさにここにある。従って、ディザスターの呪いというのは、パワーアップフラグだろうな、という自分の読み通りの展開となっている。しかし、読み通りではあるが、それ以上でもある。正直、ここまで”ハルユキがパワーアップをしなければならない”フラグを、畳み掛けるように、しかし、丁寧に立ててくるとは予想していなかったが、同時に作者らしいところであるとも感じる。ディザスターの誕生秘話(この過去回想シーンもお約束ながら効果的である)、そして親友、タクムとのバトルと、ここまでフラグを丁寧に立ててもらえれば、お約束だとかなんだとか、そういう指摘(ツッコミ)はもはや無粋であろう。ハルユキの個人的動機においても、物語の流れにおいても、もはやハルユキはパワーアップをしないという選択肢を潰してきてさえいる。この徹底したフラグ管理を、作中のテンションを阻害しないように、それどころかより納得度の高く作っているのには、ただ関心する他にない。ここまでやられては、自分がどんなにひねくれていようとも、納得せざるを得ないのだ。まさに剛腕と言えるだろう。

このように考えてしまう点で、あまり粋とは言えないなあ、と思わないでもないのだが、まあいいか。このような、単純に面白い作品については、ああだこうだと考えるのは無粋とさえ言える(語るうことによって面白くならないタイプの作品だと言える)。このような人間は、こういう作品を読む時に、四苦八苦しているんだろうなあ、などと関係のない事を考えたりもするのだった。オチはありません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

