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2011.05.08

『アクセルワールド07 災禍の鎧』

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アクセルワールド07 災禍の鎧』(川原礫/電撃文庫)

川原礫と言う作家は、本当に少年ジャンプ的なものを愛している作家なのだ、と言うことを改めて感じる作品だった。努力、根性、勝利の方程式を、現代的なライトノベルとして見事に翻案している。正直なところ、この方程式を真面目な顔で語られてしまうと、自分のような根性のねじ曲がった中二病患者には、笑止と言わざるえないベタさではあるのだが、そんな読者であってさえ、ここまで緻密に作られてしまっては、見事を言わざるをえない。この作品には読者にとって原始的本能と言っても良い快楽的な要素を、きちんと作品として作り上げているところに見事さがある、というのは毎回書いているような気もするが、あらためて記しておきたい。自分がこの作者を評価する最大のポイントは、ベタを衒いなく描くことができるということなのだ。

今回の少年漫画ポイントは、なんと言っても、主人公の”呪い”と”開放”である。主人公がピンチに陥るのはその後のパワーアップのためというのが少年漫画におけるお約束であるが、ハルユキの状況はまさにここにある。従って、ディザスターの呪いというのは、パワーアップフラグだろうな、という自分の読み通りの展開となっている。しかし、読み通りではあるが、それ以上でもある。正直、ここまで”ハルユキがパワーアップをしなければならない”フラグを、畳み掛けるように、しかし、丁寧に立ててくるとは予想していなかったが、同時に作者らしいところであるとも感じる。ディザスターの誕生秘話(この過去回想シーンもお約束ながら効果的である)、そして親友、タクムとのバトルと、ここまでフラグを丁寧に立ててもらえれば、お約束だとかなんだとか、そういう指摘(ツッコミ)はもはや無粋であろう。ハルユキの個人的動機においても、物語の流れにおいても、もはやハルユキはパワーアップをしないという選択肢を潰してきてさえいる。この徹底したフラグ管理を、作中のテンションを阻害しないように、それどころかより納得度の高く作っているのには、ただ関心する他にない。ここまでやられては、自分がどんなにひねくれていようとも、納得せざるを得ないのだ。まさに剛腕と言えるだろう。

このように考えてしまう点で、あまり粋とは言えないなあ、と思わないでもないのだが、まあいいか。このような、単純に面白い作品については、ああだこうだと考えるのは無粋とさえ言える(語るうことによって面白くならないタイプの作品だと言える)。このような人間は、こういう作品を読む時に、四苦八苦しているんだろうなあ、などと関係のない事を考えたりもするのだった。オチはありません。

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