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2011.04.11

『ブギーポップ・アンノウン 壊れかけのムーンライト』

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ブギーポップ・アンノウン 壊れかけのムーンライト 』(上遠野浩平/電撃文庫)

ブギーポップ世界には”自動的な存在”ってのが、まあごろごろとは言わないまでも、けっこういる。そういう存在は、みな例外なく特殊な力を持って、特異な役割を背負っている。力があればそこに責任が生じるものだ、とこの感想を書く直前に見ていたガンダムUC(アニメ版)でも言っていたけれど、まあそういうものなんでしょう。

ただ、それは絶対ではない。力を持つことと、使命を持つことと言うのは、実は因果関係はないんですね。あくまでも、力を持つものの責任とは、自らの力が起した”結果”だけを背負うのであって、自分で勝手に力の”意味”を問うべきではないのです。「自分には力があるから××をすべきだ」なんて事を考えるとややこしいことになってしまう。力を持ったものが、自分の使命、役割を”自覚”し、行動に移す。しかし、その”自覚”した使命が、実はただの思い込みであったなら?と言うところに注目したのが今回の話です。

プーム・プームは確かに(半)自動的な存在であり、特殊な力を持っていました。しかし、本人はその力がなんのためにあるのか分かっていませんでした。あるとき、異常な事態が彼女の周辺で起り出し、それを解決する手段を、彼女は持っているように思われました。それゆえに、彼女は勘違いしてしまったわけです。「自分の力はこのためにあったのだ」、とね。実際には、世の中には因果関係があるように見える事柄が、実は単なる偶然だという事がほとんどです。たとえ、目の前の事件が、自分にとって重要なことのように思えても、実際には事件は関係なく続いていくのです。その誤謬は、まさしく少年少女らしい、他愛の無い勘違いに過ぎなった。しかし、事件を解決しようとするもの、それを助けようとするもの、真実を解明しようとするものなど、多くの思惑が入り乱れ、そしてそれぞれが勝手に事件を推察し、自分の主観で事件を認識した結果、途方も無く深刻な事態に辿りついてしまいます。

結局、彼らがやったことは、多くが空回りをしていて、独りよがりなものに過ぎなかったわけですが、しかし、その行為が無為であったかと言えば、そうではない。少なくとも、上遠野先生はそのようには描かない。彼らの行為は、結果的に見て、相当に痛々しい勘違いでしかなかったわけですが、そうした勘違いに基づいた行動や、どうしようもないほどの失敗、迷いや誤謬、それらすべては、必ずどこかに繋がっている、と描いているように思います。プームプームなんて、世界を救うために行動し、世界のすべてを背負った風に行動してしましたけど、結局、事件は彼女(?)とはあんまり関係のないところで動いていましたからね。その意味では、これほどに”痛い”話もない。けれど、そうした行動も、別の人間を動かすことにつながり、その人間が事件をまた別の方向に向かわせることも起りえる。つまり、その意味では、プームプームは確かに事件を解決に導いたとも言えるわけです。

また、それぞれが勝手な思い込みで行動した結果、大失敗をしたり事態を悪化させたように見えたとしても、しかし、そうした”視野の狭さ”が、それゆえの行動、そうした狭さことが”救い”に、あるいは希望に繋がることもある、と言うことを、リリカルに描いてもいます。このように、一歩間違えればただの”痛い”話で終わるところを、その愚かしさを含めて”正しい”物語に繋げていく。それを叙情的に描けるところが、まさに上遠野先生のオンリーワンなところでしょう。

失敗や痛さを容赦なく描き、そうした愚かさにも意味があると描く上遠野先生の、優しい視点がそこにはあるように思うのでした。

【追記】

考えてみれば、これはブギーポップ自身にも当てはまるのかもしれない。彼は「世界の敵の敵」を自認しているけど、果たしてその使命はどこから来たものなんでしょうね。ただ、本人が思い込んでいるだけではないの?本当は彼には別のやるべきことがあり、彼のやっていることは見当違いなことなのではない?

まあ、勘違いであろうとも、それをやろうと思ったことならば、正解とか間違いとか、関係ないことなんだけどね。

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