4月に読んだ本

4月は思ったより読んでいた・・・と言っても、3月分に登録していなかった分も入っているんだけど。

4月の読書メーター
読んだ本の数:57冊
読んだページ数:12416ページ

百舌谷さん逆上する(6) (アフタヌーンKC)百舌谷さん逆上する(6) (アフタヌーンKC)
この無自覚なクソガキがっ!と思っていた竜田君が思いほか懐の深いガキだったので平謝り。
読了日:04月27日 著者:篠房 六郎
FIRE FIRE FIRE トリプルファイヤー 2 (愛蔵版コミックス)FIRE FIRE FIRE トリプルファイヤー 2 (愛蔵版コミックス)
佐藤ショウジ先生のおっぱいは人を幸せにするおっぱいや!
読了日:04月27日 著者:佐藤 ショウジ
テルマエ・ロマエ III (ビームコミックス)テルマエ・ロマエ III (ビームコミックス)
日本人との交流が本格化してきて、そろそろ物語が生まれてしまうんじゃないか心配。
読了日:04月27日 著者:ヤマザキマリ
ミカるんX 7 (チャンピオンREDコミックス)ミカるんX 7 (チャンピオンREDコミックス)
「奇跡が起きた!次回へ続く→そして・・・」は定石に反逆する所業でさすが。
読了日:04月27日 著者:高遠 るい
ジャイアントロボ地球の燃え尽きる日 9 (チャンピオンREDコミックス)ジャイアントロボ地球の燃え尽きる日 9 (チャンピオンREDコミックス)
大作パパン、ちゃんと事情を説明して下さいっ!(いつもの事です)
読了日:04月27日 著者:横山 光輝,今川 泰宏
カブのイサキ(4) (アフタヌーンKC)カブのイサキ(4) (アフタヌーンKC)
距離が伸びれば時間の流れも変わる。つまりそこにはロマンがある。
読了日:04月27日 著者:芦奈野 ひとし
ヴィンランド・サガ(10) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ(10) (アフタヌーンKC)
これしかないと言う展開。何もかも納得できるぜー。
読了日:04月27日 著者:幸村 誠
水の森(2) (KCデラックス)水の森(2) (KCデラックス)
変わり行くと言う事をいたずらに称揚せず、肯定しているのはすごいな。
読了日:04月26日 著者:小林 有吾
水の森(1) (KCデラックス)水の森(1) (KCデラックス)
「みんなと違う」と言う事に真正面から描くところが良い。
読了日:04月26日 著者:小林 有吾
マギ 8 (少年サンデーコミックス)マギ 8 (少年サンデーコミックス)
「同じ人間にはなれないんだ」貧富/差別の結論を少年漫画の中でここに置くとかめっさクール。
読了日:04月26日 著者:大高 忍
神のみぞ知るセカイ/12 ステンレスブックマーク付き限定版 (少年サンデーコミックス)神のみぞ知るセカイ/12 ステンレスブックマーク付き限定版 (少年サンデーコミックス)
物語のラインが激しく変動していく過程に血圧が上がる。
読了日:04月26日 著者:若木 民喜
史上最強の弟子ケンイチ/42 サウンドロップ付き限定版! (小学館プラス・アンコミックスシリーズ)史上最強の弟子ケンイチ/42 サウンドロップ付き限定版! (小学館プラス・アンコミックスシリーズ)
馬師匠があまりにもダンディすぎてメロメロ。
読了日:04月26日 著者:松江名 俊
一年生になっちゃったら (7) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)一年生になっちゃったら (7) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
ここから引き戻すか、それとも行くところまで行くのか。
読了日:04月18日 著者:大井 昌和
這いよれ!ニャル子さん 7 (GA文庫)這いよれ!ニャル子さん 7 (GA文庫)
やっぱりラブ寄せが始まりましたね。賢明な判断、かどうかはまだ判断出来ない。
読了日:04月18日 著者:逢空 万太
九つの、物語 (集英社文庫)九つの、物語 (集英社文庫)
文章とはどこまで美しく繊細になれるのかって感じ。絵画みたいな小説。
読了日:04月18日 著者:橋本 紡
小説家の作り方 (メディアワークス文庫)小説家の作り方 (メディアワークス文庫)
人間と機械の狭間で、ってのはSFとして面白い題材だけど、SFには行かなかったな。
読了日:04月18日 著者:野崎 まど
サンクチュアリ-THE幕狼異新- 2 (ジャンプコミックスデラックス)サンクチュアリ-THE幕狼異新- 2 (ジャンプコミックスデラックス)
冲方丁メソッドは連載漫画には向かないのか。キャラ立てするのにページが足りなすぎる
読了日:04月18日 著者:野口 賢
足洗邸の住人たち。 11巻 【初回限定版】 (GUM COMICS)足洗邸の住人たち。 11巻 【初回限定版】 (GUM COMICS)
福太郎がついに”生きる”事を表明したのはでかい話ですねえ(ひどい主人公だ)。
読了日:04月15日 著者:みなぎ 得一
アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)
