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2011.05.22

『わたしと男子と思春期妄想の彼女たち(1)リア中ですが何か?』

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わたしと男子と思春期妄想の彼女たち(1)リア中ですが何か?』(やのゆい/ファミ通文庫)

この作品の描写を見ていると、時折、はっとさせられる鋭さがあって、非常に興奮させられた。全体的に見て、基本的にはゆるい作り(をしているように見える)なのだが、事実、それほど綿密に構成されている作品ではないにも関わらず、ところどころにおける描写の意外な視点に、「なるほど、そのような認識の仕方があったのか」という意外性があるのだ。

僕がこの作品にいちばん素晴らしいと思ったのは、主人公の造型である。主人公が中学一年生という年齢設定がまた良い(なお、もうこの年齢の記憶など涅槃の彼方にある自分にとっては、ほとんと外国人か未来人と変わらないレベルに遠い存在ではあるので、これが”リアル”なのかは考慮しない)。情緒においても思考回路についても未熟な存在である主人公が、恋と言う感情を知っていくと言う過程に、作者独特のおもしろい手触りが感じられる。子供時代の関係を引き摺りながら、恋と言う感情についてもはっきりとした輪郭をつかめていない。けれど、恋に恋する感情はある。そのような、非常にふわふわした女子中学生の思考が描かれていて、これは自分の中のどこをひっくり返しても出てこない作品だと思うのだった。

このふわふわした感触は、少女小説を読んだときの感触とも、また異なっている。少女小説の女の子は、もうちょっとヒロイックで生っぽい感じがするのだが、この作品の主人公は、さらにふわふわした、甘やかな印象がある。少女小説の主人公から、生っぽさを抜いた感じ、という形容は正しくはないが、そんな感じだ。これが中学一年生という年齢から来るものなのか、それ以外の意味があるのかはわからないが……。わからなくてもいいような気もする。

この、情緒も思考回路も未熟な主人公の”恋以前の気持ち”というものが、クローズアップされている。恋、だと主人公は思っているけれど、実のところ、そこまではならない、はなはだ微妙な感情。それゆえに、揺らぎがあり、どのように振れるか、予測不能なところがある。その、いい加減というか、うつろいやすい、輪郭の曖昧な気持ちの描写に、すごく鋭いものを感じるのだ。もっとも、作者はわりと天然で書いているようにも思うので、これからどうなるかは分からないのだが、それゆえの面白さも確かにある。

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