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2011.05.26

『ゴールデンタイム(2) 答えはYES』

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ゴールデンタイム(2) 答えはYES』(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)

香子さんの情緒不安定ぶりは本当に凄まじい。一人だけ思春期が遅れてきたレベル。大学生となるとエエカッコしいが多くなる中で、たった一人だけこれほどの純粋性を保持してきた香子さんのピュアぶりは奇跡的とも言える。前巻の感想でも書いたけど、彼女の”残念”ぶりは、萌えとか可愛らしいという言葉には還元しにくいところがあるのだが、自分を偽ったり、カッコつけたり、少なくともそういう方向には向かっていない。おそらくは、それこそが”無垢”というものであろうし、万里が守らなくてはいけないと思ったものなのだろう。

とはいえ、遅れてきた思春期全開で行動する香子は、かなりめんどくさい女だ。言うこと、やることが重いし、行動もいちいち極端すぎる。中庸って言葉をぜひ知ってもらいたいところだけど、それでも、彼女なりに起こった出来事を消化しようという表れでもあるのだろう。その意味では、わりと香子はタフなタイプというか、大河と違って、かまってやらないと死んでしまうタイプではない、と言えるのかもしれない。どちらかというと、実乃梨タイプなのかもしれない(というのは自分の勝手な印象)。

今回のメインは、実は多田万里の方である。香子を助けるために奔走した彼が、彼の土台のあやふやさに翻弄されることになる。自分が感知していない縁を知り、自縄自縛になってしまう。過去なんて未来には関係ないといいつつも、過去を捨てることは出来ない。過去から逃げてしまった(とはいえ、それを責めることも酷ではある)万里がそのツケを払うことになる。

このあたりの関係は、実は、とらドラで描かれた最終巻近くの展開に似ている。ヒロインを一方的に助ける”ヒーロー”である主人公自身の物語において、潰れそうになる主人公を、ヒロインが助け返すのだ。一巻の内容が、とらドラシリーズのクライマックス直前までの焼き直しだとすれば、今回はクライマックスの焼き直しのように思える。つまり、ヒロインのヒーローへの依存で成り立っていた関係を、対等の関係にバランスを取り直す、というもの。対等な互助関係を構築したことで、ようやく関係を永続的なものにすることが出来るようになるわけだ。

自分が興味があるのは”この次”である。つまり「対等な互助関係となった恋人たち」がともに歩む道程だ。とらドラにおいて、未来への可能性として描かれた、未来そのものをどのように生きるのか、という物語だ。ハッピーエンドを迎えたとしても、そこで人生が終わるわけではない。これから先に起こる試練に、力を合わせて取り組んでいくのかもしれない。あるいはあえなく破局するかもしれない。だが、お互いに信頼しあった関係であっても、それが永遠に続くわけではない。そうした関係を、どのように描かれるのか、今後の楽しみとしたいと思う。

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