主人公カップルがお互いツンデレと言う好きな人には垂涎な話。僕も好きよ。
読了日:04月15日 著者:ゲイル・キャリガー
百合×薔薇 彼女の為の剣と、彼の為の乙女の園 (集英社スーパーダッシュ文庫)百合×薔薇 彼女の為の剣と、彼の為の乙女の園 (集英社スーパーダッシュ文庫)
百合で男の娘でハーレムで伝奇、はともかく、このふわふわした感覚は一体…。
読了日:04月15日 著者:伊藤 ヒロ
アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)
零も自分が普通の人間でしかないという事を受け入れられるようになったんだな。
読了日:04月15日 著者:神林長平
青い星まで飛んでいけ (ハヤカワ文庫JA)青い星まで飛んでいけ (ハヤカワ文庫JA)
スケールは大きいのに小さな話をしているのが不思議な感じ。
読了日:04月15日 著者:小川一水
電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版 (電撃文庫)電波女と青春男 SF(すこしふしぎ)版 (電撃文庫)
つまり、こっちは真の物語ではないんだな。
読了日:04月13日 著者:入間 人間
電波女と青春男〈8〉 (電撃文庫)電波女と青春男〈8〉 (電撃文庫)
最後まで何も起さないとは見事。今までちょっと不当な評価をしてたかも…。
読了日:04月13日 著者:入間 人間
ソードアート・オンライン〈7〉マザーズ・ロザリオ (電撃文庫)ソードアート・オンライン〈7〉マザーズ・ロザリオ (電撃文庫)
読んでいると頭が悪くなりそうなくらいによく出来ている。
読了日:04月13日 著者:川原 礫
烙印の紋章〈8〉竜は獅子を喰らいて転生す (電撃文庫)烙印の紋章〈8〉竜は獅子を喰らいて転生す (電撃文庫)
ビリーナが出てくるとオルバが決断を「してしまう」のは良し悪しだな。
読了日:04月13日 著者:杉原 智則
つらつらわらじ(2) (モーニングKC)つらつらわらじ(2) (モーニングKC)
若いがゆえに体面に拘ると言うのも不健康な気もするが、それも価値観の奴隷にすぎないな。
読了日:04月13日 著者:オノ・ナツメ
へうげもの(12) (モーニングKC)へうげもの(12) (モーニングKC)
数寄ばかりでバカにされていた佐介も、今では他人に教えて伝える人物になったんだなあ。
読了日:04月13日 著者:山田 芳裕
3/16事件 (講談社BOX)3/16事件 (講談社BOX)
MAGNITUNINGがとても面白かった。良くも悪くもセンスの固まりみたいな。
読了日:04月12日 著者:榎本 俊二,奈須 きのこ
進撃の巨人(4) (少年マガジンコミックス)進撃の巨人(4) (少年マガジンコミックス)
なんで過去編…と言う疑問は最後には氷解しました。
読了日:04月12日 著者:諫山 創
ケルベロス 6 (少年チャンピオン・コミックス)ケルベロス 6 (少年チャンピオン・コミックス)
カラスの旦那はポッと出の敵役には勿体無いほどのキャラ立てが出来ているな・・・。
読了日:04月12日 著者:フクイ タクミ
キガタガキタ! 3―「恐怖新聞」より (少年チャンピオン・コミックス)キガタガキタ! 3―「恐怖新聞」より (少年チャンピオン・コミックス)
台詞もなく人格も見えない恐怖新聞が可愛く見えてしまう。感情移入って恐ろしいな。
読了日:04月12日 著者:つのだ じろう
氷室の天地 Fate/school life (4) (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)氷室の天地 Fate/school life (4) (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)
終わり無き日常はどこまで続くのか。同じことの繰り返しなら、続く意味はあるのだろうか。
読了日:04月12日 著者:磨伸 映一郎
戦国妖狐(6) (ブレイドコミックス)戦国妖狐(6) (ブレイドコミックス)
散人左道から一貫して描く、純粋に力を求め過ぎたがゆえに道を誤る強者の話。
読了日:04月12日 著者:水上 悟志
フェイブルの海 (講談社BOX)フェイブルの海 (講談社BOX)
日常に自閉すると言っておきながら己の日常が拡大していく主人公の自己矛盾が可愛らしいねえ。
読了日:04月10日 著者:新沢 克海,05
武侠三風剣 (徳間文庫)武侠三風剣 (徳間文庫)
己の過去から逃げずに向き合い続けた先にあるのは破滅だけ。けれどそれも幸福かもしれない。
読了日:04月10日 著者:嬉野秋彦
越女剣 (徳間文庫)越女剣 (徳間文庫)
メロドラマあり、コメディあり、萌えキャラあり。このガツガツした感じ、好きですね。
読了日:04月10日 著者:金庸
レイセンFile3:ワンサイド・ゲームズ (角川スニーカー文庫)レイセンFile3:ワンサイド・ゲームズ (角川スニーカー文庫)
ヒデオがまるでラノベの主人公みたいになっているな。
読了日:04月10日 著者:林 トモアキ
