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2011.03.25

『コロージョンの夏』

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コロージョンの夏』(新沢克海/講談社BOX)

この作品を一言で説明すると、詰め込まれている要素のなにもかもが極めて過剰な作品です。一つ一つの要素はいわゆる現代異能的なライトノベルの文脈ではあるんですが、その密度が異常。なんだってここまで思いついたことを片っ端から詰め込んでいるんだ・・・。

簡単に言うと、主人公の過去、ヒロインの過去、巻き込まれた事件、そこで出会う登場人物。通常ならばそれら一つ一つで一冊の本になってしまいそうなところが、それをすべて一個の物語に統合しているのです。そのおかげで内容を説明するとカオスと言うほかはありませんが、ただ、そうしたアイディアの氾濫を、ギリギリのところでエンターテインメントに収めているのはすごいことかもしれません。

要素そのものは既存のライトノベルの文脈であると書きましたが、しかし、その内実は論理と倫理で構成される伝奇小説であるというあたりに、奈須きのこの系譜でもあるとも思います。世界を捉えるのに、作中独自の価値観を構築するというスタンスは、読者によっては拒否反応があるなど、わりとリスキーな選択ではあると思いますが、少なくとも余所からの剽窃を行ってないと言うこと(本当に作者が自分で組み上げている)、そして、きちんと論理的であるという点は評価したいと思います(ここで自分は重視したいのは、論理が正しいかどうかではなく、論理的であるかどうか、少なくともそう感じられるかどうか、です)。実を言うと自分はそれほど感心はしていないんですが、このように考えることも可能かもしれない、と思わされました。

個人的に好きなのは、クライマックス(の手前ぐらい?)における、主人公と”犯人”の対話です。対話を行っていくうちに、主人公の現実感が少しずつ崩れていくところがなかなかエキサイティング。こういうのも論理バトルの流れであると思うんですよね。

他にも主人公の造型とか、色々好ましいところはあるんですが、そうした個々の要素よりも、さまざまな要素をまとめ上げた手腕こそを評価するべきだとも思います。設定や物語には非常に”若く””荒削り”なところがあるんですが、その荒削りな部分を制御している。熱情のままに書きつつも、冷静さも感じられる。そのあたりに作者のセンスを感じさせられました。

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