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2011.04.07

『棺姫のチャイカⅠ』

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棺姫のチャイカⅠ』(榊一郎/富士見ファンタジア文庫)

なぜ突然、榊先生の作品を読もうと思ったのかと言うと、イラストがなまにくATK氏だったからです。表紙買いです、本当に申し訳ありません。

榊先生の作品は、実はデビュー作のドラゴンズ・ウィルとポリフォニカ赤以外は読んだことがなかったんですが、それだけを読んでいても分かる榊先生の職人気質がうかがえました。すなわち、破綻を嫌う完璧主義者。自分が榊先生に感じる印象はそんなような感じ。あくまでも自分の勝手な印象で話をしますが、この作者は、”作者自身が制御できない”事柄を徹底して排除している気がします。世界設定、キャラクター、物語の転がし方、それらすべてが作者の設計図に記載されていて、設計図の通りに作品を構築している感じなんですよ。あるいは自分の手を離れて勝手に物語が動くことが嫌いなのかもしれませんが。

それは、結果的に作品のキャラクターと物語の要素が絡み合い、物語が紡がれることになります。このあたりの榊先生のこだわりは相当なもので、主人公の現状と鬱屈は、物語の時代背景と密接しており、その主人公が物語、そしてヒロインに関わることに至る動機までが、厳密に設計されています。この「このような流れであれば、このように主人公が決断するのは当然」と言うべき、これしかないという感覚があって、作者のこだわりはたいしたものだと感心しました。ただ、一方で作者はあまりにも厳密に設計しているために、物語を解釈のバリエーションに乏しいという側面もある気がします。なんと言うか、厳密すぎて、主人公たちの動機の設計や、物事の流れについても単純化が甚だしく感じられてしまう。

榊作品をすべて網羅しているわけではない自分がこんなことを書くのもおこがましい話なんですが、恥をこらえて書くと、おそらく、榊一郎と言う作家に対してもっとも評価が難しいのは、この”シンプルさ”なのであろうと思うのです。例えば『棺姫のチャイカ』において、主人公が物語に介入するに当たって、介入する動機が極めてシンプルでわかりやすく設計されています。ネタバレになるので簡単に説明しますが、要するに、彼は現在の世界に不満があって、自分の生きる世界ではないと考えています。それゆえに、現在の世界をぶっ壊す可能性のあるヒロインに肩入れする原因が生まれる。このあたりの主人公の動機は、なんと言うか”完璧”なものがあって、確かにこの主人公ならばこれ以外の道はないような気さえしてくるんですね。

ただ、個人的にはちょっと出来すぎと言うか、物語に都合が良過ぎるというか、そういう感覚もあって。主人公が事件に巻き込まれる過程があまりにもスムーズすぎると感じられなくも無い。このあたりが”シンプルさ”の功罪であろうとも思ってしまうのです。少なくとも、そこには”揺らぎ”がありません。「何かがそのようになることが決まっている」物語と言うのも魅力的だと思いますが、どちらかと言うと「何かがそうであるかもしれないがそうでないかもしれない」物語の奥行きの広さも良いんじゃないかなあ。

まあ、自分はそっちが好きである、と言うだけの話なんですけどね。

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