戦争大臣 II 天鵞絨の死 (角川ホラー文庫)戦争大臣 II 天鵞絨の死 (角川ホラー文庫)
スナークの主人公オーラがマジパネエ。
読了日:04月10日 著者:遠藤 徹
空色パンデミック4 (ファミ通文庫)空色パンデミック4 (ファミ通文庫)
やるべきことはやりつくした感もある。デウスエクスマキナたる道化はどうするんだろ。
読了日:04月10日 著者:本田 誠
Wizard―Passion Fruit (幻狼ファンタジアノベルス)Wizard―Passion Fruit (幻狼ファンタジアノベルス)
温度が低いようで高く、高いようで低い。
読了日:04月10日 著者:小竹 清彦
Wizard―Daily Fairy Tale (幻狼ファンタジアノベルス)Wizard―Daily Fairy Tale (幻狼ファンタジアノベルス)
万能の力を持ちながら俺TUEEに走らない洒脱さ/クールさが魅力。
読了日:04月10日 著者:小竹 清彦
戦争大臣 I  嘲笑する虐殺者 (角川ホラー文庫)戦争大臣 I 嘲笑する虐殺者 (角川ホラー文庫)
殺戮への喜びを一心に語りながら、一方でそれをメタに制御する部分もあって、上手くやっているなあ、と。
読了日:04月03日 著者:遠藤 徹
ハンターダークハンターダーク
主人公のハンターは秋田作品らしく捜し求める主人公だけど、迷わないという点で強い。
読了日:04月03日 著者:秋田禎信
WORKING!!(9) (ヤングガンガンコミックス)WORKING!!(9) (ヤングガンガンコミックス)
動き出した心は止められない!・・・こともなかった。さすが佐藤さんだ。
読了日:04月03日 著者:高津 カリノ
花物語 (講談社BOX)花物語 (講談社BOX)
「自分らしさの檻の中でもがいてるなら~」と言う曲があったな。そういえば。
読了日:04月03日 著者:西尾 維新
Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ! (3) (角川コミックス・エース 200-5)Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ! (3) (角川コミックス・エース 200-5)
”正義の味方ではない”衛宮士郎が読めるのはプリズマ☆イリヤだけ!
読了日:04月03日 著者:ひろやま ひろし
千の魔剣と盾の乙女2 (一迅社文庫)千の魔剣と盾の乙女2 (一迅社文庫)
すでに英雄の時代は終わり、弱い人間は力を合わせて戦う必要があるという話なんだろう。
読了日:04月03日 著者:川口 士
天国に涙はいらない 終 (電撃文庫)天国に涙はいらない 終 (電撃文庫)
これはギリギリだったな・・・。震災以後であれば出版中止になってもおかしくなかった。
読了日:04月01日 著者:佐藤ケイ
ゴールデンタイム2 答えはYES (電撃文庫)ゴールデンタイム2 答えはYES (電撃文庫)
香子さんは大河かと思っていたんだけど、実は実乃梨だったんですねえ。
読了日:04月01日 著者:竹宮 ゆゆこ
ひがえりグラディエーター (電撃文庫)ひがえりグラディエーター (電撃文庫)
物語を駆動するパーツが主人公の”外部”にあるってのは珍しいような。
読了日:04月01日 著者:中村恵里加
ハチワンダイバー 19 (ヤングジャンプコミックス)ハチワンダイバー 19 (ヤングジャンプコミックス)
毎巻のことだが、この発狂したような物語展開には感動的な想いが湧き上がってくる。
読了日:04月01日 著者:柴田 ヨクサル
ANGEL PARA BELLUM (エンジェルパラベラム) ① (フレックスコミックス)ANGEL PARA BELLUM (エンジェルパラベラム) ① (フレックスコミックス)
最初「天使の二挺拳銃?」と思ったのは内緒。
読了日:04月01日 著者:環 望,みなみ ケント(原作)
ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド ⑪ (MFコミックス フラッパーシリーズ)ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド ⑪ (MFコミックス フラッパーシリーズ)
二人のアキラの関係が実に耽美的で、本当に作者は美少年好きねえ、と思った。
読了日:04月01日 著者:環 望
超電磁大戦 ビクトリーファイブ② (CR COMICS)超電磁大戦 ビクトリーファイブ② (CR COMICS)
「実は生きていた」メソッドを自由に使えて楽しそうだなあ。
読了日:04月01日 著者:長谷川裕一
超電磁大戦 ビクトリーファイブ① (CR COMICS)超電磁大戦 ビクトリーファイブ① (CR COMICS)
少年冒険ロマンを好む作者らしい作品になっています。原点はスパロボでしか知らないけど。
読了日:04月01日 著者:長谷川裕一
鋼殻のレギオス17  サマー・ナイト・レイヴ (富士見ファンタジア文庫)鋼殻のレギオス17 サマー・ナイト・レイヴ (富士見ファンタジア文庫)
いつまでレイフォンの戦う理由探しをさせるつもりなんだろうなあ。
読了日:04月01日 著者:雨木 シュウスケ

