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2011.03.20

『B.A.D. (4) 繭墨はさしだされた手を握らない』

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B.A.D. (4) 繭墨はさしだされた手を握らない』(綾里けいし/ファミ通文庫)

第一部完と言うべき巻ですが、”狐”に関する色々な出来事についてきちんと決着がついています。小田桐とあさと、繭墨とあさと、小田桐と繭墨。それぞれにとっての関係について、少なくとも現時点における回答をきちんと出していますね。ただ、あまりにもきちんと回答を出しすぎていて解釈の余地があまりないと言うのは個人的には気にかかるところではあります。

特に、小田桐とあさとの関係の意味を、そこまではっきりと描いてしまっていいものか・・・?と、いささか抵抗感を感じてしまいました。まあライトノベルとしての分かりやすさを優先したんだろうけど、わりとこれまでは距離を置いていた人間の感情部分を明確に描いてしまったところは評価が難しいところ。これについては色々な意見があるだろうけど、個人的にはこのように直裁に描いてしまうのは無粋のように思います。あさとが小田桐に対して抱いていたのは、本当に悪意だけだったのか?と言うのは、まあ確かに読者にとっても気にかかるところではあるけれど、それについて明確に(明確に過ぎる)答えを出してしまうのは、美しいとは思えない。明快であるのは悪い事じゃないけど、明快であるのが正しいとも限らないしね。特に、「明快であるのかはっきりしない事を明快に語ってしまう」のは単純すぎるように思います。特に人間の感情にまつわる話を明快に語る事については強い抵抗が自分の中にはあのです。なぜなら、人間とは矛盾の生き物であるという認識が自分の中にはあるから。

もうちょっと具体的に言うと、果たして人は楽しい時には楽しいと言う感情しかないのか?悲しい時には悲しいという感情しかないのか?怒った時には怒りしかないのか?と言う問題です。少なくとも自分は、すごく楽しい時でも心の一部分では「あーめんどくせー」とかだるい気持ちになったり、ものすごく腹が立ってムカついた時に「それはそれとして腹減ったなあ」とか感じることがあるんですが、これって別におかしなことではないですね(たぶん)。人間は悲しみながら楽しさを感じることもある生き物であり、純粋な感情だけになる人間と言うのは、まあ皆無ではないと思いますが、そんなに多くないのではないかと思うのです。まあ他人の心の中なんぞ知らないので、これも妄想に過ぎないと言えばそうなんですが、少なくともこれが自分の中のリアル。

なので、あまり登場人物の感情をシンプルに説明されてしまうとたじろいでしまう。説明不能な事柄を説明されてしまったような居心地の悪さを感じてしまうのですね。あさとの内面については、今までかなり慎重に取り扱われていたように思うので、その落とし所が”ここ”と言うのは、うーん。ここまで自分自身の望みとして”怪物”として振舞ってきたあさとが、ちょっとかわいそうな気もする。それまで生きてきた事すべてを否定してしまったんじゃないか。ただ”求めていた”だけと解釈されてしまうのは、ちょっとあんまりじゃない?勿論、”求めていた”と言うのも間違いないだろうけど、”悪意”だってあったんじゃないの?そっちは否定されちゃうの?みたいな、そんな感じのしっくりの来なさがありました。上手く説明できないんですが、ちょっとそのあたりが、えー、って感じ。

我ながら、ものすごく理不尽なケチのつけ方をしているような気がしてきました。自分で書いていてもわけが分からない。ひどい。なんだか書けば書くほど自分の考えている事とも異なってきたような気がするんですが、やはり言葉で説明してしまうと感覚的なことと言うのはズレて来てしまいますね。などと強引に誤魔化しにかかりますが、これ以上買いても泥沼になりそうなので終わります。

追記。自分の違和感を説明しすぎて感想をなにも書いてなかったけど、分かりやすさそのものは否定しません。ライトノベルとしては別に間違っていないと思います。同時にこの作品は伝奇小説でもあったわけで、自分は伝奇小説としての側面を強く求めすぎたというところもあって、それが自分の中でカテゴリエラーを起してしまったようにも思います。

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