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2011.04.19

『ロマンス、バイオレンス&ストロベリー・リパブリック(2)』

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ロマンス、バイオレンス&ストロベリー・リパブリック(2)』(深見真/ガガガ文庫)

ぶっちゃけた話、この物語の主人公であるリョウトは、敵と味方を峻別した価値観の持ち主であって、あまり好きにはなれないタイプなんですが、兵士としてはむしろ優秀な部類なのでしょうか。自分は現役兵士の方は知り合いにいないもので良くわからないんですけど、敵対する相手に過剰な感情移入をせず、同時に自分の正しさを疑わない、と言うのは兵士としてのストレスを軽減させるという意味では正しいのかもしれませんね。まあ”正しい”と言ってしまうのもなにか違う気はしますが。ともあれ、自分が正しさを確信して人を殺すことが出来なくては、優秀な兵士にはなれるはずはない、と言う気はしますね。

ただ、個人的に本当にリョウト君はひどい奴だなあ、と思いました。ひどい、と言うのは別に否定しているわけではなくて、自分の心を破綻させないようにしている理屈を構築しているわけで、これはこれで正しい心のあり方だろうとは思うんですが、なかなか興味深い心理に感じられたので書いてみます。

なんかリョウト君は、普通に反省するんですよね。人を殺したことに。あの時は任務だからしょうがなかったけど、その遺族と出会った時に、ああ悪い事したなあ、みたいな。本人は真面目に後悔しているし、罪悪感も感じているみたいだけど、その反省の仕方がものすごく軽くて、まるで過去に苛めた女の子に対する後悔みたいなレベルで後悔しているんです。いや、本人がどれくらいの罪悪感を覚えているのかなんて分かるはずはありませんが、少なくとも僕は読んだ範囲ではそのくらいのレベルに感じられました。まあこれも戦乱の世であり、昨日生きてた人が今日も生きているとは限らない世界なので、リョウトが殺さなくても、別の誰かが殺していた可能性もあるので、いちいち罪悪感を感じてられないというのもあるでしょう。殺した相手がそもそも兵士であるからして、殺されることも仕事のうちのようなものかもしれません。ただ、そんな殺伐とした世界の中で、”殺すことを当たり前の事としてではなく、普通に良くない事だと感じつつ、それでも自分のために人を殺す事に抵抗を覚えない”と言うリョウト君はかなり人間性が壊れているように思いました。

別に「それが当たり前の世界でそうである」と言うのは当たり前のことですよね。少なくとも、現代日本で生きている自分が紛争地帯での正義を問う資格がないのと同じレベルで、異世界ファンタジーにおける倫理観を問うことは出来ないですよね。リョウト君はその中でも特殊部隊の一員であり、その中で人を殺すことを仕事として生きてきた。その時点で彼に人を殺すことの是非を問うことは無意味です。殺すことが己の役割であり、そしてそれが客観的にも意味のあることであれば、そこに他の世界のルールを持ち込むことは罪悪でさえあります。

ただ、リョウト君の場合、彼は人を殺すのが悪い事だと思っているんですよね。少なくとも、本人はそんな独白をしている。自分が知り合った相手の家族を殺したという事に、申し訳ない、と言うような気持ちを抱いています。ここがリョウト君のおかしなところです。殺すことは良くないことだと理解し、それについて思い悩んでいるような様子をみせながら、それでいながら人を殺すことに忌避感を抱かない。まあ、言い方は悪いですけど、たぶん、本当の意味ではリョウト君は悩んでないですよね。相手の家族を殺してしまったことに対する言いようのない気まずさを感じてはいるものの、実はそのこと自体には葛藤はない。言ってみれば、悩んでいる振りをしているわけです。そのことに結論を出すつもりはないんでしょう。ただ、”悪い事だと知りつつそれを直す気がない”と言うスタンスは、ちょっと人間性が壊れているんじゃないかなー、と思いました。これを卑怯だとか偽善者だとか言うつもりはないんですが、悪い事を悪いと知りつつ為すのと、悪い事を悪いと知らないまま為すのは、どちらがより人間らしいのか、って話は興味深いですね。

追記。本編について書く余地がなかったのでここに書きます。とりあえず、口絵のフレデゴルドさんの迫力は一瞬のけぞってしまうレベル。なにこの圧力。具体的にはおっぱい。ひどいですねこれ。サイコー。あとエドゥルネ王女の将来の有望さにはわくわくを禁じえない。この人マジドSじゃわ。王女でドS。ヤバイ。これはヤバイ。カリスマがあるのがさらにヤバイ。そんなんばっかりか!そうですね。

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コメント

>罪悪感というより、気まずさを感じているだけ
この印象、すごくわかりますねー。
この作品は一見ビルドゥングスロマンのようでいて、題名どおりのシナリオを淡々を描いているだけなのかも知れませんね。

投稿: | 2011.04.20 01:01

返事が遅くなってすいません。

この作品に限らず、深見作品の登場人物は、倫理感に偏向がみられるように思いますね。作者の拘りなのかもしれません。

投稿: 吉兆 | 2011.04.26 21:25

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