読書メーター

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.05

買ったもの

1.『ONE PIECE(62)』 尾田栄一郎 集英社
2.『めだかボックス(10)』 原作:西尾維新 漫画:暁月あきら 集英社
3.『保健室の死神(8)』 藍本松 集英社
4.『血界戦線(3) ―震撃の血槌―』 内藤泰弘 集英社
5.『ユンボル -JUMBOR-(2)』 武井宏之 集英社
6.『C-―黒咲練導作品集』 黒咲練導 白泉社

買ったもの。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『狼と香辛料(16)太陽の金貨(下)』

51ue1jteogl__ss500_

狼と香辛料(16)太陽の金貨(下)』(支倉凍砂/電撃文庫)

狼と香辛料シリーズの最終巻。と言っても、あと一巻、後日談があるらしいけど、ロレンスとホロの物語としては完結したようだ。と言っても、何もかもが決着がついて、すべてが綺麗に割り切れる終わり方ではない。むしろ、何一つ物事が終わったような気がしない、すべてが途中で終わってしまったかのようにさえ思えるかもしれない。ロレンスたちが最終目的地として設定されていたヨイツにはたどり着かないし、ロレンスとホロの関係も、一見したところ磐石とは言えず、相変わらず喧嘩したり迷ったりしている。お前ら、本当に昔からやっていることが変わらないよなー、と思う。

けど、いきなり矛盾するようなことを言うけど、何も変わっていないと言うことが、すでに変わっていると言うことでもあるのだ。言うなれば、彼らは”変わらない”と言う関係を維持し続けるために、不断の努力を払っている。彼らの今までの道程を見て来た読者ならば分かることだが、彼らは幾度となく関係を変化させるタイミングがあった。幾度どころか、毎回のようにあった。時に破局を迎えようとしていたり、時にさらに密接な関係を望んだこともあった。しかし、彼らはそれら、変わることへの欲望に、常に抗い続けてきたのだ。

これは、一見したところ、関係を変化させることを恐れているだけのように見る向きもあるかもしれない。事実、既刊において、二人の関係が寸止め状態で長く続いていたことに対して、揶揄する意見も散逸されていた。実を言えば、自分もそうだった。ロレンスはなんてヘタレ野郎なんだ。いいからさっさと押し倒せよ、と、そんな感想を抱いたこともあったように思う。しかし、最終巻を読んで、この二人の関係は、二人ともがこのような関係を望み、その関係を維持していくために努力してきた結果なのだ、と思えるようになったのだ。変わることはいつでもできる。それよりも、変わらないことだって、変わることと同じくらい大切なことなのだ、と。

変わること、と言うのは、変化である。いや、同じ意味だろ、言われればその通りなのだが、つまり、そこには進歩の可能性と共に、終わりの可能性も孕んでいる。それはそのとおりであるし、間違っていることではない。物語的にもそちらの方がはるかに劇的であっただろうし、二人のロマンスはより燃え上がったことであろう。

だが、ロレンスとホロが選んだ道は、そのようではなかった。もっと、ゆっくりと、着実に、地に足をつけて歩んでいくように、関係を紡ぎあげる道であった。それは劇的でもなければ熱く燃え上がるたぐいのものでもなく、ひたすらに穏やかに、忍耐強く紡いでいく関係である。お互いに対して多くを望まず、ただ手の届く距離で、一緒に歩いていくことだけの望む。彼らの望む関係とはそのようなものなのだった。

