« 『コップクラフト(3)』 | トップページ | 『とある飛空士への恋歌(5)』 »

2011.04.15

『ブラック・ラグーン(2)罪深き魔術師の哀歌』

51eqoz3rzhl__ss500_

ブラック・ラグーン(2)罪深き魔術師の哀歌』(虚淵玄/ガガガ文庫)

スラップスティックな第一印象と裏腹に、かなり真面目に諜報アクションをしているように感じました。誰が敵で誰が味方なのか、誰が嘘をついて誰が正しいのか、そもそも何が真実なのか?それらすべてが最後の最後まで明らかにされないまま、真偽定かならぬままに行動に移していく。この世界のすべては嘘とペテンで出来上がっているのではないか、と感じさせる不安定な感覚は、自分の諜報物のイメージに近いものを感じます。真実と嘘が見分けがつかないものになってくると、ついには”嘘”こそが世界に影響を与えていきます。なんの根拠も理由もない、ただのでっち上げが、世界最強の国家さえも動かしてしまう。これこそが諜報物のロマンだと思いますね。

今回、焦点が当たるのは、タイトルにもなっている通り、魔術師(ウィザード)ことロットン。本編においてもトップクラスに意味の分からない彼が、アメリカも関わる大きな情報戦の焦点になってしまう。このロットンと言うのは、本当にわけが分からない人物であって、腕が立つのかただのバカなのか、あるいはキレ者なのかただのバカなのか、電波なのかただのバカなのか定かならぬところがあり、本編でも正体不明の人物であります。それゆえに、彼が、実は凄腕のスーパーエージェントであるという馬鹿げた疑いに真実味を与えることになるんですね。まあ、普通に考えて、こんなコテコテの、お前はハリウッドヒーローかなにかなのかと言わんばかりの設定に真実味などあるはずもないんですが、しかし、あまりにも馬鹿げているからこそ、逆説的な真実味が生まれます。「騙そうとするならもう少しありそうな話にするよな・・・?」「いくらなんでもこんな馬鹿な設定で騙そうとするはずが無い」「だったら本物・・・?」と言う疑いが沸き上がったらしめたもの。ウロブチ先生の手のひらの上で踊ることになります。

ロットンは、前述の通り、まったくの正体不明なんですよね。言動、行動は典型的な勘違い野郎なんですが、そのくせあらゆる鉄火場においてもほぼ(なぜか)無傷で生き延びる。痛々しい発言のように思えても、実は裏のありそうな・・・でもやっぱりなさそうな。この意味不明絶頂なロットンと言うキャラクターを、ウロブチ先生は最大限に利用します。彼の存在感についうっかり巻き込まれてしまった「あの人」が、信じられない気持ちでロットンと交渉し、だんだんと疑心暗鬼になっていく展開は、だんだんと「あの人」の現実認識が塗り替えられていくところがスリリングでしたね。最後の最後まで混乱し続ける姿は、まさに読者の代弁のようでした。

少なくとも、僕はロットンの立ち位置には最後まで混乱させられました。最初は「ハハハこやつめ」と鼻にも引っ掛けなかったのに、だんだんと「もしかしたらありかも・・・?」になり、「いや、ありえねーって」と持ち直すも、「やっぱりまずい、な・・・」と、自分の中で、だんだんと洒落にならない感じが強くなってきました。まあその結果は読めば分かるとして、ロットンの描き方としては、確かにここまでやればキャラを限界まで使いきった感があります。ウロブチ先生の自キャラではないという事が、ちょっと信じられなくなりますね。

で、まあ、大体は自分が書きたいことは書いたんですが、もう少し追記。と言ってもたいしたことではないんですが、ウロブチ先生、ちょっとロックの使い方に苦労しているのかも?と思わなくも無いです。ロックは、ハードボイルドでもアクション担当でもなく、一番近いのは策略タイプなんだけど、厳密に言うとまったく違うというわけの分からないキャラクターなので、彼がどう動くのか、本編読者である自分にも良く分からないことがある。どう動くのが”彼らしさ”なのか、イマイチしっくりこない。自分の個人的解釈としては、「善意を持って正しい目的のために外道を為す」タイプだとは思うんですけど・・・。ウロブチ先生は、ロックを「ギャンブラー」と描いていますね。分の悪い賭けを好んで行い、分が悪ければ悪いほどに活き活きとする。確かにロベルタ編を見る限りはそんな感じもするんだけど。ううん。なんか自分の中で収まり悪いなあ。もう一度、本編を読み直してみようかな。

|

« 『コップクラフト(3)』 | トップページ | 『とある飛空士への恋歌(5)』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/51396588

この記事へのトラックバック一覧です: 『ブラック・ラグーン(2)罪深き魔術師の哀歌』:

« 『コップクラフト(3)』 | トップページ | 『とある飛空士への恋歌(5)』 »