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2011.04.05

『這いよれ!ニャル子さん(6)』

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這いよれ!ニャル子さん(6)』(逢空万太/GA文庫)

前回あたりから主人公にデレ始めていたクー子無双の回と言っても良いでしょうか。結婚を回避するために、真尋に恋人の代役を頼むことになる、と言うベタと言うにもおこがましいベッタベタの展開ながら、エスカレートしていくスキンシップにクー子自身もそんなに嫌がっていないあたりなど、クー子萌えを突き詰めようとしています。ただ、かなり本気でクー子萌えを突き詰めてしまったために、三角関係が本気で浮上しかかっており、とうとう”物語”が駆動を始めてしまいました。クー子の行為に対して、ニャル子が真尋に対して本気であればあるほどに真面目に向き合わなくてはいけない状況が起っています。

これ、いままでの不条理ギャグ小説としては、かなり致命的な展開ですよね。ニャル子とクー子はそれぞれが一方的な感情が空回っているからこそギャグとして成立するのに、本気で向き合ってしまってはギャグにならない。修羅場にしかならないわけです。まあ、それはそれでラブコメとしては面白くなる可能性はありますが、それはすでに不条理ギャグではありえないわけです。つまり、この関係を突き詰めていくと、不条理ギャグとしての『ニャル子さん』シリーズは崩壊してしまうのです。

作者が今回の話を書くのにすごく苦労したとあとがきで書いておられますが、おそらくそのあたりのさじ加減に苦労したのではないかな、と自分は勝手に思っています。ここで本格ラブ路線に変更するか、あるいはギャグ路線を堅持するか。まあ、結果としては内容を読めばわかりますが、すごくギリギリのところを渡りました。否応なしに駆動し始める本格ラブ物語を、ネタとボケを使用しまくることでなんとかギャグに落としこもうとしていましたね。個人的に作者スゲーな、と思ったのは、ニャル子の「問い詰め」のシーンです。あれ、会話の内容そのものはものすごく深刻と言うか、もうラブ路線そのまんまなんですが、問い詰めそのものは元ネタのあるギャグになっています。つまり、ラブ物語が要求する修羅場を置くと同時に、修羅場そのものをギャグにしてしまう。ただ、ギャグだと受け取るのは元ネタを知っている読者だけで、作中ではこの上ない真剣な修羅場になっていると言うわけです。なんたるメタなアクロバット。作品のレイヤー上で作品の温度差を作ることで、ギャグとシリアスを同時に潜り抜けました。なんとかギャグ路線も堅持できたわけです。

ただ、今回はなんとかなりましたが、物語内ではラブ空間が出現してしまったため、ギャグを維持していくのはいよいよ大変なことになるでしょう。一度発生してしまった関係性は、作者でも容易にリセットすることは難しい。まあデウスエクスマキナでも登場して物語を強引に終わらせにかかればなんとかなるでしょうが、果たしてそこまでやるつもりがあるのでしょうか?クトゥルー神話を題材にしている以上、その手段をとることも不可能ではないと思いますが・・・。読者を納得させるだけの面白さが維持できるものか・・・。個人的にはラブ物語を受け入れてしまえば楽になるとは思いますけどね。作者的にも読者的にも。

ただ、ここまでアクロバットを行っているのだから、いっそどこまで出来るのか見てみたいという気持ちも否定できません。不条理ギャグとラブ路線の間を綱渡りのように横断することは、果たして可能なのか?物語云々以前に、そこに注目して、今後に期待したいと思います。

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