ロレンスとホロの関係は、当たり前のことだが、物語が終わったあともつづいていくものなのだ。決して、劇的な物語を、二人が望んでいるわけではない。彼らは恋愛小説の主人公となることを、まったく望んでいないのである。人間の商人と、神と呼ばれたことのある狼は、平凡な愛情を少しずつ積み上げいく道を、選んだのだ。

このシリーズは、これからも(おそらくは)長い間も続くであろう、二人の旅の、ほんの序盤を描いたに過ぎないのだ。二人はこれから先も共にあるか、あるいは別れるかもしれないが、それは彼ら自身が、今までと同じように立ち向かっていくことであろう。あるいは、否応なしに変わっていかざるを得ないこともあるだろう。しかし、それさえも、変わらないことをあえて望むと言うことは、決して容易い道ではなく、また勇気のある選択であるはずである。

そのように考えることで、彼らの物語は無限の広がりを獲得していくように思うのだ。それはその通りであるし、そのようであって欲しいという、自分の願いのようなものでもある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.03

『幕末魔法士(2)大坂鬼譚』

61ojpprs1zl__ss500_

幕末魔法士(2)大坂鬼譚』(田名部宗司/電撃文庫)

ライトノベルと時代劇と言うのは意外と食い合わせが良いというか、ジャンル的に近縁関係があるのではないかと思っているのだが、自分の観測範囲ではあまりそういう意見は主流ではないように思える。まあ、かく言う自分にしても、時代劇おもしれーなー、と思うようになったのはここ10年ほどなので、あまり偉そうなことは言えないのだが。

それはさておくとして、電撃文庫から、このようにライト時代劇ファンタジーが登場したことはなかなかに喜ぶべきことではないか、と思うのだ。この作品は、とりわけ、時代劇的な要素を多分に含んでおり、言うなればライトノベルと時代劇のハイブリットである。文体も簡素ではあるがライトノベル的な軽妙さ、キャラクターの造型も立っており、「意外と時代劇もいいんじゃないか?」と読者が思ってくれるようになる、と、都合よく行くとも思えない(自分に嘘はつけない)が、ともあれ、ライトノベルと時代劇の良いとこ取りをしていると言えよう。なかなか良いところに目をつけたものだな、と前巻読んだ時に思ったことを思い出しました。

どうでもいい前置きが長くなりましたが、着実に明治維新に向けて話が積みあがっております。タイトルからしても、主人公たちが日本の回天に立ち会うことは明白でありますが、どのような形に関わることになるのかについて、少しずつ明らかになって来たようにも思います。なにやら不可解な暗躍を行う桂小五郎や新撰組を始めとして、幕末の関係者が出揃ってきましたね。魔法と言う便利ガジェットがあるので、どのように転がしていくのかは予測がつきにくいところがあるのだけど、この作品の魔法は、どちらかと言うとTRPGの影響下にある魔法なので、なんでもありと言うわけでもない。なので、きっと悪い魔法使いが幕府を転覆させようとしてくるに違いない。

そういえば、今回の話では、明らかに倒幕側を悪役に描いていたけど、このシリーズではその路線でいくのかしら。まあ体制側とテロリストと言う役割分担をさせればそうなるのは自然なんだけどね(あと新撰組って人気がたけーから、下手に悪役として描くわけにもいかんのかもしれん)。ただ、明治維新ものって本当に腐るほどあるんだけど、価値観が転倒して、正しいものが間違って、間違っていたものが正しいとされる時代だけに、すごく書くのが難しいところではあると思うのだ。この作品がどこまで踏み込んでいくのか分からないけど(たぶん、娯楽の路線は堅持すると思うけど)、できるだけ単純な切り分けにならないことを祈りたいですね。まあ余計なお世話ではあるんだけども。

あと、主人公たちはいい加減にしろ。いちゃいちゃしてんじゃねーぞコラ。もっとやってください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.02

『メガクルイデア』

51z9igfw6l__ss500__3

メガクルイデア』(十文字青/幻狼ファンタジアノベルス)

十文字青らしい暗黒青春疾走伝奇。でも、十文字青らしすぎて、一周して伝記作品としては王道に入っているような気もする。日常を嫌悪する主人公が、伝奇サイドのヒロインに導かれて伝奇世界に足を踏み入れる、と言う。ただ、これが実に十文字青らしく感じるのは、主人公の徹底した逃避描写にある。主人公は徹底して逃避していますが、この逃避の徹底ぶりは本当に凄まじい。日常からの逃避などと言う生易しいものではない。もはや”生きる事”そのものからの逃避。全力で、”この世に生きると言うあらゆる事柄”から逃避している。

十文字青作品のすごいところは、主人公がここまでに壮大な逃避を行わざるを得ない”状況”のあらゆる意味での過酷さだ。逃避とは、あたかも弱い人間の選択肢であるという先入観を持つ人は多いと思う。だけど、そんな思い込みを持っている人と言うのは、おそらくは「自分の力ではどうにもならない出来事に遭遇したことのない」のではないだろうか。逃避することを声高に責め立てる人ほど、「なぜ逃避しなければならないのか」と言う点に思い至る事は少ない。理由について想像することが出来れば、そのような愚かなことが出来るはずもないのだ。

では、逃避しなければならない理由とは何か。それはたった一つの、シンプルな答えだ。すなわち「逃げなければ殺される」。戦っても絶対に勝てない相手を前にした時、人が取れる手段は多くない。立ち向かっても、ほぼ確実に死ぬと言う事が分かっているとき、生き延びるために逃避することは、生物として当たり前の行為である。そうすることで生き延びられる可能性があるのならば、いくらでも逃げて良いのだ。やり直しの聞かないことなどなく、命さえあればそれは可能なのだから(絶対に勝てない相手に対した人間に「頑張れ!一生懸命やればなんとかなる!」などと声をかけることは、恐るべき想像力の欠如の所業と言わざるを得ない)。

人によっては、「なんでそんなことで逃げなくてはならないの?」と思うことがあるかもしれない。そんなたいしたことのない出来事に対して、逃避している人間を見ると、まるで真面目にやってないように見えることがあるのかもしれない。だが、それは「人間とはすべて平等である」と言う幻想に満ちた思い込みだ。”誰かに出来ることが他の誰かにも出来る”と、無批判に受け入れた誤った認識だ。人間とは平等ではなく、生まれながらに能力に差があり、誰かに出来ることは他の誰かに出来るとは限らないのだ。

勘違いをして欲しくないのだが、自分は「逃避が正しい」と言っているわけではない。「逃避以外に選択肢がなくなることがある」と言う事が言いたいだけだ。逃避とは、確かに最後の選択肢ではあるのだが、最後だけに、最終手段でもある。逃避によって救えるのは自分の命だけで、それ以外のものはボロボロとこぼれ落ちて行ってしまう。自分の命以外のものを取り戻したければ、逃避以外の選択肢を取る必要がある。だが、一度逃避してしまうと、なかなかに難しいことでもある。だが、それでも、取り戻したいのならば、選択をしなくてはならないのだ。

この物語は、逃避する以外に手段を持たなくなってしまった主人公が、逃避以外の選択肢を得るまでの物語だ。彼を取り巻く環境は絶望的であり、そもそも自分の命を守ることさえも困難である。彼は自分を守るために、すべてを諦めて、生きていた。これは、そんな彼が、それまでの日常とは別の法則の世界に取り込まれることで、新しい一歩を踏み出すことが出来る「かもしれない」と言う物語だ。自分の意思をすべて奪われていた彼が、自分の意思を生み出すことが出来る「かもしれない」と言う物語だ。そして、絶望の中で追い詰められた人間が立ち上がる事が出来るかどうかの物語だ。

この作品からは、「絶望から立ち上がること」について懐疑的な部分が垣間見える。おそらく、執筆当初の十文字先生にとって、本当に絶望的な状況に追い込まれた人間が、希望を持って立ち上がることを受け入れることが出来なかったのだろう。それでも希望を描きたいと言う感情と、懐疑的な思考がぶつかり合い、最終的に、主人公に「選択肢を与える」と言うところに落ち着くのは、ギリギリで希望が勝ったようにも、そうでもないようにも思える。これはつまり、作者は自分が信じていないことは書かないという態度であり、どちらにせよ、これは誠実な態度だと言えるだろう。

このような態度から出された答えならば、その是非はどうであれ、理解は出来るし、納得も出来ると思うのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.05.01

『ニーナとうさぎと魔法の戦車(2)』

51oplffqal__ss500__2

ニーナとうさぎと魔法の戦車(2)』(兎月龍之介/スーパーダッシュ文庫)

かわいそうな女の子たちが登場するシリーズ第二弾。ここまで徹底して男が排除されていると清々しい気持ちにになる。なんと言っても、主人公もそのサポーターも敵も味方全部女の子であり(一部、女の子と言うより大人の女と言うキャラクターもいるが、なあに心に少女を住まわせていればいつだって少女なのさ)、さらにその全てがかわいそうな過去を背負っているのは圧巻である。ラビッツの面々の掘り下げも行っていないのに、これほどの戦闘力を高めてくるとは予想外と言わざるを得ませんね。

実はもっとニーナとラビッツとの関係を深める展開にするのかと予想していたんですが、ニーナのエピソードになると言うのは意外な感じがしました。ニーナの恩人にあたる”彼女”が登場してくるのはもっと後になってからではないか、勝手に思っていただけに驚きましたね。作者はまだまだニーナをいじめ足りないのかーみたいな(誤解を招く表現)。まあこの作品はあくまでもニーナの物語であって、ラビッツ隊は彼女のサポーター、あるいはヒーローのような位置付けなのかもしれません。苦難や困難に対して立ち向かうのはあくまでもニーナの意思であるべきなのでしょう。

本編内容は、いわゆる上げて落とすと言う基本に忠実ですね。基本的にはニーナが過去と向き合い、自分の中の勇気を奮い起こしていく展開は非常に爽やかでさえあります。彼女の傷になっていたものを、前に進むための動機となると言うのは非常に正しさを感じます。ただ、そこまで前向きにニーナを進ませると、必ずどこかで落としたくなるのでしょうが、ニーナはこれ以上なく信頼した相手に、決定的な裏切りられる事になります。個人的には今回の”敵”は非常にキャラクターとして「おいしい」ので、裏切らせなくても良かったんじゃないかなあ、と思いました。もっと大きな物語を背負えるだけのポテンシャルはあったように感じるので、ここであたかも使い潰してしまうようにしてしまうのは勿体無いと思わざるを得ません。ただ、そこをあえて手札を切ってしまうのが、作者の趣味と言うかあるいは業みたいなものなのかもしれません。

少なくとも主人公を絶望のふちに追い込み、そこから立ち上がる姿を描くためならば他の描写を犠牲にさえする、と言う作者のスタンスは明確なので安心感がありますね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

買ったもの

1.『ですぺら』 小中千昭×安倍吉俊 徳間書店
2.『シュトヘル(4)』 伊藤悠 小学館
3.『月光条例(13)』 藤田和日郎 小学館
4.『自殺島(5)』 森恒二 白泉社
5.『半熟作家と“文学少女”な編集者』 野村美月 ファミ通文庫
6.『B.A.D. 5 繭墨は猫の狂言を笑う』 綾里けいし ファミ通文庫
7.『サクラダリセット(5) ONE HAND EDEN』 河野裕 角川スニーカー文庫

買った。

最近、またしても更新が滞っていますが、今回は大帝国で忙しくて時間が圧迫され気味です。一番最初に削られるのが、ブログの更新になってしまうのは、まあしょうがないと思うんだ。言い訳終わり。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年4月 | トップページ | 2011年6月 »